グリップもドリフト自在の本格派!「トヨタ GR86」【最新スポーツカー 車種別解説 TOYOTA GR86】

ボディのインナーフレーム化によって先代より剛性を高めた「トヨタ GR86」。骨格が重くなった分を細かな軽量化でほぼ±0にしながら、一方で従来通りの高剛性素材を使用し、レーシングカーを意識したこだわりを見せる。低中速の豊かなトルクと高回転域のサウンドもレーシーなドライブフィーリングを演出してくれる。
REPORT:橋本洋平(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:神村 聖/平野 陽

強化されたボディとエンジンによる車両重量の増加を克服

基本コンポーネントは旧型と共通ながらも、ボディは骨格を強固に製作してから外板パネルを上乗せするインナーフレーム化によって、フロントストラット軸曲げ剛性は+60%、車体捩り剛性は+50%、リヤサブフレーム剛性は+70%も引き上げられた現行モデル。エンジンは2.0lから2.4lへと排気量アップを行なったことで、28ps、38Nmの向上を達成している。

エクステリア

前後ふたつの峰を形成する大きく膨らんだフェンダーアーチ、リヤに行くほど絞り込まれたグラマラスなボディラインが目を惹く。全車にデュアルエキゾーストマフラーを採用し、マフラーカッターは「SZ」以上に標準。
2.4l水平対向エンジンは、235ps/7000rpm 、250Nm/3700rpm というスペックで、直噴とポート噴射を運転状況に応じて制御するツインインジェクターを備える「D-4S 」を採用する。プレミアムガソリンを指定。
最上級の「RZ」は、引き締まった印象をもたらすマットブラック塗装の18インチアルミホイールを履く。試乗車のタイヤは、215/40R18サイズのミシュラン製「パイロットスポーツ4」だ。
通常時でも231lの荷室容量を確保し、ふたり分の旅行バッグ程度なら十分に収まる。後席を前倒しすると、前席背もたれ裏まで1.2m超の奥行きが広がり、9.5インチのゴルフバッグが2セット積み込める。

だが、一方で従来通りの手法では+75kgも重くなることがウイークポイントで、そこを克服するための改良を行なったところが新型のもうひとつのポイントだ。それはフロントフェンダー、ルーフのアルミ化に始まり、マフラー、プロペラシャフトもまた軽量化している。これでほぼ重量増を吸収してしまったというから驚きだ。

インテリア

黒を基調にステッチやロゴなどに赤を配したレーシーな仕立て。「GRフロアマット」はオプションで、運転席用はヒールパッド付きとなり、運転操作をサポート。全車に左右独立温度調整式フルオートエアコンを標準装備する。
低い位置に座らせる前席は、スポーツカーらしく足を投げ出すような体勢になる。山道でも身体をしっかりとホールドする形状と滑りにくい素材を用意。「RZ」にのみ、上質なウルトラスエード/本革のコンビを標準化する。
後席は、身長171cmの筆者の場合、収まってしまえば非常用になる広さ。
腕時計を横にしたような特徴的なメーターパネルは、中央に回転計と速度計を配する。
6速MTは、先代よりもスムーズに操作できるようになったのが朗報。
「RZ」は滑り止めが付くスポーツアルミペダルで、ヒール&トゥもしやすい。

さらに全高を10mm下げ、カップルディスタンスはマイナス7.4mm、ヒップポイントは5mm下げるなど、その手法はレーシングカーをつくっているかのよう。ただし、兄弟車のBRZのようにフロントナックルをアルミ化せず、旧型同様の鋳鉄製としたところは拘りのひとつ。レースに投入したとしても、きちんとした剛性を出したかったという狙いがそこにある。また、フロントスタビライザーについてもGR86は中実でBRZは中空。リヤは取り付け方法も異なり、GRはあえて従来通りの手法を選択。トヨタとスバルが目指す走りの違いが垣間見える部分だ。

ボディと足まわりの進化で本格的スポーツカーに変身

従来よりもやや重くなったクラッチを踏み込んでクルマをスタートさせると、低中速のトルクが明らかに豊かになり、かなり走りやすくなったことが感じられる。それでいて高回転へ向けた吹け上がりも失っておらず、レッドゾーンとなる7500rpmまで爽快に吹け上がる。その際、アクティブサウンドコントローラーが、ビートの効いたサウンドを室内に展開してくれるから気分は高まる。排気系で演出しにくい世の中になったが、これならドライバーはこれからも満足できそうだ。

うれしい装備

走行モードを「TRACK」にすると、回転計がインジケーターになり、レーシーな雰囲気に。 
席両側のシートヒーターは、「RZ」にのみ標準でほかは未設定。ニ段切り替え式を採用。 
リッド付きのセンターコンソールボックス内に、ニ本分のドリンクホルダーを備える。
「T-Connect」ナビをオプション設定。常時接続で、最新の地図情報やアプリが使える。

コーナリングをしてみて感じることは、やはりハコの強さだ。ステアリングをわずかに切り込んだ瞬間から、リヤが即座に追従してくる感覚は旧型にはなかった世界観だ。うねりに対するダンピングも良く、ボディの弱さを感じるようなことはなくなった。GR86は微小操舵角からフロントの応答性が良いところが特徴的で、少ない操舵角でコーナーを駆け抜けることが可能。

テールの追従が良過ぎるくらいなのでテールハッピーだと受け止められやすいが、ボトムスピードをしっかりと落とし、立ち上がりでアクセルを全開にできるように走れば、結果的に速い足まわりとなっている。GR86だからといってドリフト指向であるわけでなく、速さもきちんと備えて登場してきたあたりは旧型とは違う。グリップもドリフトも自在にこなせる、本格的スポーツカーだ。

Country     Japan
Debut       2021年10月
車両本体価格    279万9000円~351万2000円 

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.143「2022-2023 スポーツカーのすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/143/

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