マクラーレンの最新スーパースポーツ「W1」が日本初披露

「これぞ“空力モンスター”」マクラーレン最新スーパースポーツ「W1」が日本初披露

新開発のMHP-8型4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジン単体で最高出力928PSを発揮し、システム最高出力は驚異の1275PSという。
新開発のMHP-8型4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジン単体で最高出力928PSを発揮し、システム最高出力は驚異の1275PSという。
2024年11月13日、東京・渋谷でマクラーレンの最新スーパースポーツ「W1」の日本初披露が行われた。1992年の「F1」や2012年の「P1」の後継モデルとして、マクラーレン製スーパースポーツの基本理念を受け継いだ1台である。

McLaren W1

新開発ハイブリッドパワートレイン

今年10月6日にワールドプレミアされたばかりの「マクラーレン W1」が早くも日本初披露された。今回、細部まで再現されたモックアップを前に本国から関係者が来日し、プレゼンテーションを行なった。W1の注目すべき点は多いが、主にハイブリッドパワートレイン、エアロダイナミクス、軽量シャシーテクノロジーの3つがあるだろう。それらによって実現した最高レベルの卓越したドライビングダイナミクスとドライバーと車両の純粋なエンゲージメントは、マクラーレン史上最高を誇るという。

まずはハイブリッドパワートレインだ。新開発のMHP-8型4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンに、Eモジュールと呼ばれるモーター制御ユニットを統合した電気モーターと8速DCTが組み合わせられ後輪を駆動する。エンジン単体で最高出力928PSを発揮するが、Eモジュールの347PSが加えたシステム最高出力は驚異の1275PSという。ちなみに8速DCTには後退ギアが含まれず、モーターでバックする。ギアを減らして軽量化する手法は最近の電動スーパースポーツのトレンドだ。

乾燥重量は1399kgに抑えられており、パワーウェイトレシオは公道走行可能なマクラーレン史上最高の911PS/tを達成。その結果、パフォーマンスは0-100km/h加速2.7秒、0-200km/h加速5.8秒、0-300km/h加速12.7秒以下で、最高速度は電子リミッターで350km/hに制限されるという。

Eモジュールに組み合わされるバッテリー電力量は1.384kWhと控えめ。これは軽量かつハイパフォーマンスというマクラーレンが本来持つ美点を損なわないための選択だという。レースモードでは充電も素早く行われるため、電力を全て使い切ったとしても30秒〜1分で再びフル充電されるので例えばサーキットなどを連続周回しても問題ないという。なお、アルトゥーラ同様に回生ブレーキは備えておらず、V8エンジンがバッテリーを充電する仕組みだ。

ロングテールが生み出す1000kgのダウンフォース

マクラーレンのロードカー史上最も先進的なエアロダイナミクスを採用したというW1の核心となるのが最新モノコックの「エアロセル」だ。エアロセルは現時点でW1にのみに導入されているが、今後次世代モデルにも採用の可能性はある。詳しくは後述する。

これまでのスーパーシリーズと大きく変わったのは、マクラーレン初の上方向に開閉するアンヘドラルウイングドアが採用されたこと。これまでの斜め前に跳ね上がるディヘドラルウイングドアとヒンジの位置がAピラー付け根からルーフ側に移動することで、フロントフェンダー後ろの空間が有効活用でき、フロントからの空気の流れを改良できた。さらに新導入のガルウイングドアにより、キャビンへのアクセスが大幅に改善されたこともメリットとして謳っている。

サスペンションはレースモードでフロント37mm、リヤ17mmローダウンする。サスペンションセッティングには専用プロファイルが導入され、ルーフ上のパネル、フロントとリヤのアクティブウイングが作動。リヤウイングの「マクラーレン・アクティブ・ロングテール」は後方に300mm延長され、リヤアクスル周辺に1000kgものダウンフォースを発生させるという。

ステアリングホイールに初めてスイッチを装備

軽量シャシーテクノロジーでは、車両の重心をできるだけ低く保つために、マクラーレンの特徴でもあるカーボンファイバー製モノコック「エアロセル」を採用している。徹底的な軽量化への取り組みもあり、P1比でほぼ2倍の電力を供給しながらも、ハイブリッドコンポーネントの総重量は40kgも軽量化されたという。さらにオルタネーター、スターターモーター、従来のHVACシステムに必要な追加コンポーネントなど、エンジン関連機器が削減されたことで、さらなる軽量化も実現している。

シートはエアロセルのカーボンファイバー製モノコックにレーシングカー同様に固定され、フロア下の空力効率を高めるために嵩上げされたアルミニウム製ペダル、小径ステアリングホイール、主要なコントロール類がそれぞれスライドすることでドライビングポジションの調整が可能だ。

小型でフラットボトムのW1専用デザインのステアリングホイールには、マクラーレンのスポーツカーとしては初めて「ブースト」と「エアロ」スイッチがついた。右スポークのブーストを押すとバッテリーの容量に応じて追加のパワーが供給されて一時的により強力な加速が可能になり、左スポークの「エアロ」は空力性能を最大に高めるという。これらはドライバーがステアリングホイールから手を離さず、親指のみで簡単に操作できるよう設計されている。シャーシとパワートレインのモード変更は、アルトゥーラ同様にステアリングコラムとともに可動するメーターナセルのロッカーコントロールで調整。こちらもステアリングホイールから手を離すことなくモードが変更できる。

ナルド・サーキットにおいてサーキット向けのスーパースポーツ「セナ」のラップタイムを3秒も短縮するパフォーマンスを実現したというW1。その類まれなるパフォーマンスと価格から生産台数はわずか399台に制限される。関係筋によると日本市場における価格は約3億2000万円で、発表時点ですでに納車先は決まっているという。

※11/18 一部訂正しました。

PHOTO/GENROQ

SPECIFICATIONS

マクラーレン W1

ボディサイズ:全長4635 全幅2074 全高1182mm
ホイールベース:2680mm
乾燥重量:1399kg
エンジン:V型8気筒DOHCターボ
総排気量:3988cc
エンジン最高出力:683kW(928PS)
エンジン最大トルク:900Nm
モーター最高出力:255kW(347PS)
モーター最大トルク:440Nm
システム最高出力:938kW(1275PS)
システム最大トルク:1340Nm/4500〜5000rpm
バッテリー容量:1.384kWh
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前265/35R19(9.5J) 後335/30R20(12.0J)
最高速度:350km/h(電子制御作動)
0→100km/h加速:2.7秒

マクラーレン・オートモーティブと、米国の産業用デジタル製造メーカー「ダイバージェント・テクノロジーズ」が提携。マクラーレン W1のサスペンション開発において、協業を行った。

「マクラーレン W1」の複雑なサスペンションシステム開発をサポートしたダイバージェント・テクノロジーズとは?

マクラーレン・オートモーティブは、カリフォルニアを拠点とする産業用デジタル製造メーカー「ダイバージェント・テクノロジーズ(Divergent Technologies)」と提携。最新スーパースポーツ「マクラーレン W1」用として、先進的なサスペンションシステムの開発・設計を行った。

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…