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McMurtry Speirling
2021年のグッドウッドでワールドプレミア
英国出身の起業家、デイビッド・マクマートリー卿によって2016年に設立されたマクマートリー・オートモーティブは、究極の電動スーパースポーツ「スピアリング」を開発。2021年のグッドウッドにおいて、世界初公開した。
その後、元F1ドライバーのマックス・チルトンと共に大規模なテストプログラムを実施したスピアリングだが、再び英国最大級を誇るモータースポーツの祭典に帰ってくる。今回、スピアリングはチルトンのドライブにより、ヒルクライムコースのタイムアタックに挑戦。従来の記録の大幅な更新を狙う。
台湾のモリセルとの協力関係
スピアリング最大の特徴となるのが、マクマートリーが特許を取得した「ダウンフォース・オンデマンド・システム(Downforce-on-demand system)」。コンパクトなボディには空気抵抗の大きいウイング類を一切取り付けず、ダウンフォースを発生させるファン駆動方式のグランドエフェクトシステムとなる。
ダウンフォース・オンデマンド・システムは、ジェットエンジンに匹敵する強大なサウンドを発生。スピアリングはこのシステムを搭載することで、小型化されたプロポーションを維持したまま、驚異的なダウンフォースを発揮することが可能になった。
150km/h巡航時、スピアリングは現代のF1マシンをも超えるダウンフォースを発生する。この強大なダウンフォースにより、駆動用モーターのトルクが瞬時に路面へと伝達され、その結果0-60mphは1.5秒以下、最高速度は150mph(ヒルクライム用ギヤ比を採用)にまで達する。
また、スピアリングに搭載される60kWhバッテリーパックは、台湾のモリセル製高性能バッテリーセルを使用し、マクマートリー・オートモーティブが設計・製造したもの。モリセルとマクマートリー・オートモーティブは戦略的パートナーシップを締結しており、スピアリングは30分以上もフルパワーでの走行が可能になった。
開発責任者のチルトンがアタックを担当
2022年から、元F1ドライバー、マックス・チルトンがスピアリングの開発責任者としてマクマートリー・オートモーティブに加入。彼が参加した大規模なテストプログラムを経て、スピアリング開発チームはグッドウッド・ヒルクライムにおける記録達成が可能になったと明かす。
グッドウッド・ヒルクライムにおける現在の最速記録は、フォルクスワーゲンが開発した電動プロトタイプレーシングカー「ID.R」が保持。今回の記録挑戦に向けてチルトンをサポートするのが、現在英国ヒルクライム選手権において首位に立つアレックス・サマーズだ。サーキットとヒルクライム、異なるカテゴリーのトップドライバーが情報とマシンを共有することで、大幅な記録更新の可能性がさらに高くなるという。
「以前、私はグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでF1マシンのデモランを披露したことがあります。今回、スピアリングでヒルクライムコースのデビューを飾るのが楽しみです。私に課されたタスクは、サーキットで得られたスピードと自信を起伏に富んだグッドウッドのコースでも発揮することにあります」とチルトン。
「限られた練習走行と何十万人もの観客の前で、このマシンのポテンシャルを披露するという素晴らしい機会を頂きました。安定したダウンフォースを常に得られることは、ドライバーにとって革新的な機能だと言えるでしょう。テストでは一般的なフォーミュラカーとは異なるスピアリングに、自分のドライビングスタイルをアジャストする必要がありました」