日本でも引く手あまたの人気を誇るGクラス!大注目はBEVの「G580」だ!

最強のGクラスは意外にもフル電動の「メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology」だった

インフォテインメントシステム、空力性能、あらゆる性能を向上させた新型Gクラスはより一層魅力的なSUVへと進化を果たした。大注目のBEV版モデルを中心に海外試乗記をお届けする。
インフォテインメントシステム、空力性能、あらゆる性能を向上させた新型Gクラスはより一層魅力的なSUVへと進化を果たした。大注目のBEV版モデルを中心に海外試乗記をお届けする。
空力性能、インフォテインメント、エンジン等、あらゆる性能を向上させた新型Gクラスが登場した。中でも注目はBEV版の「G580ウィズEQテクノロジー」に間違いない。1164Nmもの大トルクを誇る電動Gクラスは悪路走破性はもちろん、なんと360度ターン可能な「Gターン」という特技も有する。G580ウィズEQテクノロジーを中心に新型Gクラスの全貌に迫ってみた。(GENROQ 2024年7月号より転載・再構成)

Mercedes-Benz G 580 with EQ Technology

電動Gクラスの悪路走破性は見事だ!

G580はGターン、GステアリングなどBEVモデルならではの特技はあるものの、それ以外の質実剛健な悪路走破性も従来のGクラスを踏襲していた。
G580はGターン、GステアリングなどBEVモデルならではの特技はあるものの、それ以外の質実剛健な悪路走破性も従来のGクラスを踏襲していた。

メルセデス・ベンツのアイコンのひとつ、Gクラスが大幅改良を受けた。今回の改良はBEVモデルの追加と、主にサイバーセキュリティ法の施行に合わせたアップデートである。プラットフォームは従来通りだがパワートレインやエレクトロニクス関係、インフォテインメントシステムなどは、すべて刷新された。制御ソフトウェアを含むエレクトロニクスは、ゼロから新規開発したという。誤解を恐れずに言うなら、「身体はそのまま、頭脳と神経をすべて入れ替えた」ようなものである。

コードネームも従来の「W463」から「W465」に変わり、限りなくフルモデルチェンジに近い改良と言える。エクステリアはエアロダイナミクス改善のための変更プラスαだが、インテリアは、タッチディスプレイやタッチパッドなどが備わり、従来のようなメカっぽさが薄まってグッと現代的になっている。

そんな新型の国際試乗会が、南フランスで行われた。新型はICEモデルが、3.0リッター直6ディーゼルターボを積むG450dと、3.0リッター直6ガソリンターボのG500、そしてAMG製の4.0リッターV8ツインターボを搭載したAMG G63の3タイプ。これらはすべて20‌PS/200Nmを発揮するISGを備えたマイルドハイブリッドだ。そしてEQG改め「G580ウィズEQテクノロジー(以下、G580)」というモデル名が与えられたBEVバージョンが登場した。

より無骨な雰囲気が増したG63

BEVモデルのG580とはグリル形状が異なるメルセデスAMG G63。ICEモデルは全車ISGを備えたマイルドハイブリッドとなった。
BEVモデルのG580とはグリル形状が異なるメルセデスAMG G63。ICEモデルは全車ISGを備えたマイルドハイブリッドとなった。

AMGモデルのG63は、相変わらずスパルタンだ。快適性は向上しているが、ドライビングフィールのGクラスらしさは明らかに濃厚。新たにISGを手に入れた最高出力585PS、最大トルク850Nmを発揮する4.0リッターV8ツインターボや、油圧式のスタビライザーを備えたAMGアクティブライドコントロールサスペンションがもたらす走りは、極めてダイナミックで、AMGモデルに相応しいスポーティネスと、往年のGクラスに通じる“無骨さ”が強く感じられる。今回はオンロードに加えてオフロードでのハイスピードドライビングも体験したのだが、全高が2m近いクルマとは思えないほど俊敏でコントローラブルであることに驚かされた。

注目のBEVモデル、G580は、非常に興味深い1台である。4輪に各1基、計4基の電気モーターを備え、最高出力587PS、最大トルク1164Nmを実現。各モーターにハイ/ロー2段のトランスミッションを持つ。またモーター搭載位置の関係で、専用開発のリヤリジッドアクスルを採用している。

リチウムイオンバッテリーは、ラダーフレームの隙間にぎっしり詰め込まれ、蓄電容量は合計で116kWh。航続距離はWLTPモードで473kmと、バッテリー容量の割に長くはないが、必要十分な足の長さは確保していると言っていいだろう。

最も衝撃を受けたのは、圧倒的なオフロード性能だ。相当に荒れた道でありながら、その速さはダカール・ラリーでも走っているのではないかと思うほど。4基の電気モーターの緻密な制御により、ICEモデルにおける前後およびセンターデフの差動制御をトルクベクタリングで仮想的に再現し、極めて優れたスタビリティとコントロール性を実現している。モーグル的なコースでは、ボタンひとつでローギヤに入れることができるうえ、インテリジェントオフロードクロール機能により、パドル操作のみで車速調整が可能。360度カメラを用いたトランスペアレントボンネット機能も備え、極めて優れた悪路走破性能を発揮する。

Gターンはめちゃくちゃ楽しい!!

極めつけはGターンとGステアリングだ。Gターンは、一般的には「タンクターン」と呼ばれるもので、左右のタイヤを逆方向に回転させることで、その場でクルマの向きを変える機能である。インパネ中央にあるボタンを押して、アクティブになっていることを確認し、ステアリングを直進状態にキープして、左右のパドルのどちらかを引いたままアクセルペダルを踏み込むと、クルマが回転し始めるのだ。回転方向は右のパドルを引けば時計回り、左を引けばその逆となる。約4秒で1回転し、最大2回転で自動的に停止する。

Gステアリングは、低速で作動する自動ドリフト機能といったところ。インパネにある起動ボタンを押すとアクティブになる。走りながらステアリングを大きく切り込むと、自動的に内輪にブレーキが掛かり、同時に外輪の駆動力が増し、ドリフト状態となって回転半径が小さくなるのだ。4輪にモーターを備えたBEVだからこそ可能な機能であるこれらは、G580の大きな魅力だ。実際に体験すると非常に楽しいので、G580を手に入れたらオフロードに行きたくなること間違いなしだ。

ICEとBEVどちらを選ぶか?

ICEかBEVのG580をのどちらを選ぶかは極めて重要な問題だ。現在でさえ入手困難なGクラス。新型はより過酷な争奪戦が予想される。
ICEかBEVのG580をのどちらを選ぶかは極めて重要な問題だ。現在でさえ入手困難なGクラス。新型はより過酷な争奪戦が予想される。

少々残念だったのはオンロードでの快適性。G580はICEモデルの内容に加えて、専用形状のボンネットフードの採用や、リヤホイール周りの空気の流れを改善するエアカーテンなどにより、エアロダイナミクスはCd値0.44とさらに改善している。そのため静粛性に関しては十分だが、乗り心地が今ひとつなのだ。この点を除けば、G580の走りは相当に良い。加速はとても力強く、コーナリングも俊敏。ブレーキングもスムーズで、3085kgもの車両重量を意識することはまったくない。直進性も素晴らしい。

ICEとBEVのどちらを選ぶかは、極めて悩ましい問題だ。特にG63とG580は、どちらも魅力的なので、1台に絞るのは難しい。ただ、G580は予想より手頃な価格(ガソリンのG500より若干高い程度)で発売される模様なので、G580が人気を博すかもしれない。

REPORT/竹花寿実(Toshimi TAKEHANA)
PHOTO/Mercedes-Benz AG
MAGAZINE/GENROQ 2024年7月号

SPECIFICATIONS

メルセデス・ベンツ G580 ウィズ EQ テクノロジー

ボディサイズ:全長4624 全幅1931 全高1986mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:3085kg
システム最高出力:432kW(587PS)
システム最大トルク:1164Nm(118.7kgm)
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後リジッド
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後265/60R18
0-100km/h加速:4.7秒
最高速度:180km/h

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

フル電動クロスカントリー4WD「メルセデス・ベンツ G 580 with EQ テクノロジー」の走行シーン。

フル電動「メルセデス・ベンツ G 580 with EQ テクノロジー」の初期限定車「EDITION ONE」デビュー

メルセデス・ベンツは、4月25日から中国・北京で開催される「オートチャイナ 2024(北京モーターショー2024)」において、Gクラスにフル電動パワートレイン「EQテクノロジー」を搭載した「G 580 with EQテクノロジー」をワールドプレミアした。本格的な販売に先立ち、装備を充実させた限定仕様の「EDITION ONE」を導入する。

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著者プロフィール

竹花 寿実 近影

竹花 寿実

1997年に美術大学卒業後、自動車雑誌『driver』スタッフとして業界入り。自動車情報サイト『Hobidas Auto…