【アストンマーティンアーカイブ】復活アストンのフラッグシップとなった「V12ヴァンキッシュ」

名実ともに復活の狼煙となったフラッグシップ「V12ヴァンキッシュ」【アストンマーティンアーカイブ】

名実ともに復活アストンマーティンのフラッグシップとなった「V12ヴァンキッシュ」。
名実ともに復活アストンマーティンのフラッグシップとなった「V12ヴァンキッシュ」。
映画『007/ダイ・アナザー・デイ』で“ボンドカー”として15年ぶりに復活するなど、名実ともに復活アストンマーティンのフラッグシップとなった「V12ヴァンキッシュ」。当時としては人気となった秘密に迫る。

V12 Vanquish(2001-2004)

2001年のジュネーブ・ショーでデビュー

イアン・カラムがデザインしたマッシブなボディ。
イアン・カラムがデザインしたマッシブなボディ。

1990年代、アストンマーティンでは20年以上にわたり使われてきたタデック・マレック設計のV8に代わる新たなフラッグシップエンジンの開発をスタート。1993年のジュネーブ・ショーで「DB7」とともに発表された大型サルーン「ラゴンダ・ヴィニャーレ・コンセプト」のために、5.9リッターV12ユニットを新たに開発するという決定がなされた。

しかしフォードの意向もあってラゴンダのプロジェクトは中止。結局フォード・リサーチ&ヴィークル・テクノロジー・グループとコスワース・エンジニアリングの協力を得て開発された軽合金製の5.9リッター60度V12 DOHC 48バルブエンジンは、1999年登場の「DB7 V12ヴァンテージ」で日の目を見ることになった。

その一方でアストンマーティンは、V12を用いたヴィラージュに代わる新たなフラッグシップの開発も始め、1998年1月のデトロイト・ショーでコンセプトモデル、プロジェクト・ヴァンテージを発表した。これは押し出し成形のアルミフレームにカーボン・コンポジットを組み合わせたまったく新しいシャシーに、5.9リッターV12エンジンとセミATを搭載したもので、イアン・カラムがデザインしたマッシブなボディが架装されていた。

当初は生産の予定はないとアナウンスされていたプロジェクト・ヴァンテージだが、ほぼそのままの姿で「V12ヴァンキッシュ」として2001年のジュネーブ・ショーでデビュー。すぐにニューポートパグネルで生産がスタートしている。

VHプラットフォームの礎に

押し出し成形のアルミフレームにカーボン・コンポジットを組み合わせたまったく新しいシャシーに、5.9リッターV12エンジンとセミATを搭載。
押し出し成形のアルミフレームにカーボン・コンポジットを組み合わせたまったく新しいシャシーに、5.9リッターV12エンジンとセミATを搭載。

ノーズに積まれたV12エンジンは、インレット・マニホールド、カムシャフト、バルブギア、クランクシャフト、エグゾーストシステムなどを新設計とすることで、DB7 V12ヴァンテージを上回る466PSの最高出力を発生。電子制御式ドライブバイワイヤスロットルと連動したギヤボックスはマグネット・マレリと共同開発したパドルシフトを備えた6速セミATで、0-100km/h加速5.0秒、最高速度306km/hというパフォーマンスを誇った。

後のVHプラットフォームの礎となったアルミ押し出し材のフレームとカーボンファイパーのパネルを組み合わせたシャシーは、そもそもラゴンダ・ヴィニャーレのためにロータス・エンジニアリングらの協力を得て開発されたもので、高い剛性と軽量化を実現。サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーンで、ブレーキには前後ともに大径のベンチレーテッドディスクが奢られた。

エクステリアパネルはスーパーフォームドで成型されたアルミニウム製で、ハンドメイドで組み付けられている。一方のインテリアは8枚のコノリーハイド(コノリー消滅後はブリッジ・オブ・ウィアーに変更)を用いた贅を尽くしたもので、敢えて古典的なウォルナットパネルを用いない(のちに用意される)モダンなデザインでも話題となった。シートレイアウトは基本的にシートバックにラゲッジスペースを備えた2シーターだが、5000ポンドのオプションで2+2にすることもできた。

発表直後から大きな反響を得たV12ヴァンキッシュにはオーダーが殺到。当初は年間300台で予定されていた生産台数が、すぐに500台に引き上げるほどの人気車種となった。

名実ともにフラッグシップ

スーパーフォームドで成型されたアルミニウム製エクステリアパネルは、ハンドメイドで組み付けられる。
スーパーフォームドで成型されたアルミニウム製エクステリアパネルは、ハンドメイドで組み付けられる。

そして2002年11月に公開された映画『007/ダイ・アナザー・デイ』では、光学迷彩、自動追尾砲、マシンガン、ミサイルなどのガジェットを備えたピアース・ブロスナン演じるジェームズ・ボンドの“ボンドカー”として15年ぶりに復活(ちなみに4台製作された撮影車にはフォードのV8エンジンと、エクスプローラーのAWDユニットが組み込まれていたという)。「ヴァンキッシュ」(征服する、圧倒するという意味)の名の通り、名実ともにアストンマーティンのフラッグシップとなったのである。

その後2004年に「V12ヴァンキッシュS」が登場するまで、様々なオーダーに応えながらV12ヴァンキッシュは2004年秋までに合計で1503台が製造されている。

ワイドでグラマラスなボディを持つ「DB7ザガート」。

V8ヴァンテージ・ザガート以来となるコラボモデル「DB7ザガート」と「DB AR1」【アストンマーティンアーカイブ】

好評を博した「DB7」だが、モデルライフが末期に近づくにつれ新鮮味、話題性に翳りが見えていた。そこでザガートに対し、V8ヴァンテージ以来となるコラボレーションを打診。ザガート伝統のダブルバブル・ルーフと、ワイドでグラマラスなボディをデザインした「DB7ザガート」と「DB AR1」が誕生した。

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藤原よしお 近影

藤原よしお

クルマに関しては、ヒストリックカー、海外プレミアム・ブランド、そしてモータースポーツ(特に戦後から1…