3代目「ポルシェ パナメーラ」に欧州で試乗

3代目となる新型「ポルシェ パナメーラ」に試乗してわかった「911には採用しない重要な装備とは?」

911を思わせるスポーティな4ドアクーペのフォルムはさらにエレガントさを増した第3世代「パナメーラ」。パフォーマンスと環境性能もさらに向上したという。
911を思わせるスポーティな4ドアクーペのフォルムはさらにエレガントさを増した第3世代「パナメーラ」。パフォーマンスと環境性能もさらに向上したという。
第3世代となるパナメーラが登場した。911を思わせるスポーティな4ドアクーペのフォルムはさらにエレガントさを増し、パフォーマンスと環境性能もさらに向上。新メカニズムも採用したという走りは、4ドアスポーツの新たなスタンダードとなるか。(GENROQ 2024年5月号より転載・再構成)

Porsche Panamera

運転席から見える911や718を思わせる峰

第3世代となるパナメーラが登場した。911を思わせるスポーティな4ドアクーペの フォルムはさらにエレガントさを増し、パフォーマンスと環境性能もさらに向上。 新メカニズムも採用したという走りは、4ドアスポーツの新たなスタンダードとなるか。
新メカニズムを採用した3代目「パナメーラ」。その走りは、4ドアスポーツの新たなスタンダードとなるか。

ポルシェの好業績がとどまるところを知らない。2023年会計年度の売上高と営業利益はともに過去最高を達成。今年は4つのニューモデルを投入し、さらに拍車をかける。その4つのうちの第1弾が、3世代目となる新型「パナメーラ」だ。

国際試乗会の舞台はスペイン南部、アンダルシア州の州都セビリアだった。出発地点である市内のホテルには、ベースモデルのパナメーラが用意されていた。エクステリアデザインは、全体的によりシャープさが強調されている。フェンダーの峰は高くなり、運転席からみえる景色は911や718を思わせる。ナンバープレートホルダーの上には、新たにエアインレットが追加された。スポーティなサイドビューをかたちづくる“フライライン”も、継承されている。ボディサイズは先代とスリーサイズもホイールベースもほぼ変わらない。プラットフォームは先代の「MSB」の改良版である「MSBw」。インテリアはタイカンに始まった最新のデザイントレンドを汲む。

エアサスペンションを標準装備

パナメーラと4輪駆動のパナメーラ4に共通のエンジンは、2.9リッターV6ツインターボ。ブースト圧、燃料噴射流量、点火時期の変更により先代比で23‌PS/50‌Nmアップの最高出力353PS、最大トルク500Nmを発揮する。セビリアの市街地を走りだしてすぐにボディ剛性と静粛性の高さが伝わってくる。PDKは低速域でもまったくぎくしゃくすることなくトルコンATもかくやの滑らかさ。のちに開発者にたずねると911と同一のものだと教えてくれた。制限速度120km/hの高速区間では抜群の直進安定性をもってひた走る。新型は、ポルシェアクティブサスペンションマネージメント(PASM)を備える2チャンバー、2バルブ技術のエアサスペンションを標準装備する。これはダンパーの伸び側と縮み側とを別々に制御するもので、石畳の道を走る際のショックも大幅に吸収してくれる。そしてワインディング区間では、操舵に対する動きの正確さに感心するばかり。帰路に少しパナメーラ4にも試乗したが、ほぼ同じ印象だった。ちなみに両者の重量差はわずかに35kgだ。

午後のセッションは、セビリアの市街地から西へ約50kmのところにあるモンテブランコサーキットで行われた。全長約4.4km、ホームストレートは約1km、18のコーナーからなる本格コースで、PHVでトップモデルの「ターボEハイブリッド」を試す。総出力は680PS、トルクは930Nmを発揮。今回はサーキットのみでの試乗でEV航続距離などは検証できなかった。ちなみにポルシェはこの新型からターボモデルのクレストをゴールドにかえてメタリックグレーに変更する。その名はTurbonite(ターボナイト)。接尾語の[ite]は石の意味だ。

まずはスポーツモードでコースインする。車両重量が2360kgゆえ、やはりコーナーでは重さを感じる。しかし、ひとたびアクセルペダルを踏み込めば0-100km/h加速タイム3.2秒は伊達じゃなく、その重さを吹き飛ばすように加速する。初期のPHVでは違和感のあったブレーキも、新型では摩擦と回生ブレーキのより自然な協調制御を実現する。

アクティブサスがもたらす未体験のフラットライド

途中でハイブリッドモードにせよと無線が入る。するとEハイブリッドモデルにオプション設定される「ポルシェアクティブライドサスペンション」が起動する。これは2バルブ技術を採用した新開発のショックアブソーバーに、前後アクスルのそれぞれに配置された電動式の油圧ポンプを接続したもので、ボディの動きに応じてダンパー内に瞬時に正確な流量を発生させる。油圧ポンプは400Vシステムによって駆動されており、したがってEハイブリッドモデルのみの設定となっている。このシステムは1秒間に最大13回の調整を行い、加速時のフロントリフトやブレーキング時のノーズダイブをなくし、そしてコーナリング時には内輪側を沈みこませ、外輪側をもちあげるアクティブチルトコントロールまでを駆使して常にボディを水平に保つ。サーキットでのスピードレンジでこれを試すと違和感を覚えるほど。さすがにポルシェもそこはわかっていて、サーキット走行後に50km/hで波板の上を走りぬけたり、パイロンスラロームなどを試させてくれた。こちらはステアリングを握っていても、外からクルマの挙動を見ていても、未体験のフラットさだった。

開発者によると、7年の歳月をかけて作りあげたサスペンションシステムという。スタビライザーをなくし、4輪を独立して制御することでよりコンフォート性能を高めている。目的は快適性の向上であり911などのスポーツカーには採用しないとも教えてくれた。ラグジュアリーカーとスポーツカーのはざまで、あくなき性能の追求が続いているのだ。

REPORT/藤野太一(Taichi FUJINO)
PHOTO/PORSCHE AG.
MAGAZINE/GENROQ 2024年 5月号

SPECIFICATIONS

ポルシェ・パナメーラ・ターボ E-ハイブリッド

ボディサイズ:全長5054 全幅1937 全高1421mm
ホイールベース:2950mm
車両重量:2360kg
エンジン:V8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
最高出力:382kW(519PS)/6000rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/2330-4000rpm
モーター最高出力:140kW(190PS)
モーター最大トルク:450Nm(45.9kgm)
システム最高出力:500kW(680PS)/5500-6800rpm
システム最大トルク:930Nm(94.3kgm)/1600-4900rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前275/40ZR20(9.5J) 後315/35ZR20(11.5J)

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

「F.A.T アイスレース」が行われたオーストリアのツェル・アム・ゼーにおいて、バルター・ロールが初めてポルシェ パナメーラ改良新型をテストドライブした。

バルター・ロールが氷雪路でポルシェ パナメーラをテスト「ポルシェ・アクティブライド・サスペンションを絶賛」

2度の世界ラリー選手権(WRC)タイトル獲得経験を持つバルター・ロールが、オーストリアのツェル・アム・ゼーで行われた「F.A.T アイスレース」に登場。先日発表されたばかりのポルシェ パナメーラ改良新型と初対面し、氷上・雪上でそのドライビングパフォーマンスを堪能した。

キーワードで検索する

著者プロフィール

藤野太一 近影

藤野太一