Gクラス初のフル電動モデル「メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology」

メルセデス・ベンツ Gクラス初のフル電動モデル「G580 with EQ テクノロジー」が担う役割とは?

2019年IAAで登場したコンセプトカー「EQG」。その市販モデルは、新たに「G580 with EQ Technology」という車名が与えられた。
2019年IAAで登場したコンセプトカー「EQG」。その市販モデルは、新たに「G580 with EQ Technology」という車名が与えられた。
北京モーターショーで初披露された新型「メルセデス・ベンツ Gクラス」。そのフル電動版となる「G580 with EQ Technology」が発表された。45年を誇るGクラスの歴史で初となるフル電動モデルは、単にエンジンを電気モーターに置き換えただけではないという。Gクラスの新境地を切り拓くニューモデルを解説する。

Mercedes-Benz G 580 with EQ Technology

最高出力588PSと最大トルク1164Nmに驚嘆

合計4基の電気モーターを搭載。それぞれ最高出力108kW(147PS)、最大トルク291Nmで合計最高出力432kW(588PS)、最大トルク1164Nmを誇る。

LAと北京で同時にワールドプレミアが行なわれた新しい「メルセデス・ベンツGクラス」。すでにその概要は明らかになっていた……と思いきや、実はここでひとつのサプライズが用意されていた。初のバッテリー電気自動車(BEV)版ラインナップとなる、その名も「G580 with EQ Technology」がお披露目されたのだ。

2019年のIAAでコンセプトカーとして登場した時にはEQGの名で呼ばれていたこの電動Gクラスだが、おそらくは今後EQシリーズは内燃エンジン車と合流していくという判断により、このちょっと冗長な名が与えられることとなった。ここでは以後、G580EQと記していく。

すでにカムフラージュを施した車両でのテストシーンなども公開されていたとは言え、改めてそのスペックを見て、思わず目を見開いてしまった。電気モーターは各輪に1基ずつの合計4基が搭載され、それぞれ最高出力108kW(147PS)、最大トルク291Nmを発生する。それが4基ということは、合計最高出力は432kW(588PS)、最大トルクは1164Nmにも達する。

その場で360°回転ができる「Gターン」も

更に驚くべきことに、各輪には2:1のローレンジが組み込まれている。低回転域から即座にトルクを発生する電気モーターで走行するだけに、不要ではないかとも思われたが、Gクラスに求められる走行性能を実現するには、やはり必須だったということか。同様の目的で、バーチャルデフロック、トルクベクタリングといった機能も組み込まれている。

この電気モーターはさすがにインホイールではなくラダーフレームにマウントされ、各輪とはデュアルジョイントシャフトで接続されている。デュアルジョイントとしているのは、ストローク時にキャンバー角に影響を与えないためである。

このラダーフレームは内燃エンジンモデルと共通。サスペンションも、フロントが独立懸架、リヤがリジッドという形式を踏襲しているが、リヤのド・ディオンアクスルは完全に新設計されたという。

この凝った駆動システムがもたらすのは、BEVでしか実現できない様々な走行モードだ。象徴的なのがその場で360°回転ができる「Gターン」。4秒で1回転を連続2回まで行なうことができる。もちろん途中で停めることも可能である。「Gステアリング」はリヤ側の内輪を軸にしてクルマを旋回させる機能で、非常に狭い折返しなどに遭遇した際に進路転換を容易にする。

悪路での速度維持を容易にするオフロードクロール機能も備わる。スロークロールは、上り下りそして平地で約2km/hの極低速を保った走行を行ない、バリアブルクロールは、人が歩くような速度を保ち、10〜20%の下り勾配ではアクセル操作により最大14km/hまで加速。ブレーキペダルを踏むと元の速度に戻って走行を続けるというものだ。

大幅に改善された空力性能

こうした走行性能だけでなく、独自のデザインも目をひくポイントである。新しいGクラスは全車、Aピラー表面の樹脂製パネル装着、ルーフへのリップスポイラー追加によって空力特性を改善し、更に遮音材の追加により弱点のひとつだった風切り音の大幅低減を実現している。G580EQでは更に、ボンネットを変更して中央部分を高く持ち上げている。これもやはり空力のためで、実際にCd値は0.53から0.44まで劇的に改善されているのである。

BEVでは空力は電費に直結する。実際、ラダーフレームの内側に捻れを防ぐ高剛性ケースで囲むかたちで容量116kWhのバッテリーを収めたG580EQは、WLTPモードで473kmという航続距離を実現している。実に3085kgという車重を考えれば、よく頑張ったと言うべきだろう。

外観では他に、コンセプトEQGを彷彿とさせる専用のフロントマスクが与えられている。起動と同時にイルミネーションが明滅するのは少々、らしくないという気も。リヤフェンダーにはこれも空力対策だというスリットが入れられ、リヤにはスペアタイヤではなく充電ケーブルを収納しておくための小さなボックスが備わる。尚、内燃エンジンモデルの700mmを上回る850mmの最大渡河深度は、完全に密閉された電装系はもちろん、ラジエーターやエンジンに空気を取り込む穴が塞がれたこの外装のおかげだという。

BEVでしか実現できないGクラスの新機能

初期限定モデルのEDITION ONE(左)はサウスシーブルーマグノなど5種類の特別色から選択可能。

45年にもなる歴史の中で初の電動化されたGクラスは、単に内燃エンジンを電気モーターとバッテリーに置き換えたモデルではない。BEVでしか実現できない、されどGクラスに相応しい機能を多数搭載して登場した。

エントリープライスは14万2621.50ユーロ(約2352万円)。EDITION ONEは19万2524.15ユーロ(約3176万円)となるG580 with EQ Technology。実現した機能を見れば、そのアピール度の高さを考えても、今の市場では案外リーズナブルと捉えられるのかもしれない。

SPECIFICATIONS

メルセデス・ベンツ G 580 with EQ テクノロジー

ボディサイズ:全長4624 全幅1931 全高1986mm
ホイールベース:2890mm
車両重量(Kerb):3085kg
トータル最高出力:432kW(588PS)
トータル最大トルク:1164Nm
バッテリー容量:116kWh
一充電走行可能距離:473km(WLTP)
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後リジッド・ド・ディオン
タイヤサイズ:265/60R18
0-100km/h加速:4.7秒
最高速度:180km/h

2021年に「コンセプト EQG」として公開されたGクラスのフル電動仕様が、いよいよ市販モデルとして中国・北京でワールドプレミアされる。

メルセデス・ベンツが北京開催の「オートチャイナ 2024」でフル電動「Gクラス」など新型2車種をワールドプレミア

メルセデス・ベンツは、2024年4月25日から5月4日にかけて中国・北京で開催される「オートチャイナ 2024(北京モーターショー2024)」において、メルセデス・ベンツ Gクラスのフル電動仕様を初公開する。また、メルセデス AMG GT 63 S E パフォーマンスもお披露目される予定だ。

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著者プロフィール

島下 泰久 近影

島下 泰久

1972年神奈川県生まれ。走行性能だけでなく先進環境安全技術、ブランド論、運転など、クルマ周辺のあらゆ…