1000Nmの実力を如何なく発揮する新型「BMW M5」海外試乗

もはや“ハイパフォーマンスセダン”を超えた“ハイパーセダン”だ!「BMW M5」に試乗

7代目へと進化を遂げたM5はついにPHVとなり、純内燃機の時代へと別れをつげた。最新M5を日本のジャーナリストが海外で初試乗。
7代目へと進化を遂げたM5はついにPHVとなり、純内燃機の時代へと別れをつげた。最新M5を日本のジャーナリストが海外で初試乗。
定評ある4.4リッターV8ツインターボにモーターを組み合わせることで、驚異のシステムアウトプット727PS/1000Nmを実現した新型M5。PHV化されたことにより、その走りの愉悦に一層磨きがかかったようだ。(GENROQ 2024年12月号より転載・再構成)

BMW M5

PHV化された7代目

「G90」のコードネームが与えられた新型M5。7代目となるM5はついにPHV化され、システムアウトプット727PS/1000Nmの実力となった。
「G90」のコードネームが与えられた新型M5。7代目となるM5はついにPHV化され、システムアウトプット727PS/1000Nmの実力となった。

10月2日にドイツで発表された新型「BMW M5」セダンが、まもなく欧州市場でデリバリー開始となる。日本でもほぼ同時に上陸する模様だが、ひと足早く量産バージョンにドイツ・ミュンヘン郊外で試乗した。「G90」のコードネームを持つ新型M5セダンは、1984年デビューの初代M5(E28S)から数えて7世代目となる。ハイパフォーマンスセダンの草分け的な存在であるM5は、世界中に熱烈なファンを生み、日本でもその地位を確立した。

直6でスタートしたM5は、その後V8、V10、直噴V8ツインターボ、そして4WDと、世代を重ねるごとに進化し続け、ついに新型ではプラグインハイブリッドとなった。

現行5シリーズにはBEVのi5もあるのだから、M5のBEV化だって可能だったはずだ。今どき絶対的なパフォーマンスはBEVの方が出る。しかしICEを搭載したPHVとしたことには、やはり“オーセンティックなハイパフォーマンスカーはICEを搭載しているべき”というBMW M GmbHの開発陣のこだわりを感じずにはいられない。

ついに1000Nmオーバー!

私は今春に、オーストリアのザルツブルクリンクでプロトタイプに試乗しているが、その時は内外装とも厳重にカモフラージュが施されていた。今回、カモフラージュなしの車両を実際に目にして、その猛烈にグラマラスなルックスに目を奪われた。

より力強いスタンスを目指した新型M5は、台形を強調した専用フロントバンパーや、左右で計70mm広げられた前後フェンダー、4本のエキゾーストエンドとディフューザーを強調したリヤ周りなど、どの角度から見ても迫力満点で、“これぞM5!”といった感覚である。

大きなキドニーグリルやサイドエアインテークなど、新型はそこら中に穴が空いているようにも見えるが、実際には開口部はそれほど多くはない。BMWの多くのモデルに見られるフロントフェンダー直後のエアブレーザーもない。これは、エアロダイナミクスやクーリング性能を緻密に計算した結果だという。エンジニアによれば、「穴が空いているところには、すべて何かしらの機能がある」そうだ。

インテリアも、初採用となるフラットボトム形状のステアリングホイールやカーボンパネル、いかにもサポート性が良さそうな、ボリューム感のあるM5専用デザインのスポーツシートが堪らない。スポーティでありながらラグジュアリーなイメージもあり、新型にもM5の伝統がしっかり継承されていると感じられる。

Mらしさ満載の室内に大満足

実際にステアリングを握っても、その印象は変わらないどころか、大幅な進化を感じた。新型M5は、とにかく速く、そして快適なのである。

新型は、585PSと750Nmを発揮する4.4リッターV8ツインターボに、197PSと280Nmを絞り出す電気モーターを組み合わせ、システム合計で727PSと1000Nmという、圧倒的なスペックを実現している。

8速Mステップトロニックを介して4輪に駆動力を伝える、その加速力は、まさに凄まじいのひと言。車両重量が2435kgと、先代より約500kgも重いこともあって、0-100km/h加速こそ3.5秒と先代モデルより0.2秒遅いが、0-200km/h加速は10.9秒と、先代の標準モデルより0.2秒速く、先代M5コンペティションの0.1秒落ちという俊足ぶりなのである。

これは何より電気モーターのおかげだ。PHV化により、新型M5はスムーズな発進加速と力強い中間加速を手に入れたのである。ちなみに最高速度は先代と同様で、通常は250km/hでリミッターが作動するが、Mドライバーズパッケージを選択すると305km/hに引き上げられる。今回の試乗車はすべてMドライバーズパッケージ装着車だった。

ステアリング背面の左側には、10秒間だけ出力が向上するブーストコントロール用のパドルが備わっているが、正直あまり必要と思わないほどパワフルだ。ハンドリングは抜群にスポーティで、ノーマルモードでもステアリングレスポンスが良く、極めて正確。ダイナミックまたはダイナミック+でワインディングを走行した際には、試乗時間を忘れるほど楽しかった。ステアリングの遊びはとても少ないが、過敏な印象はなくて、とても運転しやすかった。また一般道を走るかぎりでは重さを意識することはなく、むしろ低重心による安定感の方が強く感じられた。

2.4tの車重がもたらす安定感

2.4tを超える新型BMW M5だが、一般道や高速道路においてその重さを意識することは一切なかった。むしろ低重心化による安定感が際立っていた。
2.4tを超える新型BMW M5だが、一般道や高速道路においてその重さを意識することは一切なかった。むしろ低重心化による安定感が際立っていた。

また特筆すべきは、V8エンジンと電気モーターの制御が極めてスムーズである点だ。車内に人工的なエンジンサウンドを聞かせるMサウンドをオンにしていると、EV走行時にもV8サウンドが鳴るので、もはやエンジンが止まったり再始動しても気が付かないのである。

さらに快適性もすこぶる高い。新型はダイナミック性能に加えてコンフォート性能も重視して開発されたそうだが、非常に高いレベルで両立していると言っていいだろう。

これほど走りと快適性が高次元でバランスしていて、しかも電気のみで最大69km(WLTPモード)、最高140km/hで走れてしまう新型M5は、パフォーマンスカーの新たなベンチマークとなるかもしれない。

REPORT/竹花寿実(Toshimi TAKEHANA)
PHOTO/BMW AG
MAGAZINE/GENROQ 2024年12月号

SPECIFICATIONS

BMW M5


ボディサイズ:全長5096 全幅1970 全高1510mm
ホイールベース:3006mm
車両重量:2435kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4395cc
最高出力:430kW(585PS)/5600-6500rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800-5400rpm
モーター
最高出力:145kW(197PS)/6000rpm
最大トルク:280Nm(28.6kgm)/1000-5000rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
0-100km/h加速:3.5秒
最高速度:305km/h
車両本体価格:1998万円

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

ビー・エム・ダブリュー代表取締役社長・長谷川正敏は、自らサーキット走行を愛好するという。

サーキットもこなせる727PSの最強スポーツセダン「BMW M5」がついに日本に上陸

10月2日、BMWは今年6月東京・麻布台にオープンしたブランド・ストア「FREUDE by BMW」で、7世代目となる新型「M5」の発表会を開催した。1984年の初代誕生以来、ハイパフォーマンス・スポーツセダンの代名詞とも言えるアイコンである。

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著者プロフィール

竹花 寿実 近影

竹花 寿実

1997年に美術大学卒業後、自動車雑誌『driver』スタッフとして業界入り。自動車情報サイト『Hobidas Auto…