2024年ドイツ在住日本人ジャーナリストが絶賛した名車が「ジムニー」って?

ドイツ在住日本人ジャーナリストが明かす隠れた名車が「スズキ ジムニー」って?【2024年個人的に感動した名車】

ミュンヘンで見掛けたジムニー
ミュンヘンで見掛けたジムニー
仕事柄、多種多様なニューモデルに触れてきたモータージャーナリストたち。2024年に試乗した中で隠れた名車を選ぶ本コーナー。ドイツ在住の池ノ内みどりがセレクトしたのは、なんと日本でも人気の「スズキ ジムニー」だった! ……いや、しかし、売ってたことが驚き。

ドイツで人気の「ベビーG」とは?

1970年の登場から世代を超えていまも大人気の「スズキ ジムニー」。コンパクトで実用的なだけでなく、現行モデルはそのデザイン性の高さから、日本では発売から衰える事のない大人気の車種のひとつだ。ドイツやヨーロッパでジムニーが販売開始となったのは1998年の夏の事。それ以来、26年もの間に渡ってドイツやヨーロッパの人々に愛され続けていた。

日本では2018年7月に、ドイツでは数ヵ月遅れの同年10月27日に発表された4代目のジムニーは、発売前から大きな話題となっただけではなく、購入希望予約が殺到して1年半以上のウェイティングリストが出来たのも記憶に新しく、ドイツでも同様の現象が起きたのも十分に頷ける。角張ったそのデザインは日本では『ゲレンデワーゲン』として有名なメルセデス・ベンツのGクラスに似ている事から、ドイツでは親しみを込めて『ベビーG』と称されたジムニー。元々の入荷数が少ない上に、その上、日本生産と海外生産の2種類のジムニーがドイツへ輸入されていたそうだが、その中でも信頼性という意味で日本製を待つ顧客が多かったと聞く。

軽自動車規格がないドイツで販売されていたのは、日本では「ジムニー シエラ」と同じ仕様の1.5リッターエンジンで主にMT車が販売され、AT車は非常にまれな存在だった。

BMW 1シリーズに匹敵する価格

車体本体価格は2万9490ユーロ(付加価値税19%込)で、約483万円というかなりの高級だ。2022年に近所のスズキの販売店を覗きに行ったのだが、オプションや仕様の差は若干あるものの店頭販売価格は平均して3万5000ユーロ前後、日本円にすると約570万円という驚きの価格だ。3万5000ユーロ全後の価格となると、「BMW 1シリーズ」や「メルセデス・ベンツ Aクラス」「アウディ A3」に近い価格帯で、日本では比較的手ごろな価格帯で多くの人々に親しまれているジムニーだが、ドイツではちょっと躊躇する価格帯の車両でもあるのだ。それだけに高額を支払ってでもジムニーを購入する顧客層はかなりのマニアな方なのかも知れない。

特に冬場に大活躍をしているジムニー。大雪が降る回数は減ったものの、ドイツでは大雪に見舞われる事もあり、アパートやビル建物の管理会社がフロントにブレードを装着し、また後部には除雪剤や砂利を撒ける仕様に改造(取り外し可能)しているものもある。そんなマニアックでちょっとお高いスズキのジムニーは、実はドイツだけではなくEU諸外国では2024年の夏頃からひっそりと販売を終了しており、販売終了前の今年の7月、スズキはドイツボディキットが装着された特別モデル「Horizon」を3万2340ユーロ(約530万円)で900台を販売した。今後ヨーロッパでジムニーの購入を希望する方には在庫車と中古車のみでしか手に入れられない。実はスズキでは「スイフトスポーツ」と「イグニス」も同様にジムニーと一緒にドイツ市場から姿を消している。

車両重量はわずか1090kgという超軽量でコンパクトなオフロード車で、狭い街中の道路はもちろんの事、険しい山道でも非常にタフな走りを見せるジムニーは、102PSの1.5リッターエンジン、最大トルクは130Nmを誇り、その小さな外観を上回るパワーを発揮する。

また、舗装されていないような林道を走行する際には、頑丈なラダーフレームと前後のリジッドアクスルを備えた剛性の高いサスペンションやオフロード軽減機能を備えた切り替え可能なオールグリッププロの全輪駆動により、「ベビーG」の愛称が伊達ではないパワフルで安定した走りを体感できる。元々ドイツでは自家用車というよりは、働くクルマとしての利用を多く見掛けるだけに、もう新車は販売される事のないジムニーだけに中古市場価格も安定、もしくは上昇するのではないだろうか。

商用車扱いの理由

人気のジムニーがドイツやヨーロッパから販売終了をせざるを得なかったのには大きな理由があったようだ。日本よりも厳格なEU(ヨーロッパ連合)の厳格な自家用車のCO2規制により、その基準を超えていたジムニーは高額な制裁金を支払う可能性が高くなり、それまで自家用車として販売をしていたいジムニーを、2021年からは商用車のみの取り扱いとして販売をしたのだ。

商用車には自家用車のような厳格な自家用車用のCO2規制が適応されないため、継続販売が可能だった。いわゆる、法の穴をくぐっての苦肉の策だろう。後部座席は取り払われて2人乗り仕様で、最大積載量863Lという大型ラゲッジルームを備える。むしろ日本では、ジムニーで車中泊やレジャー用に使用される方も多いので、こちらの方が願ったり叶ったりなのかも知れない。

日本と同様に自動車産業が国の経済を大きく支える自動車大国ドイツで、台数こそ多くはないものの日本の誇るジムニーが先代モデルから長年に渡って受け入れられ、愛され続けていたのにひっそりと去ってしまった事は非常に残念でならない。

「ダチア・サンデロ・ステップウェイ」。イタリア中部シエナ県のルノー販売店「パンパローニ」の営業スタッフ、ダニエレ・リッツォ氏と。

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著者プロフィール

池ノ内 みどり 近影

池ノ内 みどり

ミュンヘン大学在学中にアルバイトをしていたドイツの広告代理店での仕事がきっかけで、モータースポーツ…