「2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権」を振り返る

「2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権」ドラマが詰まったシーズンを振り返る

悲願のシリーズチャンピオンに輝いた坪井翔選手。
悲願のシリーズチャンピオンに輝いた坪井翔選手。
2024年の全日本スーパーフォーミュラ選手権。悲願の初タイトル獲得や次世代スターの台頭、そして山本尚貴の引退と、多くのドラマが詰まったシーズンを振り返る。

SUPER FORMULA

F1に最も近いフォーミュラシリーズ

激しいバトルが随所で繰り広げられた。
激しいバトルが随所で繰り広げられた。

全日本スーパーフォーミュラ選手権は、1973年にスタートした国内最高峰のフォーミュラレースで、現在はアジア圏でも最も注目されるレースシリーズのひとつです。F1の直下に位置し、FIA-F2と並ぶF1への登竜門として位置づけられています。このシリーズは、国内のトップドライバーやチームが集まり、非常に高いレベルの技術と戦略が求められるため、常に注目を集めています。

全チームが同一のシャーシ「SF23」と横浜タイヤを使用し、エンジンは2000ccの直列4気筒ターボエンジンが搭載されています。エンジンはトヨタとホンダの2種類が使用されており、両エンジンは調整され、ほぼ同等の性能を発揮します。そのため、スーパーフォーミュラではマシンの性能差よりも、ドライバーの実力やチームの技術力、さらには戦略が重要な要素となり、非常に白熱したレースが繰り広げられています。1/1000秒を争うレース展開は、ファンを魅了し続けており、まさに「F1に最も近いフォーミュラシリーズ」といえるでしょう。

後半戦を有利に進めるため

今シーズンも中盤を迎え、残り5戦という重要な時期に突入しました。特に注目を集めたのは、8月に行われたモビリティリゾートもてぎ戦でした。このレースは、チャンピオンの行方に大きな影響を与える一戦となり、各ドライバーにとって後半戦を有利に進めるための重要な位置取りが求められるものでした。開幕から好調を維持していたTEAM MUGENの野尻智紀選手と岩佐歩夢選手は、毎戦予選でトップ3に食い込むなど安定した成績を収めていましたが、このもてぎ戦では予選でトップ3を逃す結果となりました。予選でのポールポジションは、実に7年ぶりの快挙となる山下健太選手が獲得。2位には近年速さが目立っている太田格之進選手、3位には大湯都史樹選手が続きました。

決勝レースは、山下選手が序盤にトップを守る展開となり、タイヤ交換のためのピットインを終えた頃には、太田選手がトップに立ち、牧野任祐選手が2位となり、DOCOMO TEAM DANDELIONが1-2体制で激しいデットヒートを繰り広げました。しかし、残り1周で太田選手がトラブルに見舞われ、スピンを喫してしまいます。この状況を牧野選手が見事にかわし、そのままトップでチェッカーを受け、今シーズン2勝目を挙げました。2位には山下選手が入り、3位には野尻選手が追い上げて入賞。着実にポイントを積み重ねました。

坪井選手が富士3戦全勝達成

富士3戦全勝達成した坪井選手。
富士3戦全勝達成した坪井選手。

10月の富士スピードウェイで行われた第6戦と第7戦は、1大会2レースというフォーマットで実施され、特に注目されました。第6戦の予選では、福住選手が2度目のポールポジションを獲得。続く太田選手、野尻選手、岩佐選手がそれに続きました。決勝レースでは、予選4番手の岩佐選手が素晴らしいスタートを切り、トップに躍り出ましたが、ペースが上がらず、野尻選手や坪井翔選手に抜かれ、3番手に後退。タイヤ交換後に再びトップを奪いましたが、後方から迫る坪井選手に追い越され、最終的には坪井選手が見事なレースを展開し、今季2勝目を達成しました。2位には岩佐選手、3位には2019年以来となる小林可夢偉選手が入りました。

第7戦では、前日に優勝した坪井選手がそのまま勢いを保ち、ポールポジションを獲得。この時点で坪井選手はシリーズランキングでトップに立ち、決勝レースを迎えました。レースでは、坪井選手がスタートでホールショットを決め、2位には牧野選手、3位には福住選手が続きました。レースは荒れた展開となり、セーフティーカーが3度導入されましたが、坪井選手はその後も安定したペースを維持し、トップでチェッカーを受けました。これにより、坪井選手は富士での3戦全勝を達成し、ポイントリーダーとして最終戦に臨むこととなりました。

悲願のシリーズチャンピオンに

11月の鈴鹿サーキットで行われた最終大会では、1大会2レースの形式で、特に第8戦が注目されました。このレースでは、太田選手が見事な速さを見せ、ポールポジションを獲得。レースでは、太田選手が順調にレースを進め、初のポールトゥウインを達成しました。坪井選手と牧野選手の2位争いも白熱し、坪井選手が先着して、シリーズチャンピオン争いを有利に進めることに成功しました。野尻選手は5位に終わり、ポイント差の関係でタイトル争いから脱落。これにより、最終的に坪井選手と牧野選手の一騎打ちとなりました。

翌日の最終第9戦では、ポールポジションは野尻選手が獲得しましたが、ペースが上がらず、後続にかわされてしまいます。最終的には、太田選手が再びハイペースでレースを支配し、連続優勝を達成。2位には坪井選手が入り、これにより坪井選手は悲願のシリーズチャンピオンに輝きました。チームチャンピオンは後半戦でポイントを積み重ねたDOCOMO TEAM DANDELIONが獲得し、ルーキーオブザイヤーには岩佐選手が選ばれました。

シーズンを通じて、2024年のSUPER FORMULAは非常に熱い戦いを展開し、公式戦観客来場者数は過去最高の20万9600人を記録しました。また、F1に最も近いシリーズとして、世界中からの注目も高まりました。オフシーズンには、来シーズンF1に出走するオリバー・ベアマン選手や、SUPER FORMULA LIGHTSのチャンピオンである小出峻選手などの若手ドライバーが公式テストに参加し、来シーズンへの期待が膨らんでいます。来年のシーズン開幕がますます待ち遠しくなっています。

PHOTO/田村弥(Wataru TAMURA)

第4戦、予選4番手から激しい追い上げで、今季初優勝を飾った坪井選手。

大きな盛り上がりを見せる全日本スーパーフォーミュラの2024シーズン前半を振り返る

国内トップフォーミュラレース「全日本スーパーフォーミュラ選手権」が盛り上がりを見せている。アジア最高峰のレースシリーズで、F1世界選手権に直結する登竜門の今シーズンのこれまでを解説する。

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田村 弥 近影

田村 弥