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2001年型の996ターボが450万円!
この企画ではこれまでいろんな“狙い目”を紹介してきた。リアリティある価格と車体の個性とのバランスに秀でたモデルばかりだったと思う、なんてことを言うと「だったらお前も買ったらどうだ?」と言われそうだ。
実は買ってしまった。この企画を進めるにあたり、ターゲットを明確に絞ったことが自分自身の欲をも掻き立ててしまったのだろう。ミイラ取りがミイラになる。まぁ、もうこの20年以上にわたってそういうことの繰り返しだったから、ほとんど性癖なのかもしれないけれど。
手に入れたのは「ポルシェ911ターボ」だ。2001年型、いわゆる996のティプトロでお値段450万円。ブラック外装にグリーン内装というレアなコンフィグにひと目惚れしてしまった。以前996を取り上げた記事でも実例として取り上げたそのものの個体である。
今回見つけた996が低価格となった3要素とは
不人気な996とはいえ、泣く子も黙るターボだ。ちょいと安すぎやしないか? カーセンサーで見たときはそう思ったが、内容をよくみれば安くなる理由が3つあると考えた。「ティプトロ」「多走行(10万km以上)」「並行輸入」である。多くのポルシェマニアなら、ひょっとするとこれら3要素が揃った時点で「買わない」と決断するかも知れない。フツーのポルシェファンとしてもそう思う。
けれどもソト黒×ナカ緑という組み合わせの妙が気になってしかたない。そうなってくると3つの要素に関して“自分を納得させる”肯定化作業、つまりネガをポジに変えるステップが必要になってくる(初心者の場合はこの作業が往々にして失敗を産むのだが、こればかりは経験を積んでいただくほかない)。
まずはティプトロ。MTブームの昨今、996ターボも例外に漏れず3ペダルが高い。けれどもターボエンジンの特性上、必ずしも掻き回して楽しいとは思わない。GT3のような自然吸気エンジンモデルには最適だと思うけれど。それにトルコンATの味わいもまた今となっては面白い。
多走行に関していえば、日本人の感覚がシビアすぎで、5万kmを超えると“多い”気になってしまう。この個体は10万kmを超えていたから、もう多々走行だ。けれども911といえば多くの個体が生きながらえていることで有名なモデルではなかったか? 911オーナー自身がそのことを誇りに思っているはず。911はターボといえども、イタリアンカーのように決して扱いづらいモデルではない。GTカーとして距離が伸びたのは快調であったことの結果だ。
最後に並行輸入。これまたディーラー車信仰の強い日本では極端に嫌われる存在だ。けれどもこの個体は1999年まで正規輸入元であった“ミツワ物”。中古車スペック的には確かに並行輸入車と記すほかないかも知れないけれど、実際には準正規輸入のようなものじゃないか!(←あくまでも個人的見解です)
これ、やっぱり当たりじゃない?
というわけでプライスが低くなったネガ要因は、ポジとまでは言わないまでも、全て自分の中では肯定された。よし、あとは現物チェックあるのみ。メールで問い合わせてみれば、担当者から即座に返事がきた。「都内ならいつでもどこでも見せに持っていきます」とのこと。これは自信があるからに違いない(こうして肯定的イメージをさらに重ねていく)。実物と対面する時にはすっかり「買う気分」が醸成されているというわけで、昔みたいに舞い上がりはしないけれど、冷静さを失ってはいけないとも思い、996ターボに乗る友人Tさんと、愛車の面倒を全て見てくれているメンテナンスショップの代表氏に立ち会ってもらうことに。
ところは東京・神宮並木通り。約束の時間に行ってみれば、もうすでに自分以外の面々は揃っていて、早くも996談義が始まっていた(クルマ好きっていいなぁ)。Tさんが開口一番、「なかなかいいじゃないですか!」といえば、「ありがとうございます」なんて答えてしまうと、もうすでにいっぱしのオーナー気分。ひとしきり静的コンディションやドキュメント類などを確認し、前オーナーさんの様子なども聞く。どうやらクルマの維持管理に関しては神経質なタイプの方だったようだ。グッニュース!
いざ、試乗へ。明治記念館のあたりをぐるりと回って元の場所へと帰ってくる頃には、もうすっかり参っていた。エンジンは快調でATの状態も悪くない。10万kmとは思えないほど、ボディもアシもしっかりしている。やっぱり当たりじゃないかしら? 気になるところといえば緑内装の細かな汚れやリペイント跡のみ。動力性能に問題なければ、あとはきれいに仕上げ甲斐もあるというもので……。「いただきます!」。こうしておよそ1ヶ月後、黒の996ターボがメンテナンスショップに到着したのだった。
つづく