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W12史上最強の「ベントレー・マリナー・バトゥール」
2023年一番忘れられないクルマは「ベントレー マリナー バトゥール」。2003年にデビューしたコンチネンタルGTから続く6.0リッターW型12気筒ツインターボエンジンを積む最後のモデルとして、たった18台限定で製造されたビスポークモデルだ。
スペインで行われた試乗会の前に日本でコンチネンタルGTスピードに乗る機会があり、W12の圧倒的なパワーと、滑らかさ、扱いやすさが、このクルマの醸し出す“余裕”の源泉なのだと改めて思い知らされたが、W12史上最強の750PS、1000Nmにまで高められたバトゥールのそれは、1枚も2枚も上手。とにかく驚くほど静かでスムーズで荒々しさなど微塵もないのに、驚くほどパワフル。
加えてリヤトレッドを20mm広げるなどの改良を施したシャシーが、素晴らしいスタビリティと、ハンドリングを実現していて「あのコンチネンタルGTにまだこんなに伸び代があったのか!」と驚かされた。もちろん内装の質感、仕立ても豪華かつ上質。確かに165万ポンド(当時で2億8000万円)以上という価格は尋常ではないが、ここまでできるのが真のビスポークなのだという、マリナーの底力をまざまざと見せつけられた1台だった。
SVOが手がける最上級仕様「レンジローバーSV P530 LWB」
現在、ディフェンダーが絶好調な上に、5代目が出て1年以上が過ぎただけでなく、先日同社として初のBEVモデルとなるレンジローバー・エレクトリックが発表されたこともあり、ランドローバーの中では露出が控えめだったレンジローバーだが、昨年末にやってきたSVOが手がける最上級仕様「レンジローバーSV」、中でも4.4リッターV8ガソリンターボを積むP530のビジネスクラスのような快適性が味わえる4シートSVシグネチャースイートを装着したLWBは、歴代最高のレンジローバーと呼ぶに相応しい1台である。
特に素晴らしいのがオールホイールステアリング、ツインバブルチューブダンパーを備えた電子制御エアサスペンション、電動式ロール制御システムのダイナミックレスポンスプロを備えたシャシーで、その乗り味は魔法の絨毯のごとくなめらかで、しなやか。もちろん3.0リッターのディーゼルもいいけれど、車重2.7tのLWBを余裕を持って走らせるのは530PSの4.4リッターV8の方。
加えて素晴らしいのが寄木細工のウッドパネル、ホワイトセラミック加工のシフトレバーなど、ナチュラルな素材感と手触りをもつサステナブルで上質なインテリアはシックな外観ともマッチしていて、イギリスらしいアンダーステイトメントな魅力に満ちた高級車になっていると思う。
「ポルシェ 718 ボクスターT」
718ケイマンの車体に500PSの4.0リッターフラット6NAユニットを詰め込み、最先端のエアロダイナミクスで固めた718 ケイマン GT4 RSは究極の内燃機関スポーツカーと言っていいほど素晴らしいものだったが、そんな超絶にすごいクルマを体験したからこそ際立ったのが、“素のボクスター”の代表格というべき、「718ボクスターT」だ。車重1380kgと決して軽いわけじゃないけれど、その動きは実に軽やかで爽やか。
特に個人的に気に入ったのは、いつの間にか熟成され音質、レスポンス共に格段に良くなった300PSを発生する2.0リッター水平対向4気筒DOHC16バルブターボ。確かに低回転域でのトルクが薄いので、油断するとエンストしがちになるものの、それはそれで2.5リッターの初代ボクスターや、往年のナロー911なんかを彷彿とさせてエンスー味濃厚。
とにかく相変わらず小気味のいい6速MTとの相性が抜群で、エンジンのスイートスポットをキープしながらコキコキとシフトしてワインディングを走っていると「そうそう、これこれ!」と思わず笑みがこぼれてくる。もちろん6気筒のGTS4.0はいい。しかしながら初期モデルのドコドコ感で毛嫌いしている人にこそ「食わず嫌いは良くない」と積極的にオススメしたいのが、4気筒のボクスターである!