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DB9(2004-2016)
2003年のフランクフルト・ショーで発表
1999年からフォードが立ち上げたPAG(プレミアム・オートモーティブ・グループ)の一員になったアストンマーティンは、2000年にCEO兼会長に就任したウルリッヒ・ベッツのもとで、様々な改革に乗り出した。
その中でベッツは、計画が進んでいたミッドシップV8スポーツカーのプロジェクトを中止するとともに、年間生産台数を5000台規模に設定。それを満たすための低コストで汎用性の高いシャシーとして開発されたのがVH(Vertical Horizontal)プラットフォームだ。
これはその名の通り、あらゆるハードウエアに対応可能なバーチカル(垂直的)で、PAG内のリソースを有効に活用できるホリゾンタル(水平的)なプラットフォームを目指したもので、アルミ押し出し材を接着剤とリベットで結合したスペースフレームシャシーは、「DB7」より25%の軽量化と2倍の捩れ剛性のアップを果たしていた。それを初めて採用したモデルとして2003年のフランクフルト・ショー(発売は2004年から)で発表されたのが「DB9」だ。
V12ヴァンキッシュ用を改良したV12
空力を意識したボディ内蔵型のドアハンドル、上方に12度の角度をつけて開くスワンウィングドアを持つ「DB7」「V12ヴァンキッシュ」の流れを汲むクラシカルでモダンなボディは、イアン・カラムのデザインを元にヘンドリック・フィスカーが仕上げたもの。滑らかなボディパネルは、すべてスーパーフォーミング製法で作られたアルミニウム製となる。
フロントアクスルの後方にマウントされた5.9リッターV12DOHCエンジンは、V12ヴァンキッシュ用をベースとして、カムシャフトやマニフォールドを改良することにより456PSの最高出力と569Nmの最大トルクを発生。ギヤボックスはパドルシフト付きの6速AT“タッチトロニック2”もしくは6速MTで、そのパフォーマンスは0-100km/h加速4.9秒、最高速度299km/hとアナウンスされた。
そして2004年のデトロイト・ショーではオープンのDB9ヴォランテを発表。17秒で開閉可能な電動ソフトトップはコンパクトな作りで、ラゲッジスペースもクーペと同等の容量を確保。横転時に飛び出すロールバー、車重の2倍の負荷にも耐えられるAピラーなど安全装備も充実する一方で、車重が100kgほどしか増えていないのは、まさにVHプラットフォームの効果といえた。またエンジンはクーペと同じ5.9リッターV12だが、足まわりはクルマのキャラクターに合わせて、若干ソフト寄りにリセッティングされている。
「ヴィラージュ」をベースとした新型DB9へ
その後2008年にはアルマイト処理された5本のバーチカルグリル、DBS譲りのドアミラー、5スポークの19インチアルミホイールを備え、5.9リッターV12の最高出力を470PS、最大トルクを600Nmへとアップしたマイナーチェンジを実施。それに合わせて6速タッチトロニック2にも改良が施され、変速スピードがアップしている。
さらに2009年のマイナーチェンジでは、新たにビルシュタイン製ダンパーを採用したほか、アッパーサスペンションアームとサスペンションブッシュを改良。翌2010年には、DBSに採用されたアダプティブ・ダンピングシステムを搭載したプレミアムスポーツパックをオプションで用意。続く2011年には新デザインのヘッドランプ、ロワーインテーク、バーチカルグリル、19インチホイールに加え、アダプティブ・ダンピングシステムを標準装備となるなど、矢継ぎ早の改良が加えられた。
そして2013年、少々ややこしい話になるが、「DB9」はDB9から派生した「ヴィラージュ」をベースとした新型DB9へと進化を遂げる。このモデルに関しては、追ってヴィラージュの項でお届けすることにしたい。