メルセデスAMGの最強SUV「GLC 63 S Eパフォーマンス」に試乗

メルセデスAMGの最強SUV「GLC 63 S Eパフォーマンス」に試乗「これがC 63 S E系の最適解」

いまやメルセデスの最量販車種に上り詰めたGLCに、最強モデルが追加された。F1からフィードバックされた電動化技術「Eパフォーマンス」を搭載、680PS/1020Nmを誇るプラグインハイブリッド、GLC 63 S Eパフォーマンスである。
680PS/1020Nmを誇るプラグインハイブリッド。それがGLC 63 S Eパフォーマンスだ。
いまやメルセデスの最量販車種に上り詰めたGLCに、最強モデルが追加された。F1からフィードバックされた電動化技術「Eパフォーマンス」を搭載、680PS/1020Nmを誇るプラグインハイブリッド「GLC 63 S Eパフォーマンス」である。(GENROQ 2024年6月号より転載・再構成)

Mercedes-AMG GLC 63 S E Performance

F1由来のプラグインハイブリッド

普通充電口はボディの左後部に設置。バッテリー容量は6.1kWhとさほど大きくないため、EV走行可能距離は16kmに留まる。
普通充電口はボディの左後部に設置。バッテリー容量は6.1kWhとさほど大きくないため、EV走行可能距離は16kmに留まる。

メルセデスのベストセラーSUVであるGLCにも、遂に「AMG GLC 63 S Eパフォーマンス」が登場した。そのパワーユニットは、AMGのマイスターが手組みする世界最高峰の直列4気筒ターボ「M139」ユニット(476PS)に、定格出力80‌kW/ブースト時150kWのモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド。システム的には6.1kWhのバッテリーや電動シフト式2速トランスミッション、そして電動ドライブユニットをまとめて車体後方に設置するP3ハイブリッド方式である。

そのシステム出力は680PS、システム最大トルクに至っては1020Nmという圧巻のアウトプットで、これを路面へと伝える駆動方式は「4マティック+」。ちなみに0-100km/h加速は、わずかに3.5秒だ。つまりこれは先だって登場したC 63 S Eと同じシステムになるわけだが、筆者はセダン/ステーションワゴンよりもGLCの方が、このパワーユニットがシャシーにマッチしていると感じた。

重さはもうネガじゃない

その理由はまずSUVならではのストロークフルな足まわりが、2350kgの車重がもたらす垂直荷重をしなやかに受け止めるからだ。試乗車の足まわりはコンベンショナルなスプリングと可変ダンパーの組み合わせだったが、そこに安っぽさはなく、むしろ上質な乗り味だった。

となれば気になるのはパフォーマンスだが、その数字に対して体感速度は思ったほど高くなかった。もちろん状況を気にせずアクセルを踏み続ければ超高速域へと入り刺激も増してくるはずだが、いわゆる流れの中でカタパルト加速を試みても、そのダッシュにはC 63 S Eが見せたほどのエンタテイメント性は感じなかった。最もC 63 S Eの加速が強烈過ぎるだけではあるのだが。

これはまずセダンに対してこのGLCが、190kgほど重たいことがひとつ。そして地面から遠くなり、先が見渡せる分だけその速度を先読みしやすいからだろう。さらにいえばボディを支える足まわりや4WDのトラクション制御が、重心のふらつきをみごとに抑え込んでいる。

専用デザインとなる前後バンパーにより、全長はGLC比で25mm延長。全幅はホイールアーチの大型化に伴い30mmワイドになる。
専用デザインとなる前後バンパーにより、全長はGLC比で25mm延長。全幅はホイールアーチの大型化に伴い30mmワイドになる。

しかしこれが退屈かというと、決してそうではない。リニアに立ち上がるトルクそのものは、やはり強大。しかしモーターのみならず、電動タービンが低回転域からトルクを確保して、そのアウトプットを極めて洗練させているから、その速さを緊張感や不快感なく引き出せるのだ。

確かにV8サウンドがなくなったのは寂しいが、直列4気筒ターボのサウンドもなかなかだ。エキゾーストから集音してスピーカーで車内に流すサウンドは野太くクリアで、ここにモーターがもたらすリニアな加速感がリンクすると、なんだかんだと思いながらも運転が楽しい。

サスペンションの動きが良いのだろう、リヤ・アクスルステアリングを搭載するにもかかわらずそのハンドリングはC 63 S Eより自然。もちろんその走りは背の高いSUVの走安性を保つために、逐一監視されている。筆者がうまく操っているつもりでも、そのパワーを上手にこぼさず制御されているのだとは思う。しかしここまですべてが完璧に、そして滑らかに処理されると正直諦めもつく。かつては蛮勇振り絞ってアクセルを踏むことがステイタスであり、ドライバーの務めだった時代が、確かにあった。しかし現代の走りは安全が担保された上でのエンタテイメントであり、電動化によってその質は大きく変わったのだ。そういう意味では普段GLC 63 S Eでラクしていても、休日くらいはプリミティブなスポーツカーを走らせないと、ドライバーとして錆びつきそうだ。

ほとんど唯一の残念ポイントとは?

唯一残念だったのは、バッテリーがトランクルームに少しだけ進出してその容量を狭めていること。初見ではそれ以外に大きなネガティブは感じられず、これが「C 63 S E系」における現状の最適解ではないかと感じた。フールプルーフかつダイナミック、ここに極まれりだ。

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 6月号

SPECIFICATIONS

メルセデスAMG GLC 63 S Eパフォーマンス

ボディサイズ:全長4750 全幅1920 全高1635mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:2350kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1991cc
最高出力:350kW(476PS)/6750rpm
最大トルク:545Nm(55.6kgm)/5250-5500rpm
モーター最高出力:150kW(204PS)/4500-8500rpm
モーター最大トルク:320Nm(32.7kgm)/500-4500rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/40R21 後295/35R21
車両本体価格:1780万円

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

モータージャーナリスト。自動車雑誌『Tipo』の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した…