植物繊維をパーツに使用した「アルピーヌA110 E-ternite」

アルピーヌ初のEV「A110 E-ternite」のプロトタイプがボンネットやルーフに使用したまさかの天然素材

ボンネットやルーフに麻の繊維を使用した「アルピーヌA110 E-ternite」のプロトタイプ。
ボンネットやルーフに麻の繊維を使用した「アルピーヌA110 E-ternite」のプロトタイプ。
アルピーヌは、同ブランド初のEV「A110 E-ternite(エテルニテ)」に天然素材を使用したプロトタイプを製作した。カーボンファイバーの代わりにリネン(亜麻の繊維)を使用することで、軽量化と脱炭素化の両立を狙った試みだ。製品化にはまだ時間がかかりそうだが、麻のボンネットやルーフなどがハイパフォーマンスモデルのアイコンになる日が訪れるかもしれない。

Alpine A110 E-ternite

カーボンファイバーの代わりにリネンを使用

ルーフやリヤウインドウなどにも麻が使用されているA110 E-エテルニテ。
ルーフやリヤウインドウなどにも麻が使用されているA110 E-エテルニテ。

このプロトタイプには、ボンネット、ルーフ、リヤウインドウ、シートシェルなどにリネンが使用されている。自然素材であると同時に、製造工程におけるエネルギーの使用量がカーボンファイバーなどの素材に比べて少ないため、脱炭素化に貢献できるという。アルピーヌ・ブランド発祥の地で、A110の生産拠点でもあるノルマンディー地方ディエップ近郊で調達されるリネンを使用している。

自動車部品となる亜麻

亜麻は収穫・乾燥後、繊維をほぐして糸状に加工される。紡績工場で織物となった後、アルピーヌに送られる。
亜麻は収穫・乾燥後、繊維をほぐして糸状に加工される。紡績工場で織物となった後、アルピーヌに送られる。

3月から4月に種まきが行われる亜麻は、夏の初めに収穫される。9月中旬までの乾燥工程を経て、繊維の取り出し作業が行われる。糸に加工された後、紡績工場で織物となりアルピーヌの工場に送られる。

パリの南西レ・ジュリス(Les Ulis)のアルピーヌ・ラボで綿糸と組み合わせ、リネン95%・コットン5%の生地に作り替えられる。その後、エポキシ樹脂に浸すことでリネン80%・樹脂20%の素材となる。型に入れ真空処理が加えられた後は、一つひとつが手作業でパーツに仕上げられる。将来的には、エポキシ樹脂も自然由来のものに切り替えて、完全な脱酸素を目指しているとアルピーヌは言う。

今後の課題は軽量化

カーボンファイバーに比べ20%重くなるというリネン製のパーツ。アルピーヌは、コンポジットに関するノウハウを活用してトータルでの軽量化を目指すという。
カーボンファイバーに比べ20%重くなるというリネン製のパーツ。アルピーヌは、コンポジットに関するノウハウを活用してトータルでの軽量化を目指すという。

A110 エテルニテには重さ392kgのバッテリーが搭載されている。このプロトタイプは1.8リッター直4エンジン搭載モデルよりも258kg重い1378kgとなる。一般的なA110に使用されているアルミ製のボンネットは6.9kgだが、A110 Rのカーボン製ボンネットは軽量な3.98kg。今のところ、リネンで作られたパーツの重量は、カーボン製の同等品よりも20%ほど重いという。

アルピーヌでは、コンポジットに関するノウハウを活用して多くの機能を統合し、部品点数を減らすことで重量の問題を解消できるとしている。将来、リネン製のパーツがハイパフォーマンスモデルのアイコンになる日がやって来るかもしれない。

サルト・サーキットを走行する「アルピーヌ A110 R ル・マン」。

非公開: 100台限定「アルピーヌ A110 R ル・マン」がサルト・サーキットで発表「耐久レーシングカーのウイングを採用」【動画】

ル・マン24時間レース100周年を記念し、サルト・サーキットにおいてアルピーヌが100台限定の「A110 R ル・マン」を発表した。発表イベントでは、レーシングドライバーのソフィア・フローシュがステアリングを握り、100名のアルピーヌ・オーナーと共にパレードランを行った。

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石川 徹