1974年の「ポルシェ 911 ターボ」から続く「ターボ」の系譜

「ポルシェ 911 ターボ」デビュー50周年の節目に今やEVにも使われる“ターボ”のネーミングの意味を考える

1974年に市販モデル初のターボモデルとして、世界中に大きなインパクトを与えることになったポルシェ 911 ターボ。以来、50年を経て、ターボは本来の意味を超えて使用されるようになった。
1974年に市販モデル初のターボモデルとして、世界中に大きなインパクトを与えることになったポルシェ 911 ターボ。以来、50年を経て、ターボは本来の意味を超えて使用されるようになった。
1974年に発表したポルシェ初のターボ搭載量産スポーツカー「911 ターボ」。以降50年間、ターボという言葉はポルシェにおいてエキサイティングな変貌を遂げている。本来の意味でのターボチャージャーテクノロジーはもちろん、大型化されたリヤスポイラーを備えたターボルック、そして現在ではEVにも「ターボ」の名称が使われるようになった。それらのエピソードをまとめた。

Porsche 911 Turbo 3.0

FRの924に追加されたターボモデル

911よりもリーズナブルなFRスポーツカーとして投入された924。1978年には2.0リッター直列4気筒ターボを搭載した924 ターボが追加された。
911よりもリーズナブルなFRスポーツカーとして投入された924。1978年には2.0リッター直列4気筒ターボを搭載した924 ターボが追加された。

すべては1974年、パリ・モーターショーで発表された「ポルシェ 911 ターボ3.0」から始まった。モータースポーツ由来の過給技術「ターボチャージャー」を搭載したことで、3.0リッター水平対向6気筒エンジンは、欧州仕様で191kW(260PS)という当時としては驚異的なパワーを発揮。それ以来、ターボはポルシェに欠かせない存在となった。

911のラインナップの頂点に君臨したターボ搭載モデルは、世代を重ねるごとに、よりパワフルに、より速く、そしてより効率的進化を遂げてきた。1978年以降、ポルシェには、エンジンの搭載位置がリヤであろうと、フロントであろうと、ラインナップにターボバージョンを設定してきた伝統がある。

1978年、ポルシェは「924 ターボ」を発表する。ベースとなった924はポップアップ式のリトラクタブルライトを備え、フロントに2.0リッター直列4気筒エンジンを搭載、トランスアクスルを介してリヤを駆動した。924 ターボはフロントに4つの冷却用エアインテークとボンネットにNACAダクトが設けられ、オプションとしてツートーンカラーも用意されている。

1985年に登場した後継の「944 ターボ」は、トランスアクスルの利点である高い居住性や均等な重量配分に、先進のターボテクノロジーを組み合わせ、快適なトラベルスポーツカーとして924 ターボ以上の人気を集めることになった。

NAモデルに「ターボルック」の組み合わせ

ポルシェは迫力のアピアランスを持つターボモデルの人気を受けて、1983年からワイドフェンダーを持つ「ターボルック」をNAモデルにも導入した。
ポルシェは迫力のアピアランスを持つターボモデルの人気を受けて、1983年からワイドフェンダーを持つ「ターボルック」をNAモデルにも導入した。

1983年、ポルシェは911 ターボの高い人気を受けて、Gシリーズ カレラ 3.2に新たなモデルバリエーションを追加した。多くのカスタマーからのリクエストに応じて、ベーシックバージョンの3.2リッター水平対向6気筒自然吸気エンジン搭載モデルに、よりワイドな「ターボルック」が組み合わせられるようになったのだ。

オプションの追加コード「M491」は、ワイドフェンダーに加えて、大型リヤスポイラーの装着も可能。911 カレラ3.2には、911 ターボから引き継がれたブレーキシステムと、よりハードなサスペンションが装備された。このターボルックモデルは、クーペ、タルガ、カブリオレ、そしてスペシャルモデルのスピードスター(1983年から1989年まで生産)でも選ぶことができた。

このNAエンジン+ターボルックという成功のレシピは、1992~1993年に販売されたタイプ964の911 カブリオレと911 スピードスター、そしてカレラクーペ30周年記念モデルでも復活。ターボに似たボディ形状は、近年の911でも人気を博しているが、「ターボルック」という公式名称はすでに廃止されている。

ビッグパワーを求めたツインターボの導入

小排気量で時代が求めるビッグパワーを実現するため、1994年に発表された911 GT2(タイプ993)には、3.6リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載する「911 GT2」が導入された。
時代が求めるビッグパワーを実現するため、2基のターボチャージャーを採用。1994年に発表された911 GT2(タイプ993)には、3.6リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載する「911 GT2」が導入された。

ポルシェは1994年「911 GT2(タイプ993)」を発表。911 GT2は、最高出力430PSを発揮する3.6リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載し、ヴァイザッハ開発センターのポルシェモータースポーツによって、公道走行可能なGTレーシングカーとして開発された。

911 GT2の発表に際し、「このまますぐにレースに出られる」と、当時のポルシェは主張。2007年には、6代目911(タイプ997)に、公道走行可能なレーシングカーと言える「911 GT2 RS」を追加した。911 GT2 RSに搭載されていたボクサー6エンジンは、可変タービンジオメトリー(VTG)を備えた、2基のターボチャージャーが導入されている。

少排気量でビッグパワーを実現するため、ポルシェは2015年モデル(タイプ991)から、911 カレラと911 カレラ Sにもツインターボを備えた新世代のエンジンを採用。2016年モデルからは、718 ボクスターの4気筒モデルにも、この技術が導入されている。

初の4ドアモデルに設定されたターボ仕様

2002年には、ポルシェ初の4ドアモデルとして、本格的SUV「カイエン」がデビュー。パフォーマンス仕様のカイエン ターボは、最高出力450PSを発揮する4.5リッターV型8気筒ターボエンジンが搭載された。
2002年には、ポルシェ初の4ドアモデルとして、本格的SUV「カイエン」がデビュー。パフォーマンス仕様のカイエン ターボは、最高出力450PSを発揮する4.5リッターV型8気筒ターボエンジンが搭載された。

2002年、全輪駆動モデルの「カイエン」によって、新たな時代が幕を開けた。ポルシェ初の5人乗り4ドアモデルの登場である。ハイパフォーマンス仕様のカイエン ターボは、最高出力450PSを発揮する4.5リッターV型8気筒ターボエンジンを搭載。最新世代のカイエン ターボ E-ハイブリッドはシステム最高出力544kW(740PS)を誇る。

2009年に発表された「パナメーラ」でも、ターボがハイパフォーマンスモデルの代名詞となった。2基のターボチャージャーを備えた2種類の4.8リッターV型8気筒エンジンは、それぞれ最高出力368kW(500PS)と405kW(550PS)を誇り、全輪駆動とセラミック製ブレーキディスクが組み合わせられた。

EVにも「ターボ」のネーミングを採用

2019年に投入されたタイカンから、ポルシェは電動化時代に入った。EVモデルにおいて「ターボ」の名称は、過給器の搭載ではなく、高性能バージョンの意味を持つ。
2019年に投入されたタイカンから、ポルシェは電動化時代に入った。EVモデルにおいて「ターボ」の名称は、過給器の搭載ではなく、高性能バージョンの意味を持つ。

2019年「タイカン」の投入により、ポルシェはついにEV時代へと突入する。「タイカン ターボ」と「タイカン ターボS」は、機械的な過給器を備えている訳ではなく、最もパワフルなバージョンの名称として「ターボ」が採用されている。

2024年には、EV専用モデルに生まれ変わった「マカン」にも「ターボ」を設定。マカン ターボ エレクトリックは最高システム出力470kW(639PS)を誇る。また、大規模なフェイスリフトが実施された「タイカン ターボ GT」は、約2秒間ながらも最高出力815kW(1108PS)を実現。1974年の初代911ターボの実に4倍以上という、ポルシェ史上最もパワフルな市販モデルに君臨している。

世界限定1974台が製造される、「ポルシェ911 ターボ 50イヤーズ」の走行シーン。

初代ポルシェ 911ターボをオマージュした「911ターボ 50イヤーズ」が世界限定1974台で予約開始

ポルシェジャパンは、911 ターボ誕生50周年を記念した限定モデル「911 ターボ 50イヤーズ」の予約受注を全国のポルシェ正規販売店にて、2024年8月16日から開始した。911 ターボ 50イヤーズは、米国カリフォルニアで開催されているモントレー・カーウィークにおいてワールドプレミアされた。

キーワードで検索する

著者プロフィール

ゲンロクWeb編集部 近影

ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…