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Lamborghini Sesto Elemento
「第6元素」を名乗るスーパーライトウェイトモデル
2010年のパリ・サロンで、ランボルギーニは1台のコンセプトカーを発表した。V型10気筒エンジンをミッドに搭載することや、そのボディシルエットから、ベースが2003年に誕生し、ランボルギーニにとって史上最大のヒット作となったガヤルドであることは容易に想像できたところなのだが、実際にその詳細を知ると、それがガヤルドからの進化型などと評するのみでは物足りない、まさに狂気のコンセプトカーであることが徐々に明らかになっていった。「セストエレメント」、すなわち「第6元素」とネーミングされたこのモデルは、はたして何を追求し、そして何を成し得たコンセプトカーなのだろうか。
先進のCFRPテクノロジーを惜しみなく投入
第6元素がC=炭素であることを知れば、その答えはおおむね明らかになる。セストエレメントは、スーパーカーの生産とともに、現在ではランボルギーニが世界のリーディング・カンパニーのひとつになった炭素繊維の製造技術を駆使して製作した、超軽量コンセプトカーだ。ランボルギーニとカーボン技術の関係は古く、カウンタック時代にはすでにその進化のためにカーボン素材の導入も検討されていたというから、それが現在におけるランボルギーニのコア技術のひとつとなったのも十分に理解できるところだ。
最近では日本の三菱レイヨンと炭素繊維の共同開発に基本合意したほか、アメリカのマサチューセッツ工科大学とは炭素繊維ボディをスーパーキャパシタとして使用することで、瞬時に大量のエネルギーを放出する技術を研究するなど、その方向性も年々多様化している。
車重999kgによってパワーウェイトレシオは1.75kg/PS
セストエレメントには、2010年の段階でランボルギーニが持っていた炭素繊維製造技術が惜しみなく導入されている。複雑なデザインを短時間で1ピース製造する鍛造加工技術、プリプレグ技術、そして炭素繊維の編み込み技術。それらの先進的な、そしてまた熟成の極まった技術を用いてセストエレメントは完成されていった。
結果的にセストエレメントが実現したウェイトは、後期型のガヤルドと同様に5204ccのV型10気筒自然吸気エンジンを570PSの最高出力で搭載し、またそのエンジンやサスペンションなどをマウントするリヤサブフレームをアルミニウム製とするなど、オールカーボンではなくとも999kgを達成。それから計算されるパワーウェイトレシオは1.75kg/PSと驚異的な数字になる。
随所にカーボン素材を施して得た驚異的な軽量性能
インテリアのフィニッシュも、セストエレメントのコンセプトに合わせて、ガヤルドから大胆にその姿を変化させている。ダッシュボードは廃止され、左右のシートもカーボンフレームを採用した独自のものに。アクセントカラーにオレンジに近いレッドを用いることで、マットなカーボン素材に包まれるコクピットに華やかさとともに独特な緊張感を演出している。
それはエンジンフード上のヘキサゴン型のダクトも、そしてまたブレーキキャリパーも同様だ。0→100km/h加速で2.5秒、最高速度では300km/h超(プレスリリースによる)を誇るセストエレメントは、デビュー時のインフォメーションではあくまでもコンセプトカーであると説明されたが、市場ではそのセールスを望む声が強かった。結局ランボルギーニはそれをサーキット走行専用車として20台限定で販売することを決断したのだった。
新世代ランボルギーニの指標を決定づけたマイルストーン
ランボルギーニが、このセストエレメント以降、ニューモデルの開発コンセプトを大きく変化させてきたことは、カスタマーには良く知られているところだ。軽量化技術はさらに積極的にプロダクションモデルに導入され、最高速はもちろん世界の第一線にある数字を可能としながら、同時にコーナリングや加速の楽しみをカスタマーに強く訴える。軽さはそれを実現するために最も重要な性能なのだ。
はたして現行モデルのウラカンでは、このセストエレメントのような、過激で狂気さえ感じるストイックなモデルは誕生するだろうか。もちろん世界中のファンは、それが現実になる日を待ち望んでいることは言うまでもない。
SPECIFICATIONS
ランボルギーニ セストエレメント
発表:2010年
エンジン:90度V型10気筒DOHC(4バルブ)
総排気量:5204cc
圧縮比:ー
最高出力:419kW(570PS)/8000rpm
最大トルク:540Nm/6500rpm
トランスミッション:6速セミAT eギア
駆動方式:AWD
車両重量:999kg
0→100km/h加速:2.5秒
最高速度:300km/hオーバー
解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)