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AKRAPOVIC LIMITED-EDITION EXHAUST SYSTEM
限定50セットのチタン製マフラー
「アクラポヴィッチ」はポルシェとは切っても切れない仲だ。イゴール・アクラポヴィッチ氏が牽引して2輪界を席巻し、次いで4輪へと進出する段になって、いきなり997型「911 GT2」に純正採用された。最高峰から攻めた格好だが、その後も弛まぬ進化を続けて最高峰に居続ける。2008年にはマンタイ・レーシングが走らせる「911 GT3 RSR」に採用され、彼らのニュル24時間における4制覇を支えた。以来、メーカー純正(OEM)、レーシングカー、己のブランドのアフターパーツを数多くリリースしてきた。
その中でもポルシェのホットモデルに寄り添う姿勢は不変だ。それを再確認するような限定モデルが登場した。992型GT3およびGT3 RSのためにわずか50セットのみ製作されたリミテッドエディションである。2023年末にリリースし、瞬く間に完売したというが、そのうちの1セットが日本にやってきた。機能とスタイルを両立させるチューニングには定評のあるプロショップであるメイカーズの代表、西尾健治氏が手を挙げたのだ。装着するクルマがまだ手に入っていないのに、その希少性を前に即断即決したという。
同社のショールームにはまるで芸術品のようなオーラを持ってリミテッドエディションが展示されている。アクラポヴィッチの持ち味にしてすべて社内で鋳造および溶接されるというチタン成型のパイピング類はいつ見ても美しい。それ自体が非常に強靭かつ軽量性能に優れる。溶接に関して言うと単に強固に接着させるだけではなく、力のかかる部分に敢えて“逃げ”を持たせるという。そのため負荷が掛かっても割れにくいそうだ。
チタンの半分の重量の新素材CMC
リミテッドエディションならではの造形として、さらに注目すべきはテールパイプ。CMC(セラミック・マトリックス・コンポジット)製のアウタースリーブがとりわけ目を引く。この素材はチタンよりもさらに約50%も軽量で、1000度という高温領域でも安定した“強さ”を持つという。現在はモータースポーツのほか、航空宇宙分野でも使用される画期的な素材である。インターシェルも画期的だ。アクラポヴィッチの最新技術である3Dプリントで成型したのち、サンドブラストを施したという。ここには水平対向6気筒エンジンに合わせて6つのフィンが設けられる。
本国R&Dによるテストデータによると、最高出力+6.5kW、最大トルク+24.1Nmものオントップが見込める。純正に比べて31%(12.2kg)という軽量化も見逃せない。純正時点で優れた性能を持つGT3 RSなのに、さらに突き詰めてきたことに驚く。なお、ECUのリ・マッピングは不要で、ガソリンパティキュレートフィルター(GPF)の有無に関わらず装着できる。
さらに発表によれば、通常のクルージングではスムーズに、高回転域ではレーシングライクなサウンドを奏でるという。そんな言葉を見ると一刻も早くこの音色を直に聴いてみたくなるが、それはそう遠くない未来に実現しそうだ。西尾氏はこれからGT3 RSを手に入れて装着する予定でいる。ただ飾り立てるだけでなく、本気で速さを追い求める男である。サーキットでは我々を魅了させる咆哮を届けてくれるに違いない。
REPORT/中三川大地(Daichi NAKAMIGAWA)
PHOTO/山本佳吾(Keigo YAMAMOTO)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 8月号
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