【ランボルギーニ ヒストリー】ディアブロで復活した伝説の名「イオタ」「SV」

カウンタックの後継車「ディアブロ」の進化の変遷(1992-1999)【ランボルギーニ ヒストリー】

【ランボルギーニ ヒストリー】ディアブロに伝説の「イオタ」や「SV」の名前が復活!
デザインを一新し、新たなスタートを切ったランボルギーニ ディアブロを解説。
カウンタックの後継モデルとしてエクステリアを刷新した新型モデル「ディアブロ」は、大幅に進化したエアロダイナミクスによってパフォーマンスを強化。そして矢継ぎ早にリニューアルを行い、かつての名車「イオタ」や「SV」の名称を与えられた派生モデルを生み出していく。

Lamborghini Diablo

ディアブロに4WD仕様「VT」を追加

1993年にデビューした4WD仕様の「ディアブロ VT」。ひと足先に4WDを標準とするVT ロードスターがコンセプトで発表されたが、市販化されたのはクーペ版のほうが先だった。

ディアブロが前作のカウンタックから大きく進化したもののひとつがエアロダイナミクスだった。当時ランボルギーニが発表したデータによれば、ディアブロのファーストモデルが実現したCd値は0.31。それが最高速度で目標値を10km/hも超える325km/hを達成するために、大きく貢献したのは当然だ。そしてディアブロは、ここからさまざまなモデルを派生していくことになる。

最初にランボルギーニが派生モデルを予告したのは、1992年のジュネーブ・ショーでのこと。ここに出品された「ロードスター プロトタイプ」は、低くカットされたコンパクトなフロントウインドウなど独特なアピアランスをもつモデルで、同時に今後プロダクションモデルとして登場するロードスターはすべてVT、すなわちビスカス カップリングを使用した4WDモデル「ビスカス トラクション」の機構を組み合わせて生産されるという発表も行われた。実際にプロダクションモデルの「VT ロードスター」が発表されるのは、1995年のボローニャ・ショーまで待たなければならないが、クーペの4WD仕様となる「VT」は1993年に先行して発表されている。

創立30周年記念モデル「SE30」

1993年、設立30周年を記念して150台限定の「ディアブロ SE30」をリリース。独自の洗練されたスタイリングに加えて軽量化を行うなど、走行性能の向上も実現した。

1993年はランボルギーニが紆余曲折を経た後に、ようやく創立30周年の節目を迎えた年だった。それを記念して発表された150台の限定車が「SE30」で、これは専用のフロントバンパースポイラーやボディサイドボトム部のエアインテーク、ルーバー付きのエンジンフード、リヤウイングなどを採用し、スタンダードのディアブロとは異なる、さらにスポーティなアピアランスを実現したものだ。

軽量化に対する取り組みも積極的で、前後のホイールはマグネシウム製のワンピース。スタッドボルトもチタン製と徹底された。タイヤサイズもリヤに18インチ径を採用するなど、走りへの拘りが強く感じられた。

イオタの名が復活

SE30をベースに20台が製作されたと言われる「SE30 イオタ」。ミッドに搭載されるV型12気筒エンジンは実に595PSを発揮し、最高速度は340km/hと発表された。

SE30はその人気の高さから、1993年から1995年までに197台がデリバリーされたと記録されているが、その最終期に生産された約20台には制御系のプログラミングや、ルーフ後端からエアを導入するエアインテークなどで構成される“イオタ キット”を採用した「SE30 イオタ」、あるいは「SE30 コルサ」と呼ばれるモデルとして出荷されている。

ミッドのV型12気筒エンジンはSE30の525PSから、このSE30 イオタでは595PSへと強化。最高速度も340km/hを主張。400km/hがフルスケールとなるスピードメーターが与えらた。ちなみにこのSE30のコンセプトは、1996年のジュネーブ・ショーで発表される「SV」へと継承されることになる。

ついに500psオーバーを標準化

1999年型のディアブロ SV。より洗練されたスタイリングをまとい、ヘッドランプも固定式に変更された。ちなみにこのヘッドランプは、当時の日産フェアレディZと同一パーツ。
不評だった初期型のメーターパネルも改善。特にこの1999年型のディアブロ SV以降のコクピットは、視認性も含めて好評を博した。

ランボルギーニのカスタマー、そしてファンにとってディアブロで復活を遂げたSVの称号は、やはり特別な響きをもつものだった。1996年に登場したディアブロ SVは、ランボルギーニの親会社がメガテック、Vパワーといったインドネシア資本を経て、アウディに代わった後の1999年まで継続して生産されるが、その中で1996年と1997年/1998年/1999年という3タイプに大別できる。

最初の1996年、1997年モデルはSE30のコンセプトを最も忠実に受け継いだモデルだ。軽量化は最も徹底しており、ミッドのV型12気筒エンジンの最高出力は500PSオーバーとランボルギーニから発表されていた。翌1997年には、それは530PSという明確な数字に変わる。1998年モデルのSVで、それまでフロントには17インチを採用していたが、ホイールが前後ともに18インチ化された。これはブレーキの強化やABSの標準採用に伴っての改良策でもあった。最高出力は535PSに向上した。

そしてこの1998年モデルに限り、オープンモデルのSV ロードスター、すなわちRWD版のロードスターが23台生産されている。続く1999年モデルは、ヘッドランプが固定式に変わるなど、外観でも簡単にその識別が可能だ。SVはここに最終進化を遂げる。

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ ディアブロ VT

発表:1993年
エンジン:60度V型12気筒DOHC(4バルブ)
総排気量:5707cc
圧縮比:10.0
最高出力:361kW(492PS)/6800rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:4WD
車両重量:1625kg
最高速度:325km/h

ランボルギーニ ディアブロ SE30

発表:1993年
エンジン:60度V型12気筒DOHC(4バルブ)
総排気量:5707cc
圧縮比:10.0
最高出力:386kW(525PS)/7100rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1490kg
最高速度:330km/h

ランボルギーニ ディアブロ VT ロードスター

発表:1995年
エンジン:60度V型12気筒DOHC(4バルブ)
総排気量:5707cc
圧縮比:10.0
最高出力:361kW(492PS)/6800rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:4WD
車両重量:1625kg
最高速度:323km/h

ランボルギーニ ディアブロ SV

発表:1996年
エンジン:60度V型12気筒DOHC(4バルブ)
総排気量:5707cc
圧縮比:10.0
最高出力:368kW(500PS)/7000rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1450kg
最高速度:300km/h オーバー

ランボルギーニ ディアブロ SV ロードスター

発表:1998年
エンジン:60度V型12気筒DOHC(4バルブ)
総排気量:5707cc
圧縮比:10.0
最高出力:394kW(535PS)/7100rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1450kg
最高速度:300km/h オーバー

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

ミウラP400の生産ラインとされる写真。ずらりと並ぶV12エンジンは壮観だが、実際に生産されているとは思えないほど整然としている。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…