ランボルギーニのV10自然吸気エンジン成功を考察する

「もしもウラッコが成功していたらカウンタック伝説はなかった?」ランボルギーニV10の成功を考察する

2003年発売のガヤルドに搭載されて登場したV10。高さを抑えるためにバンク角は72度ではなく90度とされ、クランクピンを18度オフセットした。当初は5.0リッターで500PSだったが、20年の間に排気量は5.2リッターとなりパワーは640PSまで到達した。
2003年発売のガヤルドに搭載されて登場したV10。高さを抑えるためにバンク角は72度ではなく90度とされ、クランクピンを18度オフセットした。当初は5.0リッターで500PSだったが、20年の間に排気量は5.2リッターとなりパワーは640PSまで到達した。
ガヤルド、そしてウラカンへと続くV10ランボルギーニは、まさにスーパーカーの中心的存在だ。その歴史はこの20年のスーパーカーの歴史そのものと言える。これからランボルギーニが紡ぐ “ベビー” の歴史はどうなっていくのだろうか。(GENROQ 2024年4月号より転載・再構成)

歴史のイフに答えることは不可能だが

ガヤルドの進化形であるウラカンは2014年に登場。V10自然吸気エンジンは610PSとなっていた。さまざまな派生モデルが登場したが、現在はEVO、STO、テクニカをカタログモデルとして用意している。
ガヤルドの進化形であるウラカンは2014年に登場。V10自然吸気エンジンは610PSとなっていた。さまざまな派生モデルが登場したが、現在はEVO、STO、テクニカをカタログモデルとして用意している。

21世紀になってからのサンターガタの成功は、ガヤルドからウラカンと21年続くV10ミッドシップスーパーカーによるところが大きい。もちろんV12を積んだフラッグシップモデル(ムルシエラゴとアヴェンタドール)やブランド初のSUV(ウルス)の貢献も大きかったが、世界で最も有名なスーパーカーブランドの背骨は間違いなくV10ミッドの2シータースーパーカーだった。

ランボルギーニにとって非12気筒スーパーカーの成功は悲願でもあった。もしウラッコが成功していたら? もしクライスラーがF1活動などにかまけずベビーランボを出していたら? 歴史のイフに答えることは不可能であるし、現在の成功ぶりをみれば、過去は過去、不成功もまた現代の礎であることもまた事実であろう。歴史が変わっていれば現在も変わる。ウラッコが成功していたら、カウンタックはあれほど長くは造られなかった。そうなればひょっとしてランボルギーニというブランドのイメージ(=カウンタック)が今とはまるで違ったものになった可能性も否定できない。

それはともかく、アウディ傘下のランボルギーニは悲願のベビーランボ成功によって大躍進した。ガヤルドは1.4万台が生産され、ウラカンは今、その生産も最終コーナーを迎えたが、これまですでに2.5万台をサンターガタから送り出している。合計4万台近く。この数こそがランボルギーニブランドの今の土台であると言っていい。

味の濃さでピュアなエンジンに勝るものなし

早ければ今年中にもウラカンの後継となるミッドシップモデルの発表が予定されている。V10エンジンの搭載はない。プラグインハイブリッド車(PHV)であることはすでに宣言されているが、肝心のエンジンはおそらくV8。パフォーマンス的にはアヴェンタドールを超えてくるとも言われている。

パフォーマンスの向上はスーパーカーのモデルチェンジには必須。次世代にも大いに期待というわけだが、クルマ好きにはひとつだけ懸念材料がある。レヴエルトもそうなのだが、それはバッテリーの存在だ。レヴエルトにしても、ウラカン後継モデルにしても、(電気モーターというよりむしろ)バッテリー性能がパフォーマンスアップを支えていることは間違いない。速くなることは間違いないけれど、これまで数々のPHVやハイブリッドのスーパーカーを試乗した経験からすると、味の濃さではピュアなエンジン車に劣る。それにバッテリーの将来問題も未だ納得のいく解決策(例えば電気システムを外しても走る、とか)の提案はない。将来的な価値に不安が残るというわけだ。その点、エンジンだけならなんとかなりそうだ。否、それだって電気制御による所は大きく、不安はあるのだが、それを言い出すとキリがない。大人しくキャブ車を集めるほかなくなる。

私が今、注目しているのはガヤルドのマニュアルギヤボックスだ。ウラカンにはデュアルクラッチ2ペダル仕様しか設定されなかった。大排気量の、そして極めてユニークなV10自然吸気エンジンを3ペダルで操る。そんな楽しみはガヤルド(か、姉妹モデルのアウディR8)でしか味わえない。そしてガヤルドのボディサイズはカウンタックなみにコンパクトだ!

後輪駆動でV10史上最高の640PS

思い返せばガヤルドがデビューした当初、そのV10自然吸気エンジンは5.0リッターで、最高出力はというと500PSジャストだった(それでもライバルと目されたフェラーリ360モデナが400PSだったことを思い出せば驚くべき数値だ)。当時、サンターガタの技術陣はこんな風に言っていた。「500PSという大出力を安全にかつ効果的に路面へと伝えるために4WDを選んだ」と。

けれどもデビューから6年後の2009年には550PSの“RWD”、つまり後輪駆動が登場し、我々のみならず世界のクルマ運転好きを驚かせたものだ。

ウラカンの最終モデルであり後輪駆動であるテクニカにはランボV10史上最高の640PSを誇るV10NAが搭載されている。我々スーパーカーファンは20年に及ぶ進化の歴史をまさに目の当たりにしているのだった。

REPORT/西川 淳(Jun NISHIKAWA)
PHOTO/LAMBORGHINI S.p.A.
MAGAZINE/GENROQ 2024年 4月号

ランボルギーニは、2023年に投入したHPEV「レヴエルト」をはじめ、2030年に向けてハイブリッドやフル電動モデルを積極的に投入。「コル・タウリ戦略」に則り、2030年までにCO2排出量の80%削減を目指している。

非公開: 脱炭素化を加速するランボルギーニ「バリューチェーン全体で自動車1台あたり40%のCO2削減」【動画】

アウトモビリ・ランボルギーニは、同社史上最大の投資を実施。今回、新たに野心的な目標を掲げ、脱炭素化を推し進めることを明らかにした。モデルラインナップの電動化と生産拠点の脱炭素化を含む「コル・タウリ戦略(Direzione Cor Taur)」の一環として、CO2排出量削減をバリューチェーン全体に拡大。バリューチェーン全体で自動車1台あたり40%のCO2を削減することを目標に掲げた。

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西川 淳