連載

GENROQ アストンマーティンアーカイブ

LAGONDA TARAF(2014-2018)

“究極の贅沢”を意味するアラビア語

マレク・ライヒマンがラゴンダS2をモチーフにデザインした、全長5397mm、全幅1918mm、全高1389mmのカーボンファイバー製の4ドアボディが架装される。
マレク・ライヒマンがラゴンダS2をモチーフにデザインした、全長5397mm、全幅1918mm、全高1389mmのカーボンファイバー製の4ドアボディが架装される。

2013年、アストンマーティンは創業から100周年を迎えた。それを記念して7月にはゲイドン本社で盛大なセレモニーが催されたほか、バルケッタ・スタイルを持つCC100スピードスター・コンセプトが発表されるなど、様々なプロジェクトが披露された。

その一方で、メルセデスAMGとパワートレインや電装のコンポーネンツの供給に関する技術提携を締結。2014年にはアンディ・パーマーがCEOに就任するなど、新たな時代に向けての一歩を踏み出そうとしていた。そんな中、2014年に突如発表されたのが4ドアサルーンの「ラゴンダ・タラフ」だ。

これは1990年以来、消滅していたラゴンダブランドを再び甦らせたもので、ラピードのさらに上を行くラグジュアリー・スーパーサルーンとして企画。「プロジェクト・コメット」の名で開発が進められ、8ヵ月でプロトタイプが完成した。

その後、プロトタイプが中東を舞台に様々なテストを行ったうえで、その車名をアラビア語で“究極の贅沢”を意味するタラフと命名された。ところが、2014年11月にドバイで正式発表された時には、中東限定で100台のみ販売すること以外、エンジン形式も排気量も価格も公表されることはなかった。

ホイールベースを200mm延長

結局、その後も詳細は明らかにされていないが、タラフのシャシーはラピードのVHプラットフォームをベースとしたもので、ホイールベースを3189mmへと200mm延長。そこにマレク・ライヒマンがラゴンダS2をモチーフにデザインした、全長5397mm、全幅1918mm、全高1389mmのカーボンファイバー製の4ドアボディが架装されている。ちなみにボディはラピードよりさらに大型化しているものの、外装をフルカーボン製としたことで、車重は1995kgとほぼ同一に収められている。

エンジンは547PSを発生する5.9リッターV12で、ギヤボックスにはZF製の8速AT“タッチトロニックⅢ”を採用。そのほか前後ダブルウイッシュボーンのサスペンション、アダプティブダンパーなど、基本構成はラピードと変わっていない。一方、専用デザインのインテリアは、ふんだんにウッドやレザーを用いた贅を尽くしたものとなっており、その生産はOne-77やV12ザガートを製造していたゲイドンの施設で専属の職人たちによって進められた。

こうして2015年から生産がスタートしたタラフだったが、100万ドル以上と当時の同クラスの高級車と比べても遥かに高価な価格設定もあり、中東限定の販売戦略は苦戦を強いられ、すぐにヨーロッパ、北米、アジア地域での販売を解禁。

販売状況が持ち直したことで、一時はストレッチバージョンの販売も噂されたが、実現することなく、バリエーションが発売されることはなかった。

当初の予定を上回る120台を生産

ラピードよりさらに大型化したボディだが、外装をフルカーボンとすることで、車重は1995kgとほぼ同一に収められた。

2018年、アストンマーティンは1930年代のラゴンダを彷彿とさせるウルトラマリンブラックのエクステリアカラー、10スポークシルバーダイヤモンドホイール、特注キルトパターンのトリムなどをあしらった、4台限定のタラフ・ファイナル・エディションを発表。それを含め、最終的に当初の予定を上回る120台が生産された。

タラフの製造終了後、ラゴンダはEVブランドとして活動していくことがアナウンスされていたが、その後計画は撤回され、以来ラゴンダブランドを名乗るモデルは現れていない。

DBSにくらべて56kgほどの軽量化を実現した2代目「ヴァンキッシュ」。

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