東京の街中で最新の「パガーニ ウトピア」に試乗

最新の「パガーニ ウトピア」東京試乗で痛感した「これぞ稀代のイタリアンスーパースポーツ」

撮影車はピンクゴールドとカーボンのカラーマッチングが美しいホイールを履きこなしていた。タイヤはピレリ・トロフェオRSを装着する。
撮影車はピンクゴールドとカーボンのカラーマッチングが美しいホイールを履きこなしていた。タイヤはピレリ・トロフェオRSを装着する。
世界99台限定の知る人ぞ知るハイパーカー、パガーニ・ウトピアが上陸を果たした。メルセデスAMG謹製のV12を搭載する稀代のイタリアンスーパースポーツは東京の町並みでも異彩を放っていた。オラチオ・パガーニの傑作にして最新作、ウトピアの詳細を見ていこう。(GENROQ 2024年3月号より転載・再構成)

Pagani Utopia

99台が限定生産される桃源郷

センター4本出しのマフラーを採用する。非常に美しいテールエンドのデザインだ。
センター4本出しのマフラーを採用する。非常に美しいテールエンドのデザインだ。

2024年にファーストモデルとなったゾンダの発表から25周年を迎えた、イタリアのパガーニ・アウトモビリ社。その記念すべきアニバーサリー・イヤーのハイライトとして用意されていたのは、9月12日にミラノで発表された、新型モデルの「ウトピア」にほかならなかった。

C10のプロジェクトナンバーのもとに開発が進められたウトピアは、同様にC8のゾンダ、C9の「ウアイラ」に続くモデルで、その開発には6年以上もの時間が投じられたという。このプロセスの中でパガーニ・アウトモビリの社長であり、またデザイナーのオラチオ・パガーニが描いたスケッチは実に4000枚以上。ここから10台のスケールモデルが製作され、最終的には1台の風洞実験用モデルと2台の原寸大モデルを経て、8台のプロトタイプが製作されたという。オラチオの仕事に妥協という言葉がないのは、これまでのゾンダやウアイラと変わらない。

ウトピア、すなわち桃源郷というネーミングから想像するものは何か。それは第一に自由とそれを可能にする環境だろう。99台が限定生産されるウトピアに辿り着くことができた者、つまり自分の未来を切り拓くことが自由にできる者は、残念ながら発表の時点で既に決まっている。ならば彼らはこのウトピアのドライブでどのような自由を体験するのだろうか。それを想像するためにメカニズムの概要を紹介しよう。

確実な進化を遂げたエアロダイナミクス

ウトピアのボディデザインは、ゾンダやウアイラからの延長線上にあると考えてよいだろう。だがドラスティックな変化こそないものの、エアロダイナミクスは確実な進化を果たしている。ボディの上面には目立った可変式のエアロデバイスもなく、リヤエンドの左右にコンパクトなスポイラーが装備されているのみ。ウアイラではフロントにもこの可変式フラップは採用されていたが、ウトピアでは油圧式の可変サスペンションがその役割を担う。

エアロダイナミクスへの取り組みはホイールのデザインにも見られる。フロントが21インチ、リヤが22インチサイズとなる軽量な鍛造ホイールの外周には、カーボンファイバー製エクストラが組み合わされ、フロントに410mm径ディスク+6ピストン・モノブロック・キャリパー、リヤには390mm径ディスク+4ピストン・モノブロック・キャリパーというスペックのブレンボ製ベンチレーテッド・カーボン・セラミック・ブレーキユニットの冷却や、アンダーボディの乱流を軽減することに効果を発揮する。

ウトピアの基本構造体は、もちろんカーボンモノコックだが、パガーニではこれにカーボンチタニウムやカーボトライアックスなどの複合素材を織り込み、さらに軽量で強靭なモノコックを製作している。ちなみにこれらの技術は、パガーニの母体ともいえるカーボンコンポジット製造、コンサルティング会社であるモデナデザイン社によって開発、特許が所有されているもの。このセンターモノコックの前後には、クロームモリブデン鋼によるサブフレームが組み合わされるのが大まかな構成だ。

クラシカルな雰囲気を備えたインテリア

リヤサブフレーム上に搭載されるエンジンは、これまでどおりメルセデスAMGから供給を受ける6.0リッターのV型12気筒ツインターボ。最高出力と最大トルクは864PS、1100Nmと発表されており、マルチシリンダーエンジンが継承されたことにまずは安心したカスタマーも多いことだろう。もちろんこのスペックは前作ウアイラのそれを大きく上回るもの。最高出力では134PS、最大トルクでは100Nmのエクストラがさらに得られている。トランスミッションはXtrac社製の7速AMT(オートメーテッド・マニュアル・トランスミッション)、もしくはオーソドックスな7速MTの選択が可能。デファレンシャルは電子制御方式によるメカニカルタイプ。駆動輪はもちろん後輪となる。

前後のダブルウィッシュボーン形式のサスペンションは、いずれもインボード式で、ここでもやはり鍛造のアルミニウム合金を使用するなど軽量化のための策は怠っていない。このシステムはゾンダのサーキット走行専用車として開発された「ゾンダR」から継承されてきた技術だが、サーキットユースのみならず、日常のロードユースでも快適な乗り心地を演出するセッティングに仕上げられているとパガーニは説明する。

ジャパンプレミアに先立ち、ウトピアはイタリアのミラノでワールドプレミアの瞬間を迎えたが、そこではオラチオ・パガーニが作曲したというオペラの楽曲も、自身のピアノ演奏で披露されたという。ウトピアはそのエクステリアではモダンな、そして見るからに高性能な印象を与えるモデルだが、一方インテリアではそれにクラシカルな雰囲気も加わる。その絶妙なバランス感とこれもまた素晴らしい造り込みは、パガーニが過去25年にわたってデリバリーしてきたモデルのどれにも共通していえることなのだ。

ボルトの一つひとつまでを自身でデザイン

ゾンダやウアイラからの延長線上にあるウトピアのボディデザイン。ドラスティックな変化こそないものの、エアロダイナミクスでは大きな進化を遂げている。

ウトピアのドライブを終え、メインスイッチをオフにすると、キャビンにはオラチオが作曲したオペラ曲のショートバージョンが流れる粋な演出も採用されている。スイッチのみならずボルトの一つひとつまでを自身でデザインするというオラチオ・パガーニ。ウトピアは彼自身にとっても、まさにウトピアという世界の中で自由に、しかしながら一流のエンジニアとデザイナーとしての能力を伴って生み出したモデルにほかならないのだ。彼の造り出す世界観、それはやはり特別なものだ。

REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2024年3月号

SPECIFICATIONS

パガーニ・ウトピア

ボディサイズ:全長4637 全幅2034 全高1117mm
ホイールベース:2796mm
乾燥重量:1280kg
エンジン:V型12気筒SOHCツインターボ
総排気量:5980cc
最高出力:635kW(864PS)/5900-6000rpm
最大トルク:1100Nm(112.2kgm)/2800-5900rpm
トランスミッション:7速AMT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/35R21 後325/30R22
車両本体価格:232万2000ユーロ(日本円換算:約3億7150万円)

【問い合わせ】
Pagani of Tokyo
TEL 03-5798-2121
https://www.sky-g.org/pagani/

ローンチイベントのために来日したアジア太平洋地域担当マネージング・ディレクター、アルベルト・ジョバネッリ氏。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…