目次
MICHELIN Selfseal
パンクの危険性を減らすセルフシール技術
自動車の故障の原因のひとつにタイヤのパンクが挙げられる。スペアタイヤを搭載するクルマでも、未舗装路や路肩のない高速道路では安全な場所を確保してタイヤ交換を行うことは困難であり、パンクした状態での走行はホイールやブレーキを傷つけたり、コントロールを失う危険性もある。
例えば現在英国には全長375マイル(約600km)の高速道路網が整備されているが、そのうち235マイル(約380km)には路肩がないため、タイヤがパンクしても移動し続けなければならない。このような状況下において、ミシュランのセルフシール・システムなどの技術が大きな役割を果たすことなる。
ミュシュランのセールス&オリジナル装備担当副社長を務めるマーク・ペルバウムは次のように説明する。
「ミシュランのセルフシール・テクノロジー搭載のタイヤは、安全性の面で非常に優れています。車両が動いている間にタイヤが自己修復するからです。ドライバーは何が起こっているのかさえも気付くことはないでしょう」
6mmまでのパンクの90%を防ぐことが可能
ミシュランのセルフシール・テクノロジーは、タイヤのトレッド面に穴が空いた瞬間にその穴を特殊なシーリング材が塞いでくれる。この技術の核となるのがシーリング材の層(写真の黄色い部分)だ。天然ゴムをベースにした強靭なシーリング材は、トレッドの内側に数mmの厚さで塗布されている。
釘やネジがタイヤのトレッド面に刺さると、タイヤ内部の圧力によってシーリング材の塊が瞬間的に穴の開いた部分に押しつけられる。これによりタイヤから空気が抜けず、タイヤの空気圧は一定に保たれる。また、走行中に釘やネジなどが抜け落ちたり取り除かれたりしても、すぐにシーリング材が押しつけられて確実にタイヤを保護してくれる。
セルフシール・タイヤは、釘やネジによる直径6mmまでのパンクの約90%を塞ぐことが可能。ミシュランのセルフシール・テクノロジーが搭載されたタイヤは、パンクしても早期に交換する必要がないため、車両のオーナーはタイヤの寿命が尽きるまで使い続けることができる。
タイヤ単体の重量増加も車両全体では軽量化に
シーリング材の層がある分、タイヤ自体の重量は多少重くなるが、スペアタイヤやパンク修理キットを持ち運ぶ必要がないため、車両全体としては軽量化される。また、これにより燃費の向上にもつながることになる。
「タイヤの重量が少し増えることで転がり特性に良い影響を与え、走行性能も向上します。スムーズな乗り心地が得られ、外からの騒音も軽減されるのです。特に電気自動車はエンジン音がほとんど聞こえないので、これは大きなプラスポイントになるでしょう」と、ペルバウムは付け加えた。
ミシュランのセルフシール・テクノロジーは、電気自動車用に特別に設計されたエコタイヤ「e.Primacy(イー・プライマシー)」をはじめ、多くのタイヤに採用されている。このタイヤは転がり抵抗が少ないため、電気自動車のエネルギー効率を向上させ、航続距離を最大7%も延ばすことができる。
ミシュランはセルフシール・テクノロジーだけでなく、パンクやタイヤを起因とする事故を防ぐため、最新のタイヤ空気圧監視システムや、RFID技術(電波を用いてICタグの情報を非接触で読み書きする自動認識技術)によるタイヤのネットワーク化も進めている。