【動画でチェック!】サンダーバードかエヴァンゲリオンか!? 入庫&出庫シークエンスが燃える! 日本唯一のユニークな回転式立体駐車場を利用してみた!

私たちも日常的に利用している時間貸しの立体駐車場には、大きく二つに分けられる。自身の運転で駐車を行う自走式と自車をパレットに載せる機械式だ。後者には、様々な種類が存在するが、日本で唯一のレアな機械式駐車場が存在すると知り、取材に出向いた。
PHOTO&REPORT:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

日本唯一の駐車場が北海道にある

噂の駐車場がある「北海道建設会館ビル」。

その珍しい駐車場があるのは、北海道札幌市。札幌駅前にある「北海道建設会館ビル」の駐車場だ。11階建てのオフィスビルの1階入り口には、時間貸し駐車場への入り口があり、ビル自体に駐車場機能が盛り込まれているのがわかる。その構造自体は極めて普通なのだが、駐車システムが独特なのだ。

駐車場の入り口。

なんと旋回可能な円形型自動車用エレベーターが備わり、昇降と回転により各階の駐車場に放射状に駐車できる仕組みなのだ。このため、ドライバーは前進と後退だけで、簡単に駐車ができるというわけ。物は試しということで、実際に駐車をしてみることに。

まるでアトラクション! 駐車場への入庫&出庫シークエンス

入庫側の入り口から見たエレベーター。ここにクルマを入れて駐車階へ運ばれることになる。

駐車場入り口では、円形型エレベーターに係員が誘導。エレベーターのサイズにはゆとりがあり、入庫も前進と停車だけで済むので簡単だ。クルマがエレベーターに収まると、係員がエレベーターを操縦し、駐車するフロアまで運んでくれる。

エレベーターの中。係員が常駐しており、クルマを誘導してくれる。

その際、駐車スペースに位置を合わせるために、上昇と共に旋回動作も行なう動きが特徴的。さらに眺めもビル内ながら、単調でない点も特筆すべきところ。エレベーターに収まった車内からは、各階に駐車中の車両を眺めることが出来る。それがアトラクション的な楽しさに繋がっているのだろう。

エレベーターが駐車フロアに到着したら、駐車スペースには真っ直ぐバックで入庫する。

駐車フロアに到着すると、そのままクルマをバックさせ、駐車が完了。駐車フロアから隣接するオフィスフロアへ、そのままアクセスできるので、ビル内のオフィスに用事がある人は便利だ。

ガラス張りの空間は元々は運転手の待機室だったのだが、今では使われていない。

出庫時は、係員がエレベーターで迎えにきてくれ、前進で入庫。1階に到着したら、そのまま前進で出庫できる。駐車スペースの制限は、長さ5.3m、車幅2.2m、高さ1.8m、車両重量1.8tとなっており、大型乗用車まで対応可能だ。

エレベーターの出庫側。
駐車場の出口。
駐車場の出口が面している道路。

三菱重工謹製! その名は「スターパーク」!

同駐車場のシステムは、三菱重工製「スターパーク」という駐車場システムで、どうも1960年代から1970年代に販売されていたようだ。北海道建築会館のものは、1965年12月に製造された2号機だという。因みに同ビルは、1966年に竣工されている。

銘板には「三菱重工広島造船所」と記載されており、製造番号は「6695」となっている。

その構造は、旋回塔とエレベーター、旋回装置の3つで構成。コアとなる旋回塔には、最上部にエレベーター用機器が、最下部には、旋回盤が備わる。エレベーターを支えるシャフトは、トラス構造の2本組の主柱で構成され、旋回時の荷重とエレベーター機器荷重に耐えうる十分な強度を備えると説明にある。

エレベーターシャフト内の様子。

つまり、エレベーターユニット自体が、ターンテーブルに載ったような構造なのだ。発売当時の駐車システムのカタログには、同ビルで撮影された写真も掲載されており、初代デボネアが1階でエレベーターから出庫した様子が映されているのも時代を感じさせる。

エレベーターユニット。

同システムが採用された背景は、建設当時の同ビルの役割も大きく影響していたという。その名が示すように、建設業関連の法人が入居するビルであったため、来客数も多かった。さらに北海道という土地柄もあり、移動手段はクルマが中心。そのため、ビル内に収まりながら大型車にも対応できるシステムであることに加え、天候に左右されず利用者が目的のフロアに直接アクセスできる“おもてなし”の良さから採用が決まったそうだ。当時の名残として、駐車フロアには、運転手用の待合室や洗車用の水道設備などが見られる。

駐車スペースの様子。排水溝がエレベーターユニットを囲んでいるからか、駐車スペースはやや中心(エレベーター)に向かって傾斜している。そのため、サイドブレーキが推奨されており車の前側に控えめながら輪止めが設置されている。
今回停めたスペースは後方が広く、後輪側に輪止めがない。
逆に前輪側には全てのスペースに控えめな輪止めがある。

斬新な作りだった「スターパーク」だが、複雑なシステムが故にコスト面の負担も大きかったようで、販売は不振に。なんと、北海道以外では東京都と京都に1カ所ずつ、全国で3基しか販売されなかったという。さらに現存するのは、この北海道建設会館ビルのみに。まさしく激レア駐車場なのだ。

利用するなら今しかない!? 2024年3月がタイムリミット!

当初、駐車場は入居者用だったが、時間貸しも行なわれるようになった。近隣の商業施設も充実し、駅前が活気づくとともに利用者も増加。同駐車場も、駐車し易さから好評だったという。そのため、時間貸し駐車場として繁盛した時代もあったそうだ。しかし、その楽しい駐車体験もあとわずかだ。

北海道建設会館ビル。駐車場の入り口は写真ではビルの右側にある。右奥の白い建物が札幌駅だ。

残念なことに、日本で唯一の存在となった北海道建築会館ビルの駐車場が利用できるのは、2024年3月20日まで。札幌オリンピック誘致など札幌駅前の再開発計画が動き出し、同ビルの閉館と解体が決定したからだ。同ビル跡地と近隣の空地が合わさることで、200m近い高層ビルに生まれ変わるという。もちろん、駐車場も設置されるが、ビル地下に自走式が備わるようだ。これを機に北海道建設会館は、会社としての駐車場業務から離れ、新ビル内では、現在も行なっている貸会議室を続けていくそうだ。

北海道建設会館ビルの裏側。窓が少なく、元は別のビルに面していたと思われる。このビルの周囲はすでに建物はなく、コインパキングなどに一時利用されていることから、再開発が進行中であることがうかがえる。

札幌駅前にお出かけの際は、ぜひ北海道建設会館ビルの駐車場を利用してみて欲しい。札幌駅前という立地の良さながら、価格も30分200円とお手頃だ。エレベーター操作を行う係員によれば、「できるだけ高いフロアに駐車させて欲しい」と望む同施設のファンもいるという。これも時代の流れで。また昭和の隠れた名所が消えていこうとしている。

駐車料金は札幌駅前ながら200円/30分とお手頃。

「スターパーク」の入庫&出庫シークエンスを動画でチェック!

とはいえ、札幌まではなかなか行くことができないという読者の皆様、この日本に一つしかない立体駐車場の様子を動画でお見せしよう! 開閉する金網の扉や、外が見えるエレベーターでの上下はまるで特撮やアニメのようで、盛り上がること間違いなし!

スターパークへの入庫シークエンス。
スターパークへの出庫シークエンス。

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…