メルセデス・ベンツの新型「CLE」に試乗「CクラスとEクラスのクーペを統合」

CクラスとEクラスのクーペを統合して誕生した新型「メルセデス・ベンツ CLE」に試乗

SUV全盛の昨今、セダンですら消えゆく中、さらにニッチなフル4シータークーペはいまや絶滅危惧種といえるだろう。そのような状況下にあって、メルセデスはニューモデルCLEを投入。最新のデジタライゼーションを実施しつつ、古典的な価値観も大切にした1台といえる。
従来のCクラス・クーペとEクラス・クーペを統合する形で登場した。
SUV全盛の昨今、セダンですらが消えゆく中、さらにニッチなフル4シータークーペはいまや絶滅危惧種といえるだろう。そのような状況下にあって、メルセデスはニューモデルCLEを投入。最新のデジタライゼーションを実施しつつ、古典的な価値観も大切にした1台といえる。(GENROQ 2024年6月号より転載・再構成)

Mercedes-Benz CLE 200 Coupe Sports

「CL」はクーペを意味し、「E」は車格をあらわす

メルセデスの上級クーペといえばセンターピラーレスの解放感が売りだったが、今回は不採用。軽量化とコストダウン優先の結果か。
メルセデスの上級クーペといえばセンターピラーレスの解放感が売りだったが、今回は不採用。軽量化とコストダウン優先の結果か。

実際には独立したトランクをもつ3ボックスだが、ハッチゲートをもつファストバックのように見えるクーペをつくらせたら、メルセデス・ベンツは最高にうまい。昔からスポーツカーの汗臭さともセダンの家族臭とも無縁の、エレガントなクーペを提供し続けている。それでいてシャークノーズのフロントや凹凸のない面構成のリヤなど、従来型を古く見せる新鮮味も盛り込んでいる。巧みなデザインだ。

少し前までそうしたクーペをCクラスにもEクラスにもSクラスにも設定していたが、AMG SLやAMG GTが2+2になったのに合わせてまずSクラスクーペはなくなった。またCクラスとEクラスにそれぞれあったクーペバージョンは、今回日本導入を果たしたこの「CLE」に統合された。「CL」はクーペを意味し、「E」は車格をあらわす。プラットフォームは現行CクラスやEクラスと同じ。そしてサイズは従来のEクラスクーペに近い。

あとからAMG 53が追加されるが、今回登場したのは2.0リッター直4ガソリンターボエンジン、48V電源システムのISG(マイルドハイブリッド)、9速ATからなるパワートレインを組み合わせたCLE200のみ。エンジンが最高出力204PS、最大トルク320Nmを発揮し、同23‌PS、同205NmのISGが回生したり駆動をアシストしたりする。

ドライバーズパッケージは必須のオプション

実際、発進加速の力強さは2.0リッターターボエンジンのそれを超えている。ただしそこから先に伸びやかな加速力が待つわけではなく、途中から一般的な2.0リッターターボ車と同等という感じだ。ただし大きな力を必要とするのは発進時くらいなので、理にかなっている。

テスト車にはダイナミックボディコントロールという連続可変式のアダプティブダンパーを用いたサスペンションを含むドライバーズパッケージが備わっていたこともあり、スタイリングのエレガントさと調和する快適な乗り心地を味わうことができた。標準サスだと全体的にもう少し硬い印象になるはずだ。

40万円と安くないドライバーズパッケージだが、最小回転半径が5.2mから5.0mに向上するリヤアクスルステアリングも含まれるので、装着を強くオススメする。

おもてなしは「ルーティン」機能で

「ハイ、メルセデス」というウェイクワードで呼び出したあと、話しかけるように要求を伝えることができるMBUXは、私が知る限り最も自然に使うことができる音声アシスタントだが、新たにジャストトーク機能が加わったことで、さらに便利になった。ひとりで乗車にしている場合に限って「ハイ、メルセデス」と呼び出すことなく、いきなり「運転席の窓をちょっと下げて」などと要求を伝えることができるようになった。

一定の条件を満たすと自動的に特定の機能が作動するルーティンも便利だ。「車内温度が12度以下になったら、シートヒーターをオンにしてアンビエントライトをオレンジにする」といったオリジナルのルーティンを設定することができる。東京・台場地区へ入ったら織田裕二の「ラブ サムバディ」が、横浜・みなとみらい地区へ入ったら柴田恭兵の「ランニング ショット」がかかるようにできるだろうか。

安全装備の充実ぶりも見逃せない

内外装はスポーティなAMGラインが標準となる。ボディサイズは先代Eクラスクーペ並みなのに、価格はおよそ100万円ほど安くなっている。
内外装はスポーティなAMGラインが標準となる。ボディサイズは先代Eクラスクーペ並みなのに、価格はおよそ100万円ほど安くなっている。

メルセデスだけに安全装備は満額回答なのだが、ユニークなのはプレセーフサウンド。衝突の危険を検知した際、スピーカーから鼓膜の振動を抑制する音を発生させ、衝突の衝撃音から鼓膜や内耳を保護する。衝突の瞬間、耳を塞ぐような効果をもたらすという。また側面衝突の際には、運転席と助手席の間にエアバッグが展開し、乗員同士の衝突を避ける。メルセデスが最初に採用し、その後、さまざまなメーカーが採用した安全装備はひとつや2つではないが、これらも将来の常識になるかもしれない。

REPORT/塩見 智(Satoshi SHIOMI)
PHOTO/神村 聖(Satoshi KAMIMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 6月号

SPECIFICATIONS

メルセデス・ベンツCLE 200クーペ スポーツ

ボディサイズ:全長4850 全幅1860 全高1420mm
ホイールベース:2865mm
車両重量:1760kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1997cc
最高出力:150kW(204PS)/5800rpm
最大トルク:320Nm(32.7kgm)/1600-4000rpm
モーター最高出力:17kW(23PS)/1500-3000rpm
モーター最大トルク:205Nm(20.9kgm)/0-750rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/40R19 後275/35R19
車両本体価格:850万円

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

4シーターオープンスポーツ「メルセデス AMG CLE 53 4MATIC+ カブリオレ」の走行シーン。

「メルセデス AMG CLE 53 4MATIC+ カブリオレ」がデビュー「迫力のワイドボディに」

メルセデス AMGは、ミドルサイズオープン「CLE カブリオレ」に、3.0リッター直列6気筒ツインターボエンジンを搭載する「メルセデス AMG CLE 53 4MATIC+ カブリオレ」を追加した。爽快なオープンエアに、パワフルな直6ツインターボを組み合わせ、ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)による効率性も確保している。

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著者プロフィール

塩見 智 近影

塩見 智

1972年岡山県生まれ。1995年に山陽新聞社入社、2000年に『ベストカー』編集部へ。2004年に二玄社『NAVI』…