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合成燃料の違和感は価格
2025年は人生最大のモテ期が到来……と言うのは冗談で、まずは2024年の予言の答え合わせから。去年は「バイオフューエル、合成燃料、カーボンニュートラル燃料といった、代替燃料が内燃機関の燃料としてより広く使われるようになる……」と言う趣旨の話を書いたのだが、日本でも航空機、船舶を含め代替燃料の使用に向けた動きが出ているものの、まだ広く実用化されるには程遠い状況にある。
その最大の障壁になっているのがコストだ。実は2024年9月にイギリスで行われた世界最高峰のヒストリック2&4イベント「グッドウッド・リバイバル・ミーティング」では、出場する全参加者にFIAの要件を満たした持続可能成分を70%以上含む合成燃料の使用が義務付けられた。
このイベントに「ロータス18F1」「24F1「そして「30S2」で日本人唯一のエントラントとして参加した久保田克昭氏に聞いたところによると、これら貴重なヒストリック・レーシングカーでもエンジンのセッティングや仕様を変更することなく、普通のガソリンと同じように使えたそうで、数%落ちると言われていたパワーも特に違和感は感じなかったという。
しかしながらその価格は、1リッターあたり6ポンド+税(日本円でおよそ1500円!)。イギリスでのハイオクガソリンの価格が1リッター、1.4ポンドほどなので、4倍以上ということになる。
正直なところ、この価格差を縮められない限り代替燃料がシェアを伸ばすことは難しいだろう。とはいえ、内燃機関がガソリンにばかり頼っていられないのも時代の趨勢なので、今後もその動向には注目していきたい。
アストンマーティンのLMHプログラムが復活
では、来る2025年に関してだが、個人的に気になっているのがWECのLMH(ル・マン・ハイパーカー)への参戦を表明した「アストンマーティン ヴァルキリーAMR-LMH」だ。2024年シーズンはル・マンと富士のレースを観戦し、LMHとLMDh(ル・マン・デイトナh)によるハイパーカークラスの盛り上がりぶりを目の当たりにした身としては、ランボルギーニの休止とイソッタ・フラスキーニの撤退は残念だが、一方でアストンマーティンが一時凍結していたLMHプログラムを復活させたことは、大いに興味がある。
というのもヴァルキリーは、先日彼らのF1プログラムに加入したエイドリアン・ニューウェイが、レッドブルF1をアストンマーティンがスポンサードをしていた時代にデザイン、開発されたものだからだ。
その後ニューウェイはレッドブルで独自のハイパーカー「RB17」を開発し、レッドブル離脱後もRB17の開発には関与し続けるとアナウンスされているものの、F1と並行してヴァルキリーAMR-LMHの開発に関わらないという保証はない。
11月にデイトナで行われたテストでは、アイアン・リンクスの「ランボルギーニ SC63」から1.5秒落ちというタイムだったが、もしその開発にニューウェイが加わるということになれば、ハイパーカーでは異色の6.5リッターV12のみというピュア内燃機マシンのヴァルキリーAMR-LMHがどのような進化を遂げていくのか、大いに興味が湧くところだ。
2026年シーズンにF1のレギュラーに日本人が?
そして未だ発表されていないドライバー・ラインナップも気になるところで、2025年は無理でも、2026年シーズンにF1のレギュラーを務めるどちらかのドライバーが転向するなんてことになれば、日本人ドライバーがアストンマーティン・ホンダに乗る可能性がグッと高まるかもしれない。
ということで、トヨタ、ポルシェ、フェラーリ、プジョー、アルピーヌ、キャデラックといったワークス勢によるこれまで以上の激戦が予想される2025年のWECにおいて、いろんな意味で台風の目になるのはアストンマーティン・ヴァルキリーAMR-LMHである!と予想しておこう。