トヨタが世界販売台数で3年連続首位になったことが大きく報道された。2022年の世界自動車販売台数ランキングは次の通りだ。
1位:トヨタグループ(ダイハツ、日野自動車含む)1048万台(▲0.1%)
2位:フォルクスワーゲングループ826万台(▲7.0%)
3位:ヒョンデ(ヒョンデ、キア、ジェネシス含む)685万台(▲3.0%)
4位:ルノー・日産・三菱615万台(▲20.0%)
5位:GM(年間販売台数は未発表。1-11月で約512万台)
今回は、各社が1月末に発表した「世界生産台数」に注目してみよう。
筆者は、2006年以降Motor Fan illustrated誌の取材で、さまざまなOEM(自動車メーカー)、サプライヤーのエグゼクティブの話を訊く機会があった。欧米の名だたるメガサプライヤーが日本市場に参入するわけを訊くと、たいていこういう答えが返ってきた。
「日本は非常に重要なマーケット。日本の消費者の眼は世界でもっとも厳しい。この市場で認められることの意味は大きい」と。
サプライヤーの場合は、こう続く
「世界で生産されるすべての自動車のうち、JOEM(日本の自動車メーカー)が占める割合は3割です。生産されるのは世界各地の工場ですが、どんなクルマにするのか、それを決定するのは、ここ日本なのです。つまり世界の自動車の3割は日本でクルマづくりの重要な決定が行なわれるのです。だから、我々はココにいるのです」
なるほど。
では、2022年はどうだったか?
2022年 | 2001年 | 01→22年成長率 | |
トヨタGroup | 1061.0万台 | 584.8万台 | 181.4% |
ホンダ | 387.0万台 | 265.3万台 | 145.9% |
日産 | 320.1万台 | 246.7万台 | 129.8% |
スズキ | 317.2万台 | 173.9万台 | 182.4% |
三菱自動車 | 101.2万台 | 166.0万台 | 61.0% |
マツダ | 109.2万台 | 86.9万台 | 125.7% |
SUBARU | 84.9万台 | 57.1万台 | 148.7% |
JOEM合計 | 2380.6万台 | 1580.7万台 | 150.6% |
世界生産台数 | 8500.0万台(推計) | 5630.4万台 | 151.0% |
自動車の2022年世界生産台数は少し多めに見積もって約8500万台。JOEMの生産台数の合計は約2380.6台である。そのシェアは28.0%。たしかに、約3割である。
21世紀最初の年、2001年の数字を見てみよう。
自動車の世界生産台数は5630.4万台。JOEMの合計は1580.7万台だ。シェアは28.1%である。21世紀に入ってからの自動車産業は、メーカー同士の合従連衡があり、経済危機があり、大災害があり技術スキャンダルがあった。それでも、シェア28%を維持しているのは、日本の自動車産業の底力の強さといえそうだ。
2001年→2022年、世界の自動車生産台数は約1.5倍(151.0%)となった。JOEMの生産台数も同じく1.5倍(150.6%)になっている。この間、中国、韓国、インドなどの自動車新興国が急成長してきたわけだから、同じ成長率をキープしているJOEMは、健闘を続けていると言える。
同じ基準で日本の自動車メーカーの生産台数を見てみる。2001年度比で151.0%を超えていれば、プラス成長と考えれば、トヨタの181.4%、スズキの182.4%という数字が大きな意味を持つ。この2メーカーの大成長のおかげで、JOEMの世界シェア約3割がキープできているとも言えそうだ。
世界の自動車市場は、1位:中国、2位:アメリカ、3位:日本というのがここ数年の状況だったが、2022年は3位:インド、4位:日本となった。マーケット的には日本の存在感は低下しているわけだ。
JOEMの世界シェア約3割をキープすることの意味は、日本の自動車ユーザーにとっても意味のあることだ。我々が「良いクルマ」を選び購入することで世界で売られているクルマの3割に好影響を及ぼすことができる。もちろん、日本の基幹産業である自動車産業の基盤も維持・発展できるわけだ。カーボンニュートラル、自動運転、電動化、シェアリングモビリティ……自動車をめぐる環境は激変している。2030年、2040年時点でもJOEMの存在感が下がらない(というか上がることを)ことを強く願う。