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McLaren W1
F1とP1の正統な後継モデルとして開発
「セグメントをリードするパフォーマンス」というマクラーレンの理念に基づいて開発された「マクラーレン W1」は、マクラーレン F1やマクラーレン P1の後継モデルとして、マクラーレン製スーパースポーツの根幹を成す基本理念を受け継いだ1台としてデビューを飾った。最先端のエアロダイナミクス、軽量シャシーテクノロジー、ハイブリッドパワートレインによる圧倒的なパワー、最高レベルの卓越したドライビングダイナミクス、ドライバーと車両の純粋なエンゲージメントなど、あらゆる運転状況に対応する完璧なドライブ環境を実現した。
サーキット走行に特化したマクラーレン セナをさらに上まわるパフォーマンスを実現しており、ナルド・サーキットにおけるラップタイムを3秒も短縮。公道走行可能なマクラーレン史上、最速の加速性能を手にした。マクラーレン・オートモーティブのマイケル・ライターズCEOは、マクラーレン W1の発表を受けて次のようにコメントしている。
「マクラーレン W1は、我々の特別なモデル『マクラーレン F1』と『マクラーレン P1』の卓越性を継承し、F1をはじめとするモータースポーツの世界における王座獲得に向けた強い意志を表しています。新開発『MHP-8』V8エンジン、マクラーレンのロードカーの史上最も進化したエアロダイナミクス、そして先進的な軽量素材をふんだんに導入したハイブリッドパワートレインにより、スーパースポーツの限界をさらに押し広げることに成功しました」
「公道最高レベルの楽しみを実現しながら、サーキットでも究極の走行体験を生み出すことが可能になりました。F1由来のエアロダイナミクス、純粋な後輪駆動、高度なハイブリッドパワートレインは、常に最高のパフォーマンスを目指すマクラーレンだからこそのアプローチだと言えるでしょう」
「新型W1が、マクラーレン史上最速ラップを記録し、最強の加速性能を誇る公道走行可能なスーパースポーツであることは、驚くべき事実ではありません。大幅な進化を遂げましたが、究極のドライビング体験を支えるマクラーレンの原則は少しも変わっていないと断言できます。ドライバーとクルマの最も純粋なつながりを提供し、マクラーレンだけが作り出せる1台が完成したのです」
F1由来の新開発ハイブリッドシステム
ハイブリッドパワートレインは、完全新規開発された4.0リッターV型8気筒「MHP-8」ガソリンエンジンに、F1由来の技術が導入された「Eモジュール(磁束電動モーターとモーター制御ユニットを統合)」と、Eリバース付き8速DCTが組み合わせられ、Eディファレンシャルを介して後輪を駆動する。
Eモジュールは1.384kWh容量のバッテリーで駆動し、車両の重心をできるだけ低く保つために、カーボンファイバー製モノコック内の構造用カーボンファイバー製フロアに格納されている。徹底的な軽量化への取り組みもあり、ハイブリッドコンポーネントの総重量は、P1比較でほぼ2倍の電力を供給しながら、40kgも軽量化された。さらにオルタネーター、スターターモーター、従来のHVACシステムに必要な追加のコンポーネントなど、エンジン関連機器が削減されたことで、さらなる軽量化も実現している。
新型V8エンジン単体で928PS、これにEモジュールの347PSが加えられ、1275PSという圧倒的な最高出力を実現。W1はマクラーレン史上最もパワフルな市販モデルに君臨し、ハイブリッドパワートレインを搭載するライバルを圧倒するパフォーマンスを手にした。車両重量は1399kgに抑えられ、パワーウェイトレシオは驚異的な911PS/tを達成。これは公道走行可能なマクラーレン史上最高の値であり、もちろんセグメントトップの座も手にした。
最大トルクは1340Nmで、これにEモジュールのモーターによる素早いスロットルレスポンスが加えられ、0-100km/h加速は2.7秒、0-200km/h加速5.8秒、0-300km/h加速12.7秒以下という凄まじい加速性能を確保。最高速度は電子リミッターで350km/hに制限される。
マクラーレン史上最も先進的なエアロダイナミクス
W1は、マクラーレンのロードカー史上最も先進的なエアロダイナミクスを採用。その基幹となる「エアロセル」は、5000件ものテストを含む、350時間もの風洞実験が繰り返された。エアロセルは、現時点でW1にのみに導入されており、エアロダイナミクスとアクティブサーフェイスエリア数が、最も多いという特徴を持つ。
エアロセルには、マクラーレン初の「アンヘドラルドア(ガルウィングドア)」用コンポーネントも組み込まれた。W1に求められる空力要件により、ドアヒンジをルーフに限定する必要があったことから、従来のディヘドラルドアでなく、アンヘドラルドアの採用が決まったという。
アンヘドラルドアは、小型化されたサイドウィンドウのドロップガラスと組み合わせることで、フロントホイールアーチから排出される高温の空気を、ラジエーターへと効率的に送り込む形状を採用。これによりパワートレインの冷却に必要なラジエーターサイズを縮小し、追加の冷却スペースを生み出すことが可能になった。ドア形状はF1マシン「マクラーレン MCL38」のボディサイドをイメージしているという。
W1には、革新的な高ダウンフォース&低ドラッグを実現する「グラウンドエフェクト・エアロダイナミクス」設計を導入。空力デバイスを公道用の「ロードモード」から、サーキット走行に特化した「レースモード」へと切り替えることで、そのポテンシャルをフルに活かしたドライブを楽しむことができる。
レースモードではフロントが37mm、リヤが17mmローダウン。サスペンションセッティングに専用プロファイルが導入され、ルーフ上のパネル、フロントとリヤのアクティブウイングが展開。リヤウイングの「マクラーレン・アクティブ・ロングテール」はテール部が後方に300mm延長され、リヤアクスル周辺に1000kgものダウンフォースを発生させる。
マクラーレン・オートモーティブの主任エアロダイナミクス・エンジニアで、元F1エアロダイナミシストのロビン・アルゴーは、W1のエアロダイナミクスについて次のように説明を加えた。
「マクラーレン W1 は、強力なダウンフォースだけでなく、最適な空力特性とアクティブ制御により、素晴らしいラップタイムを実現することが可能になりました。エアロセルを中央に据えた一体型エアロダイナミクス・プラットフォームにより、レースモードでは完全なアンダーボディ・グラウンドエフェクトを実現します」
「W1は効率性に優れ、比較的小さな空気抵抗で、驚異的なレベルのダウンフォースを発揮することが可能になりました。数々の革新的な技術により、妥協のないロードカーに、エレガントなF1由来の技術を組み込むことに成功したのです」
F1マシンを思わせるレーシーなコクピット
室内へのアクセスは、アンヘドラルドアが上方向へと展開。新たに導入されたこのガルウィングドアにより、キャビンへのアクセスが大幅に改善されている。
人間工学とクラス最高レベルの視認性を備えたコクピットは、ドライバーとパッセンジャーに広々とした空間を提供。W1はマクラーレン史上最も細いAピラーを採用しており、ルーミーな前方視界が確保された。カーボンファイバー製サンバイザーも軽量化を念頭に設計されており、その厚さはわずか3mmに抑えられている。
シートは、エアロセルのカーボンファイバー製モノコックに独自の手法で組み込まれており、ドライバーとパッセンジャーは直接シャシーにリンクしている。どちらのシートとも、最適なサポートと快適性を実現するフルレザー仕上げがチョイスされた。このシートはハードなドライブ環境においても、太ももをしっかりとサポートする。
ペダル、ステアリングホイール、主要なコントロール類は、ドライバーをコクピット環境に完全に包み込むようにレイアウト。フロアに設置されたアルミニウム製ペダルは、専用の調整機能を備えており、どのような体型のドライバーでも、最適なドライビングポジションに設定することが可能だ。
W1専用ステアリングホイールは、小型でフラットなデザインが採用された。ステアリングホイールには、ブーストとマクラーレン・エアロ・ディプロイメントを操作する、2つのスイッチのみを配置。F1マシンのコクピットからインスピレーションを得たスイッチは、ドライバーがステアリングホイールから手を離さず、親指のみで簡単に操作できるよう設計されている。
シャーシとパワートレインのモード変更は、ステアリングコラムとともに可動するメーターパネルのロッカーコントロールで調整。こちらもステアリングホイールから手を離すことなく、モード変更を行うことができる。デジタルバックミラーは、多くのドライバーが慣れ親しんだ従来のバックミラーに似たデザイン。様々な情報は、運転席と助手席間に設置された、高解像度8インチタッチスクリーン「マクラーレン・インフォテインメント・システム(MIS II)に表示される。
USB C接続機能付きインフォテイメントシステムは、「Apple CarPlay」シームレスに同期することが可能。シート間のスライド式カップホルダー付き収納スペースに加え、アームレスト後方にも小物入れが用意された。シート後方には最大117Lの収納スペースがあり、旅行用バッグ2つか、ヘルメット2個を収納することができる。