1948 Porsche 356-001【ポルシェ図鑑:01】

【ポルシェ図鑑】「ポルシェ 356-001(1948)」記念すべき第1号車。

1948 Porsche 356-001【ポルシェ図鑑:01】
1948 Porsche 356-001のフロントスタイル。
スポーツカーブランドを代表するポルシェのヒストリーは、1948年にデビューした356-001に遡る。当時としては画期的な鋼管スペースフレーム・シャシーを用いたミッドシップ・レイアウトに、現代でもポルシェを象徴する水平対向エンジンを搭載した「始まりのポルシェ」に迫る。

1948  Porsche 356-001

ポルシェの名を冠した最初のモデル

1948 Porsche 356-001【ポルシェ図鑑:01】
1948 Porsche 356-001の正面。オーストリア当局から取得した「K45−286」のライセンスナンバーが確認できる。

第二次世界大戦中からオーストリア・グミュントに疎開していたフェリー・ポルシェらポルシェ設計事務所の開発陣が、1948年に発表した「ポルシェ」の名を冠した最初のモデルである。

当初は、フォルクスワーゲンに売り込むためのビートルをベースとしたスポーツモデルとして企画され「フォルクスワーゲン スポーツ」と呼ばれていたが、スイス人実業家の支援を取り付けたことで、オリジナルモデルとして開発されることとなった。

水平対向4気筒をミッドマウント

1948 Porsche 356-001【ポルシェ図鑑:01】
1948 Porsche 356-001のエンジン。フォルクスワーゲン ビートルがベースの空冷水平対向4気筒OHVは排気量1131cc、最高出力35hpを発揮。最高速度135km/hに達した。

その最大の特徴は鋼管スペースフレーム・シャシーをもつミッドシップ・レイアウトにある。

これは1946年にポルシェがイタリアのチシタリアから依頼を受け開発した、1.5リッター水平対向12気筒スーパーチャージャーをミッドシップ・マウントする4WD GPマシン「タイプ360」の影響を受けたもので、当時としては非常に先進的なものであった。

エンジンはフォルクスワーゲン ビートルの1131cc空冷水平対向4気筒OHVをベースとしたもので、ギヤボックス共々、反対向きに搭載することでミッドシップを実現。またエンジン自体もソレックス製キャブレターを2基装着するなどのファインチューンによりノーマルの25hpを上回る35hpを発生していた。

エルヴィン・コメンダによる美しいデザイン

1948 Porsche 356-001【ポルシェ図鑑:01】
1948 Porsche 356-001のフロントスタイル。アルミ製の流麗なボディはエルヴィン・コメンダのデザインによるもの。

流麗なオープン2シーターのボディは、エルヴィン・コメンダのデザインによるハンドメイドのアルミ製。1948年3月に完成し、テストが繰り返されていた当初は無塗装だったが、6月15日にオーストリア当局から「K45−286」という正式なライセンスナンバーが交付された際に、淡いグレーに塗装されている。

1948 Porsche 356-001【ポルシェ図鑑:01】
1948 Porsche 356-001のインテリア。シンプルなメーター周りとツートーン仕様が印象的で、現代の目で見るとクラシックな佇まいだ。

このほか、4速ギヤボックス、フロントアクスル、リヤアクスル、ステアリング、ホイール、ブレーキといったコンポーネンツは、ビートルから流用されたものだった。

またインテリアは中央にスピードメーターのみを備えた専用のデザインとなっていたほか、シートはベンチタイプで幌やサイドウインドウの用意はなかった。

ポルシェが買い戻したのは1958年

1948 Porsche 356-001【ポルシェ図鑑:01】
1948 Porsche 356-001のリヤスタイル。ポルシェが買い戻した後、1975年頃と2017年にセミレストアを行っている。

356-001が正式に発表されたのは1948年7月4日。スイスGPが行われていたベルン郊外のブレムガルテン・サーキットでのことだった。その後7月11日にヘルベルト・カエスのドライブで、インスブルック・シティレースでデモランを行ったのち、12月にチューリッヒに住むドイツ人建築家、ペーター・カイザーへ7500フランで売却。数人のオーナーの間を転々とする中で、エンジンを356プリAの1.5リッター・ユニットへ載せ替え、ボディをシルバーに塗り替えるなど、内外装に様々なモディファイが加えられた。

1958年にポルシェが買い戻してから、しばらくそのままの状態で保管されていたが、1975年前後に改造されていたテールランプなど外装を中心としたセミレストアを実施。そして誕生70周年を前にした2017年に、エンジン、インパネ、ホイールなどをオリジナル・スペックに戻すセミレストアが施されている。

【SPECIFICATIONS】
ポルシェ 356-001
年式:1948年
エンジン形式:空冷水平対向4気筒OHV
排気量:1131cc
最高出力:35hp
最高速度:135km/h

TEXT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)

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