BMWアルピナとBMW Mの4シリーズと3シリーズを比較

「硬派なカーガイを自認するなら素通りできない」BMWアルピナB4グランクーペとBMW M3コンペティションを比較試乗

長きに渡り特別なクルマを求めるエンスージアストの期待に応えてきたアルピナだが、2025年をもって、その商標をBMWに譲渡し、新たなる展開を模索しているという。そのアルピナの最新モデルB4グランクーペを、これもファンの多い硬派路線を貫くM3と比較した。

BMW Alpina B4 Gran Coupe
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BMW M3 Competition M xDrive

アルピナの潔い決断

今年春に突如発表された「アルピナがブランドをBMWに譲渡する」というニュースは、「いつかはアルピナ」と夢見ていたエンスーにとっては青天の霹靂だったはずだ。1965年の創設から半世紀以上にわたってBMWと密接な協力関係を維持しながら、独立した自動車メーカーとして少ないながらも(年間生産台数は今も2000台程度)熱いファンに支えられてきたアルピナ・ブルクハルト・ボーフェンジーペン社は、2025年をもって商標権をBMWに譲り渡し、ボーフェンジーペン社はクラシックカービジネスやこれまでのアルピナ車のサービス、そして新たなモビリティ・ビジネスを手掛けることになるという。

新しいビジネスとは何か、およびアルピナ・ブランドを手に入れたBMWがそれをどう扱うかについてはまだ分からない。電動化に邁進するヨーロッパにあって、いかに少量生産のスペシャリストメーカーとはいえ、厳しくなる一方の各種規制から逃れることはできないから、アルピナが自分たちの行く末を憂慮していたことは容易に想像できる。アンドレアス・ボーフェンジーペン社長は3年前に「6気筒以上でなければアルピナとは呼べない」と語っていた。将来を熟慮した末の潔い、素早い決断だったのだろう。

ということは、もしかすると現行体制では最後になるかもしれない完全な新型車が、今年3月に発表された4シリーズ・グランクーペをベースにしたB4グランクーペだ。車内外のどこにも表示されていないが、BMWのxドライブをベースにアルピナ独自のセッティングを施したというアルラッド、すなわち4WD車である。

状況によっては硬さを感じることもあるM3

一方M3コンペティションM xドライブは、今年創立50周年を迎えたBMW Mの看板モデル、その名前通りこちらもM3/4シリーズとしては初の4WDモデルである。昨年春に導入されたM3とM4クーペに遅れて同年秋に国内発売されたのがM3とM4のM xドライブ、すなわちM専用の電子制御4WDシステムを搭載したモデルである。

M3としては6世代目となる新型(M4としては2代目)の日本仕様は、ベースグレード(M4のみ)に加えて高性能なコンペティション、さらにサーキットなどでの走行性能を追求したコンペティション・トラックパッケージという3車種のラインナップだったが、M xドライブはコンペティションと同トラックパッケージがそれぞれに設定されている。ベースグレードのM4は6速MT仕様だが、それ以外は8速ATとなる。

エンジンは先代に続いて直6ツインターボを搭載するが、最新世代のS58型3.0リッター直6ツインターボエンジンに換装されている。このユニットは既にX3 Mなどにも積まれているもので、標準仕様の480PS、550Nmに対してコンペティション用では510PS、650Nmを発生、ひと世代前のS55型直6ツインターボを積む従来型コンペティションに比べると60‌PSと100Nm増しに当たる。0-100km/h加速は3.5秒(RWDコンペティションは3.9秒)、オプションのMドライバーズパッケージ付きのこの車では最高速が250km/hから290km/h(リミッター作動)に引き上げられている。

ジェントルで洗練された

B4の直6ツインターボも既に発売されているB3セダン同様、このM用S58型をベースとしている。アルピナが求める性能(とりわけ長時間の全開走行)を実現するには現在はこのユニットが最適との判断らしい。ただし、スペックはB3用に比べてさらに33‌PSと30‌Nm増しの495PS、730Nmというもの。このピークパワーとトルクの発生回転をM3と比べればそれぞれの狙いがうかがえる。B4グランクーペの0-100km/h加速データは3.7秒、“巡航”最高速度は301km/hという。

乗れば両車の違いは明確だ。サーキット志向にして“トラックデイ”でのドリフトコントロールなどを重視したM3に対して、B4は依然として高性能かつラグジュアリーなグランドツアラーとしての立場を守っている。その立ち位置はスポーティ度を高めたB3よりも明らかにGT寄りである。

とはいえ、日常使用でもきわめて扱いやすいのが最新のM謹製6気筒ツインターボの真骨頂である。ゆっくり流す時にはあくまで滑らかにかつ逞しく、スロットルペダルを深く踏み込めば、きめ細やかな回転フィーリングを失わないまま爆発的に吹け上がる。しかもスロットルレスポンスやシフトスピードは個別に変更可能、もちろんどのモードでも一糸乱れず、緻密で洗練された美しく強力なパワーがいつでも手に入る。さらに「M」モデルに限らないBMW後輪駆動各車に共通する(もちろんアルピナも同様の)美点は、パワートレイン全体の剛性感が素晴らしいこと。スロットルペダルをちょっとだけ踏む、あるいは戻すといった微妙な操作に対してリニアに緻密に反応しながらも、パワートレインの遊びや揺動を感じさせず、ドライバーの思った通りにパワーを伝える滑らかなマナーがずば抜けている。

アルピナは地平線を目指す

M3のサスペンションは無論締め上げられてはいるが、日常使用でも不満はないと私は思う。不整に対する当たりの角は丸められており、粗野なハーシュネスなどは一切なし。ただし、さすがに巨大なタイヤを抑えつけている重量感はあり、低中速ではノーマルモードでも路面によって明確なガシッという突き上げを感じることもある。対するB4は基本ジェントルで洗練されており、エンジンも逞しいトルクを強調するように回る。ただしカーボンパーツなどを各部に採用して車重1800kgのM3コンペティションに比べて、1930kgのB4はさすがに重量感があり、それはハンドリングにも見て取れる。

M3はM5同様に4WDと同スポーツ、そしてDSCオフ時にのみRWDモードも選択できるが、B4にはもちろん備わらない。さらにM3ではオプションのMドライブプロフェッショナル(12万4000円)を加えると、Mドリフトアナライザーという機能が付属してくる。いわばドリフト走行評価機能で、ドリフト距離や角度、時間などを記録して、最高5つ星でその運転操作を評価する機能もある。また同オプションを選ぶと10段階でトラクションコントロールの作動レベルを調整することもできるが、クローズドコースで使用、との注意書き付きである。思い切り走りたいカスタマーはクローズドコースへどうぞ、というわけだ。今はそういう時代なのである。閉じられたサーキットではなく、地平線の向こうまで思い切り走りたい人のためのクルマがB4である。

REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
MAGAZINE/GENROQ 2023年1月号

SPECIFICATIONS

BMWアルピナB4グランクーペ

ボディサイズ:全長4792 全幅1850 全高1440mm
ホイールベース:2856mm
車両重量:1965kg
エンジン形式:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2993cc
ボア×ストローク:90×84mm
最高出力:364kW(495PS)/5000-7000rpm
最大トルク:730Nm(74.4kgm)/2500-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/35ZR20(8.5J) 後285/30ZR20(10J)
最高速度:301km(巡航最高速度)
0-100km/h加速:3.7秒
燃料消費率:9.9km/L(WLTC)
車両本体価格:1420万円(税込)

BMW M3コンペティションM xドライブ

ボディサイズ:全長4805 全幅1905 全高1435mm
ホイールベース:2855mm
車両重量:1800kg
エンジン形式:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
ボア×ストローク:90×84mm
最高出力:375kW(510PS)/6250rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgm)/2750-5500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前275/35ZR19(9.5J) 後285/30ZR20(10.5J)
最高速度:290km(リミッター作動)
0-100km/h加速:3.5秒
燃料消費率:9.8km/L(WLTC)
車両本体価格:1381万円(税込)

【問い合わせ】

BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

ALPINA CALL
TEL 0120-866-250
https://www.alpina.co.jp/

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著者プロフィール

高平高輝 近影

高平高輝

大学卒業後、二玄社カーグラフィック編集部とナビ編集部に通算4半世紀在籍、自動車業界を広く勉強させてい…