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すでに成熟の域に達したかと思われたドライブレコーダー市場ではあるものの、2022年はその機能性が次なるステップに達した1年といっても過言ではない。高画質競争は一段落。次なる一手として記録範囲の拡大に注目が集まった。
これまで定番として親しまれた前後2カメラだけでなく、360度カメラにリアカメラを追加して前後左右をフルカバーできるモデルが、各メーカーから次々と投入されてきたのだ。
従来の360度モデルでは相対的に手薄だった後方記録を補完できるため、より安心感が高まる。さらに道路上で起こる交通トラブルだけでなく、駐車中のドアパンチや当て逃げなどの被害記録に対する貢献度も大きい。
また、後続車両からの煽り被害を自動で記録するモードの搭載も、2022年のトレンドと言える。まさに安心のための装備として一段と進化しているというわけだ。
これらの進化に加え、さらに安心感を上乗せするのが本製品だ。4G LTE通信機能を搭載するため、万が一のトラブルを記録したうえで、画像や映像をクラウドに自動アップロードしてくれる。クラウド保存されたデータは専用アプリを使用すればスマホなどで視聴することができ、さらにアプリ経由で通話もできる。万が一の際を見越し、車内に向けて声掛けできる機能性は見どころだ。
覚悟を決めて最大限を求める。生みの苦しみが呼んだ多大なる可能性
ドライブレコーダーに通信機能が搭載され始めたそんな時、コムテックでもすでに開発は始まっていた。
「法人用はいっぱいあったんですけどコンシューマー向けはほとんど市場にない状況でした。通信で画像を飛ばすところからのスタートでしたが、試作が出来上がったタイミングで動画も電話もという話もあり、最終的にはフルセットで出さなきゃ市場には受けないよねとなりまして。小さいところから大きい所まで、全部の仕様を変えてやっと製品化にたどりつきました(佐藤氏)」
社内の風潮として、今持っている技術を使って横に展開しようという考えがそこにはあった。社長からの大号令もあったといい、社をあげてのビッグプロジェクトになっていく。
「やっぱりハードが変わるとノイズとかが発生して、通信の方にも影響が出ました。そういうところでまた回路変更とかも入ったりして、仕様決定の時間も掛かりましたね。問題がある周波数を特定し、それを抑えるためにデバイス制御のクロックの入れ方を変えたりと、色々手を加えています(尾澤氏)」
その開発過程は、既存モデルとは大きく違った。
「ドラレコを作る通常のフローもそれなりには大変なんですけど、それよりもこの仕組みを作っていく所にすごい時間が掛かりました。ユーザーがいつ通信を開始するんだ、その時契約はどうするんだなど、全部の箇所でシステムを作らなきゃいけないもので(佐藤氏)」
結果、通信型製品のネックでもある契約手続きが省かれ、製品購入後にアプリをダウンロードしてペアリングするだけで使い出せるなど、入手時の煩雑さも簡素化された。基本的に、1年間は無料で使用できるため、仕組み的には非常にシンプル。既存のコンシューマー向け製品とは大きく違う点だ。
「ドライブレコーダーとサーバーの間は専用回線。外から見られません。ドライブレコーダーの映像は車内も映します。インターネットにつながると、そこは個人情報になり、リスクにもなり得ると考えました(佐藤氏)」
その高いセキュリティ性は、今後の展開にも大きな意味を持つものになる。できあがったプラットフォームは、今後いろんなアイテムに展開可能だろう。それは、コムテックの強みにもなりうるものだ。
「物を売るだけでは終わらず、ずっと付き合っていかなきゃいけないものでもあります。ただこのシステムが出来上がったことで、物を換えなくてもサーバー側で機能をアップデートさせられる。これも大きなメリットになります(佐藤氏)」
活用シーンも、その幅はより広がる。
「運転手の見守り機能を重視して作ってますが、駐車時の見守りもできるようになっています。これからは、走行中に周りの見守りもできるなど、色々な展開も考えたいと思っています(尾澤氏)」