今ポルシェ911ターボ(996型)は買いなのか?

ポルシェ911ターボ(996型)が買いだ!【今買うなら、ひょっとしてコレちゃう?1台目】

かつてわれわれを虜にした911ターボ。その水冷ナローの最上級グレードが500万円から……。いろいろ想像させてくれるじゃないか。
かつてわれわれを虜にした911ターボ。その水冷ナローの最上級グレードが500万円から……。いろいろ想像させてくれるじゃないか。
クルマの流行廃りにあわせて大きく動く中古車市場。もしも中古車ライフを送るなら、その波を正確に捉えてお得な買い物をしたいものだ。そんな時代の羅針盤たるべく、西川淳が「今」買いのクルマを紹介する新企画。第1回はポルシェ911ターボ(996型)だ。

PORSCHE 911 Turbo [Type 996]

中古車選びは一期一会

996型911GT3(左)と911ターボS。これはポルシェミュージアムのバリモンだ。

若い頃に中古車情報を扱うメディアの編集者を長くしていたこともあって、今でも無類の“中古車好き”。過去30年間で50台以上の中古車を買ってきたけれど、趣味のクルマ選びに関していえば一つの成功パターンが自分の中で出来上がっている。

暇さえあればネットの中古車情報をチェックして気になる車種を検索サイトに登録、その相場感を常に養いつつ、色や仕様、程度が自分の好みに“ドンズバ”な出物がでてくればソッコーで決断、というプロセスだ。

焦らず探すけれど決めるときは早い。中古車選びこそまさに“一期一会”。悩んだところでかえってロクなことにならない。逃した魚は余計大きく思えるものだけど、悔しい思いをするくらいなら直感重視で決めてしまった方がいい。何なら取材で伺った中古車店での“出会い頭”で買ったクルマだって多い。だから訪れてはいけない危険な店も多い(笑)。つい先日もベントレー&ロールスの“行ってはいけない”専門店にふらりと寄って危うく古いベンツを買いかけた。

一度逃すと二度と出てこない

中古車は直感が大切だ。そのためにも普段から審美眼を養った方がいいだろう。

これが実用車選びなら流通台数も多いから「一晩冷静になって考えろ」「たくさん台数を見て回れ」「試乗して検討しろ」なんてアドバイスを編集者時代にはよく書いたものだけど、趣味の領域ではそもそも流通台数は少なく、その中で好きな仕様など一度逃すと二度と出てないことが経験上ほとんどだ。

だから出会い頭の直感で買ったクルマの方が成功した確率は高い(気がする、ということが大事で、クルマ趣味の経済を正確に分析してもこれまたロクなことにならない!)。

というわけで「今買うなら、ひょっとしてコレちゃう?」という、その時に私が気になっているモデルとマーケット概況について報告しつつ、クルマ探しという実は最も楽しいひとときを皆さんと一緒に楽しんでいきたいと思います。これからどうぞヨロシクです。

セケンのネガこそマニアのポジ(笑)

996型911ターボのリヤスタイリング。今見るとナローだ。

記念すべき第一回はポルシェターボ、それも最も相場の低い996ターボだ。ここ何年かずっと996GT3の相場をチェックしてきたのだが、良い個体に巡り合わないうちにさっさと高くなってしまった。そこで同じ年代の役物でまだしも安めの996ターボに最近、注目し始めたというわけ。

さっきもずっとカーセンサーで安めのポルシェ911をチェックしていた。車体価格の安い順に911をソート。するとまず出てくるのは996型である。世界的に人気の歴代911の中でもダントツの不人気、だから驚くほど安い。直前までの993とは雲泥の差になってしまった。空冷人気とデザインへの不満がその差の大きな要因で、特にボクスター顔への抵抗感が大きいのだろう。

996は初代水冷だ。そしてボディ幅も狭い。そういったこともマイナスかもしれないが、セケンのネガこそマニアのポジ。逆張りこそ勝利への近道(何に勝つ?)、ポルシェ911史において歴史的転換点となったモデルへの敬意を表して私は996を「水冷ナロー」だと常々言っている。ケン・オクヤマさんも関わっているしね!

選択肢は500万円から

安めの911、相場は今こんな感じだ。まずは996前期型が何と200万円ちょいから見つかる。300万円台から996後期型が、350万円台にはもう997前期型が混じってくる。このあたりまではまだ走行距離多めのカレラ系ティプトロ(5速AT)。400万円前後からようやくリセールの高い3ペダルも混じりはじめる。

そして何と450万円台で早くも、注目する996ターボを発見した! 2001年式ティプトロで距離は10万kmちょい。ボディ色の黒はマイブーム(20年ぶりに好きになってきた)、内装はなんと珍しいネフライトグリーン一色。うーん、渋い、渋すぎて鼻血ブーだ(古っ)。販売店が近所だったらソッコー見にいきたい。距離なりに内装のコンディションが良ければ……。

世界的911ブームのなかにあって996ははっきりと谷間だ。空冷時代から断崖絶壁のように相場が下がって、997からまた徐々に上昇へと転じている。年々、価格の上がっていく最新モデル役付の人気ぶりは言わずもがな。この傾向はしばらく続くと思われるので、最も買いやすい996も次第に良いタマ不足になり相場が上昇に転じることも十分ありえる。事実、欧州にはしっかりした996支持層がいて、10万km程度の個体でもすでに上昇機運にある。また前述したようにGT3はすでに2年前と比べて倍近くにまで跳ね上がった。これは今後、高くなる兆候のひとつだろう。

だからこそ、まだまだ安いターボを狙うべきなのだ。ターボならそれなりにモダンな速さもあって今でも十分楽しむことができるはず。古くなっても人気がなくても911ターボである。今ならかえって通好みに見えるではないか。水冷ナローの最上級グレードが500万円から。痺れますなぁ。

正規物でディーラーメンテを受けていれば問題なし

「出会い頭の直感で買ったクルマの方が成功した確率は高い」というのが教訓である。

最後に996と997のインタミ問題について。個人的にはさほど気にすることはないと思う。まず問題を引き起こすベアリングは996後期〜997前期のカレラ系のみ。ターボを含め、それ以外のグレードでは関係ない。そのうえこれだけ有名になったトラブル要因で、皆がそれを理由に中古での購入をためらうものだから、販売店としても売るためにはちゃんとケアをせざるをえない。

逆にインタミ問題ノーケア物件を平然と扱うような店では他のモデルも含めてわざわざ買う必要もない。実際、物件情報を見ても、タイトルにわざわざインタミ対策済みと謳っている個体も多かった(もちろん、ちゃんと対策されているかどうかを確認すべき)。正規物でディーラーメンテを受けていた個体ならほぼ対策品に交換されていると言っていい。

ポルシェ・ファンにとっては、夢のようなポルシェがズラリと揃うヨハン-フランク・ディリックスのコレクション。

「貴重なライトウェイト・ポルシェがおよそ50台」世界的ポルシェコレクターの持つラインナップがすさまじい

ベルギー・アントワープ在住のヨハン-フランク・ディリックスは、約50台のポルシェを所有する世界有数のポルシェ・コレクターだ。鮮やかなイエローの911 カレラ RS 2.7との出会いから始まった軽量ポルシェへの情熱は、今も尽きることはない。

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西川 淳