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Porsche 911 Turbo 3.0
FRの924に追加されたターボモデル
すべては1974年、パリ・モーターショーで発表された「ポルシェ 911 ターボ3.0」から始まった。モータースポーツ由来の過給技術「ターボチャージャー」を搭載したことで、3.0リッター水平対向6気筒エンジンは、欧州仕様で191kW(260PS)という当時としては驚異的なパワーを発揮。それ以来、ターボはポルシェに欠かせない存在となった。
911のラインナップの頂点に君臨したターボ搭載モデルは、世代を重ねるごとに、よりパワフルに、より速く、そしてより効率的進化を遂げてきた。1978年以降、ポルシェには、エンジンの搭載位置がリヤであろうと、フロントであろうと、ラインナップにターボバージョンを設定してきた伝統がある。
1978年、ポルシェは「924 ターボ」を発表する。ベースとなった924はポップアップ式のリトラクタブルライトを備え、フロントに2.0リッター直列4気筒エンジンを搭載、トランスアクスルを介してリヤを駆動した。924 ターボはフロントに4つの冷却用エアインテークとボンネットにNACAダクトが設けられ、オプションとしてツートーンカラーも用意されている。
1985年に登場した後継の「944 ターボ」は、トランスアクスルの利点である高い居住性や均等な重量配分に、先進のターボテクノロジーを組み合わせ、快適なトラベルスポーツカーとして924 ターボ以上の人気を集めることになった。
NAモデルに「ターボルック」の組み合わせ
1983年、ポルシェは911 ターボの高い人気を受けて、Gシリーズ カレラ 3.2に新たなモデルバリエーションを追加した。多くのカスタマーからのリクエストに応じて、ベーシックバージョンの3.2リッター水平対向6気筒自然吸気エンジン搭載モデルに、よりワイドな「ターボルック」が組み合わせられるようになったのだ。
オプションの追加コード「M491」は、ワイドフェンダーに加えて、大型リヤスポイラーの装着も可能。911 カレラ3.2には、911 ターボから引き継がれたブレーキシステムと、よりハードなサスペンションが装備された。このターボルックモデルは、クーペ、タルガ、カブリオレ、そしてスペシャルモデルのスピードスター(1983年から1989年まで生産)でも選ぶことができた。
このNAエンジン+ターボルックという成功のレシピは、1992~1993年に販売されたタイプ964の911 カブリオレと911 スピードスター、そしてカレラクーペ30周年記念モデルでも復活。ターボに似たボディ形状は、近年の911でも人気を博しているが、「ターボルック」という公式名称はすでに廃止されている。
ビッグパワーを求めたツインターボの導入
ポルシェは1994年「911 GT2(タイプ993)」を発表。911 GT2は、最高出力430PSを発揮する3.6リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載し、ヴァイザッハ開発センターのポルシェモータースポーツによって、公道走行可能なGTレーシングカーとして開発された。
911 GT2の発表に際し、「このまますぐにレースに出られる」と、当時のポルシェは主張。2007年には、6代目911(タイプ997)に、公道走行可能なレーシングカーと言える「911 GT2 RS」を追加した。911 GT2 RSに搭載されていたボクサー6エンジンは、可変タービンジオメトリー(VTG)を備えた、2基のターボチャージャーが導入されている。
少排気量でビッグパワーを実現するため、ポルシェは2015年モデル(タイプ991)から、911 カレラと911 カレラ Sにもツインターボを備えた新世代のエンジンを採用。2016年モデルからは、718 ボクスターの4気筒モデルにも、この技術が導入されている。
初の4ドアモデルに設定されたターボ仕様
2002年、全輪駆動モデルの「カイエン」によって、新たな時代が幕を開けた。ポルシェ初の5人乗り4ドアモデルの登場である。ハイパフォーマンス仕様のカイエン ターボは、最高出力450PSを発揮する4.5リッターV型8気筒ターボエンジンを搭載。最新世代のカイエン ターボ E-ハイブリッドはシステム最高出力544kW(740PS)を誇る。
2009年に発表された「パナメーラ」でも、ターボがハイパフォーマンスモデルの代名詞となった。2基のターボチャージャーを備えた2種類の4.8リッターV型8気筒エンジンは、それぞれ最高出力368kW(500PS)と405kW(550PS)を誇り、全輪駆動とセラミック製ブレーキディスクが組み合わせられた。
EVにも「ターボ」のネーミングを採用
2019年「タイカン」の投入により、ポルシェはついにEV時代へと突入する。「タイカン ターボ」と「タイカン ターボS」は、機械的な過給器を備えている訳ではなく、最もパワフルなバージョンの名称として「ターボ」が採用されている。
2024年には、EV専用モデルに生まれ変わった「マカン」にも「ターボ」を設定。マカン ターボ エレクトリックは最高システム出力470kW(639PS)を誇る。また、大規模なフェイスリフトが実施された「タイカン ターボ GT」は、約2秒間ながらも最高出力815kW(1108PS)を実現。1974年の初代911ターボの実に4倍以上という、ポルシェ史上最もパワフルな市販モデルに君臨している。