小さくも大きな“決意”描く人間ドラマ

3月20日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開中の『決断するとき』は、第96回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した名優キリアン・マーフィーが、次なる挑戦として選んだ作品。『コット、はじまりの夏』の原作者としても知られる作家クレア・キーガンのベストセラー小説「ほんのささやかなこと」に深く惚れ込んだマーフィーが自ら映画化を希望し、初めてプロデューサーを兼任。あのマット・デイモンやベン・アフレックも参画し、鉄壁の布陣によって制作されました。
物語の舞台は1985年、アイルランドの小さな町。炭鉱商人として家族と慎ましく暮らすビル(マーフィー)は、クリスマス前に炭を届けた地元の修道院で、一人の少女から「ここから出してほしい」と懇願されます。若い女性たちが行き場なく苦しんでいる現実を目の当たりにしたビルは、見て見ぬふりが賢明と知りながらも良心の呵責に悩み続け……。
本作の背景にあるのは、アイルランドに実在した“マグダレン洗濯所”の人権問題。社会が長く黙認してきた現実を前に、「知ってしまった個人はどう振る舞うのか」を静かに問いかける人間ドラマに仕上がっています。

そしてマーフィー演じるビルは炭鉱商人ということで、その仕事にトラックは必須。ずんぐりした黄色いトラックは60年代に製造されたベッドフォードのTKで、予告映像でも印象的にフィーチャーされています。
毎日のルーチンワークを強調する固定視点は“権力の横暴”から目を逸らし続ける理由かのように胸を圧迫し、灰色の映像の中でその黄色が不思議な存在感を放ちます。セリフを極力抑え、沈黙をもって内面の葛藤を徹底的に演じ切ったマーフィーの姿が深い余韻を残す、静かな傑作が誕生しました。
公式サイト:『決断するとき』
