長時間の高速道路渋滞において、多くのドライバーや同乗者が直面するのが「トイレ問題」である。特に夏休みやお盆、年末年始といった大型連休における帰省ラッシュでは、通常なら1時間程度で着くはずの距離が3倍、4倍の時間を要することも珍しくない。

こうした状況下で、トイレに行きたくなってもすぐにサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)にたどり着けないケースは多い。しかも、ようやく休憩施設に到着したとしても、すでにトイレには長蛇の列ということも十分にあり得る。とくに小さな子どもや高齢者が同乗している場合、切実な問題になりかねない。

今回は、渋滞時における高速道路でのトイレ事情とその対策についてお伝えする。

渋滞時にトイレが深刻な問題となる理由

高速道路のSAやPAに設置されているトイレ

なぜ高速道路の渋滞時にトイレ事情がここまで深刻化するのか。その理由はいくつかあるが、まずはサービスエリア間の距離が長いことだ。

高速道路では、トイレが設置されているのは基本的にSAまたはPAに限られる。これらの休憩施設は数十キロ間隔で配置されており、通常走行でも30分以上かかることがある。渋滞が発生している場合には、その時間が2〜3倍に膨らむ可能性も高い。次のトイレまで1時間以上かかることも珍しくないのが現状だ。

次に、渋滞中は途中で一般道に降りることができないことも問題点のひとつだ。

一般道であればコンビニや道の駅など、柔軟にトイレ休憩を取ることができるが、高速道路ではそれができない。インターチェンジ(IC)やスマートICまで到達しない限り本線を離れることができず、渋滞に巻き込まれている最中に下道へ避難するのは極めて難しい。まさに“閉じ込められた”状態になるのだ。

さらにSA・PAの混雑も、トイレ問題が深刻になる理由だ。

お盆やGW期間中は、SAやPA自体が混雑しており、駐車スペース探しに時間がかかる。仮に駐車できたとしても、トイレには長い行列ができているケースが多い。特に女性用トイレや子ども用トイレは回転率が低く、到着してもすぐに利用できるとは限らない。渋滞のストレスに加え、トイレを我慢し続けることで、心身に大きな負担がかかるなど二重の問題が生じてしまう。

事前の準備がカギを握る、渋滞時のトイレ対策

事前の準備がカギを握る、渋滞時のトイレ対策

渋滞中の高速道路でトイレに行けない状況は、誰にでも起こり得るトラブルだ。高速道路の渋滞中にトイレ問題に直面しないためには、「トイレに行けない前提」で準備をしておくことが何より重要である。渋滞を想定した4つのトイレ対策を確認していこう。

まずは、携帯トイレを車内に常備しておくことだ。

現在では、ドラッグストアやカー用品店、インターネット通販などで多種多様な携帯トイレが購入できる。吸水ポリマー入りで臭いを抑え、使用後も密閉できる製品が主流となっており、衛生的かつ使いやすい。使用時に目隠しできるカーテン付きのタイプもあり、女性や子どもにも安心して利用できる。

次に水分摂取のタイミングについて。

渋滞中でも熱中症などを防ぐために水分は必要だが、利尿作用のあるカフェイン飲料(コーヒー・緑茶など)は控えた方が無難だ。また、冷たい飲料や車内の冷房によって体が冷えると、尿意が近くなるため、エアコンの温度設定にも気を配りたい。

3つ目に渋滞予測を事前にチェックしておくことだ。

NEXCOやJARTIC(日本道路交通情報センター)の公式サイトで事前に渋滞予測を確認し、混雑が予想される時間帯や区間を事前に把握することが可能だ。ピーク時間を避けて出発することで、長時間トイレに行けないリスクを軽減できる。

最後にトイレ付きSA・PAを把握しておくことだ。

すべてのパーキングエリアにトイレがあるとは限らない。経路上にあるSA・PAの設備情報をあらかじめ確認しておけば、緊急時にも冷静に判断できる。最近では、スマートフォンアプリや公式サイトを使って、トイレの位置や混雑状況を調べることも可能だ。

年齢や性別によって異なる“トイレ問題の深刻度”

トイレ待ちの長蛇の列

トイレの緊急性は、年齢や性別、体調によって大きく異なる。子どもや女性、高齢者がいる場合は特に配慮が必要だ。子どもは尿意を感じてから我慢できる時間が非常に短い。車内で「今、トイレに行きたい」と言われても、次のPAまでまだ20kmという状況は珍しくない。携帯トイレの他、着替え・おむつ・防水シートなどもセットで常備しておくのが望ましい。予測不能な事態に対処するには「過剰なくらいの備え」が安心につながる。

高齢者は加齢に伴って膀胱の容量が減り、尿意を感じやすくなる。また、持病や服薬の影響で頻尿になっていることも多い。冷え対策としてひざ掛けやクッションを用意したり、吸水パッドをあらかじめ装着してもらったりすることで、トイレにたどり着くまでの不安を軽減できる。

SA・PAでは女性トイレに行列ができやすく、タイミングによっては10分以上待たされることも少なくない。そのため、女性用に設計された個室型の携帯トイレや、車内で使用可能なポンチョ型の目隠しグッズなどが強い味方になる。プライバシーを確保しつつ、安心して対処できる環境づくりが求められる。

渋滞中にどうしても我慢できなくなったら?

万全の備えをしていても、想定を超える渋滞に巻き込まれた場合には、非常対応も検討せざるを得ない。 このような非常手段も視野に入れておく必要がある。

非常駐車帯に停車する場合は、安全確保を最優先にハザードランプを点灯させ、後続車に合図を送り速やかに停車します。

高速道路には非常駐車帯(エスケープゾーン)が一定間隔で設けられており、緊急時にはここを利用する選択肢がある。ただし、安全確保が最優先だ。停車の際はハザードランプを点灯し、後方確認を徹底したうえで、周囲の車両に注意喚起を行わなければならない。これはあくまでも“最終手段”として位置づけるべきだ。

小さな子どもや高齢者が同乗している場合は、運転者以外の家族がサポート役として動ける体制を整えておくと心強い。着替えや目隠し用の布、使用済みの用品を処理するためのビニール袋などをすぐに取り出せるようにしておけば、混乱を最小限に抑えられる。非常時こそ、チームワークと冷静な対応が重要だ。

備えがすべてを左右する渋滞時のトイレ対策

高速道路の渋滞中にトイレに行けなくなるという状況は、多くのドライバーや同乗者にとって決して他人事ではない。SNSには、子どもが我慢できずに漏らしてしまった、女性トイレの行列に諦めた、携帯トイレに救われたといった体験談があふれている。

これらのエピソードは、トイレ問題が特殊な出来事ではなく、誰の身にも起こり得る“現実的なトラブル”であることを示している。そして、その影響の大きさは「備えていたかどうか」が重要だ。

つまり、渋滞中のトイレ問題は防ぎようのない事故ではなく、事前の準備によって未然に対処できる“予測可能な課題”なのである。