ボディサイズは近いが居住空間と荷室空間は別次元

ヤリスクロスのボディサイズは全長4180mm×全幅1765mm×全高1590mm。対するシエンタは全長4260mm×全幅1695mm×全高1695mmだ。

シエンタの方が全長と全高がわずかに大きく、全幅はヤリスクロスの方が広くなっているが、どちらもコンパクトで運転しやすいクルマであることは間違いない。両車の決定的な違いは、乗車定員数とスライドドアの有無と言えるだろう。

シエンタは5人乗り仕様に加え、7人乗り仕様の設定があるうえ、大開口の電動スライドドアはお年寄りや子どもでも乗り降りしやすく、駐車場での乗り降りの際も隣のクルマを気にせずに済むメリットがある。

3列目シートの居住空間は快適と言えないが、緊急用として見れば十分な広さを備えている。また3列目シートは使用しない時には2列目シートの下に格納できるため荷室空間の圧迫も少ない。自転車をそのまま積み込めるほど広い荷室空間は車中泊にも最適だ。

一方、ヤリスクロスはシエンタに比べて後席空間は狭いものの、コンパクトSUVとしては標準的な広さとなる。このクラスでは珍しい4:2:4分割可倒式リアシートのおかげで長尺物も積みながら4人が乗車できる点もヤリスクロスの優れた点だ。

荷室空間はボディサイズの割に広く確保されているが、一般的な身長の成人男性がヤリスクロスで車中泊を行うのは難しいだろう。

同じエンジンでも走りの差は歴然!燃費差は意外と小さい

ヤリスクロスとシエンタは、同じエンジンを搭載している。ガソリンモデルのスペックはともに最高出力120psで最大トルクは145Nm。ハイブリッドモデルはどちらも最高出力91ps、最大トルク120Nmのエンジンに、80ps/141Nmのフロントモーターの組み合わせだ。

ただし車重はシエンタの方がハイブリッドモデルで約200kg、ガソリンモデルで約150kgも重く、絶対的な加速性能や運動性能ではヤリスクロスの方が優れる。

しかし、シエンタのガソリンモデルはギア比の調整で車体の重さをカバーし、ハイブリッドモデルは重量差をものともしない強力なモーター駆動の恩恵で両車の燃費性能に大きな差はない。

両車のWLTCモード平均燃費は、ガソリンモデルがヤリスクロス18.3〜19.8km/Lに対して、シエンタが18.3〜18.4km/L。ハイブリッドモデルはヤリスクロスが27.8から30.8km/Lで、シエンタが27.6〜28.4km/Lだ。

ただし、乗員が増えるほど加速性能や燃費性能の差は顕著に現れる。どのようなシーンでも軽快に走れるのはヤリスクロスの方と言えそうだ。

また、シエンタの4WDはハイブリッドモデルのみの設定となる。対するヤリスクロスはガソリン、ハイブリッドの両方に4WDが設定されているうえ、制御機能やモータースペックもシエンタの4WDよりわずかに優れている。

どちらも高コスパな人気車種!ライフスタイルに応じて選び分けるのが吉

特別仕様車を除いたヤリスクロスの価格は、ガソリンモデルが204万6000円〜286万円で、ハイブリッドモデルが243万3200円〜323万4000円。

対するシエンタの価格は、ガソリンモデルが207万7900円〜273万3500円で、ハイブリッドモデル243万9800円〜332万2000円となる。

シエンタは2025年8月の改良でアダプティブクルーズコントロールと電動パーキングおよびブレーキホールド機能が全車標準装備となったうえ、運転支援機能にも新機能が追加されており、安全性や利便性はヤリスクロスとほぼ同等になった。

グレードごとの装備によって多少の差はあるものの、両車の価格はおおむね同じと言ってよいだろう。各部の基本構成も似ているため自動車税や重量税などの維持費にも大きな違いはない。

ただし、SUVとミニバンの違いから両車の用途は明確に異なり、その違いは搭載する快適装備にも表れている。

シエンタは広い車内の温度を一定に保てるサーキュレーターのオプションや、リアウィンドウにロールサンシェードが標準装備となるなど後席の快適装備が充実している。その一方で、シエンタはシートヒーターとステアリングヒーターは全車オプションだ。ヤリスクロスは、Zグレードであればシートヒーターとステアリングヒーターが標準装備となる。

2名以下の乗車が多く、前席を主体として使用するならヤリスクロスを選ぶとよいだろう。後席を多用する場合や、車中泊が目的ならシエンタを選びたい。

ただし、小さな子どもが2人いる家庭の場合、シエンタの後席にチャイルドシートを2座装着すると、3列目シートへの乗り降りがしにくくなる。このようなケースではヤリスクロスとシエンタの利便性の差は小さくなってしまう。

家族構成の変化や用途の変化などを加味してクルマの想定使用年数を決め、改めてどちらを選ぶか判断するのが賢明と言えるだろう。