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秘密は立体音響技術にある
テレビの前にポンと置くだけの細長いサウンドバー。それだけで驚くほどの立体音響が得られるとしたら、自宅リビングのホームシアター化の一歩目としては、とても大きな前進になるだろう。まさにその第一歩に現在、最も相応しい製品がコイツだ。
実はソニーには「HT-A9」という、生産が追いつかないほどの大人気製品がある。その理由は明快。4つのワイヤレススピーカーと1個のサブウーファーを設置するだけで、本格的なシアター体験ができるからだ。その秘密は立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」。この技術は“波面合成”という極めて精密な演算のもとに“音の位置”をコントロールするもので、映像と音を同期させたインスタレーション作品などにも使われる。
“極めて精緻な演算”が必要なこの処理をコンパクトなボックスに入れ、4つのスピーカーで鳴らすことで立体音響を実現するアイデアは、実に驚きに満ちた体験をさせてくれる。一方でワイヤレス接続ではあるものの、後方にもスピーカーを置く必要があり、価格面でもサブウーファーを含めると30万円前後になってしまう。
80インチ超の大画面テレビに匹敵するサウンド
しかしソニーは、サウンドバーにまでこの立体音響技術を組み込んでしまった。それが「HT-A5000」だ。まず、本体を前に置くだけで5.1チャンネルのサラウンド音声と上面に配置された2つのイネーブルドスピーカーによる立体音響が楽しめる。天井と壁の反射音を利用するのだ。高さ67mmのコンパクトなサイズで薄型テレビの足元においても視覚的に邪魔にならない一方で、そのサウンドのスケールは80インチオーバーの大画面テレビに匹敵する。ドルビーATMOSでいうところの“5.1.2”チャンネル構成に相当する。初めて体験すると「これって本当に前に置いているだけ?」と驚くはずだ。
しかし、実はこの製品、それだけにとどまらない。アクセサリーでワイヤレススピーカーとワイヤレスサブウーファーを用意し、予算に合わせてシステムアップできる。リヤスピーカーを追加すると、冒頭で紹介した「360 Spatial Sound Mapping」が発動するのだ。波面合成により7.1.4チャンネル相当のホームシアターとしてはトップクラスの立体的な音響空間が生まれる。リヤスピーカーにはバッテリー内蔵モデルもあるので、リヤスピーカーの配線が難しいなんて環境でも、このど迫力の音を楽しめる。
ドルビーATMOSでの音声にも対応
ちなみに設定はスマホのアプリで簡単に行えるというのも、ワイヤレスでの拡張性と共に現代的なオーディオ製品らしい特徴だ。テレビが大画面になっても、再現される音場が小さいとせっかくの大好きな映像もその魅力が削がれてしまうもの。とはいえ、置き場所や予算にも限りがある。少しずつ音の大切さを感じながら、システムを拡張していきたいなら、まずはコイツを最初の一歩として導入してみてはいかがだろう。
映像配信サービスで配信される新作の多くは、ドルビーATMOSでの音声に対応している。設置したその日から楽しめるイージーなこの製品で、大好きな作品をパワフルな立体音響で楽しんでほしい。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2023年 4月号
PRICE
オープン価格
評価
上面にスピーカーがある点に注目。Bluetooth接続で音楽を立体音響に変換再生する機能も魅力的。リヤスピーカーの追加などシステムアップ前提で長く付き合いたい製品だ
立体音響:5
音楽再生:4
コストパフォーマンス:3
拡張性:5
設置性:3
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