なぜ「N」か?
11月16-19日に開催された世界ラリー選手権(WRC)ラリージャパンは、トヨタの1-2-3で幕を閉じた。前年のウィナー、ヒョンデのティエリー・ヌービル選手は、デイ2のアクシデントで後退。残念ながら13位に終わった。
とはいえ、2023年のドライバーランキングでは3位。第6戦(ラリー・イタリア)第12戦セントラル・ヨーロピアンラリーの2勝を挙げている。
最終戦が終わった後に日本のサーキットにヌービル選手とワークスマシン(当然、ヒョンデモータースポーツのメンバーも一緒だ)が現れたのは、ヒョンデの「Nブランド」のプロモーションのためである。
ヒョンデのNブランドは、モータースポーツを起点するとヒョンデもスポーツを代表するブランドだ。WRCを戦う「i20 N Rally1 Hybrid」にある「N」は、Nブランドを意味している。
世界に名だたる自動車ブランドは、例外なくモータースポーツ、ハイパフォーマンスブランドを有している。
メルセデス・ベンツなら「AMG」、BMWなら「M」トヨタなら「GR」や「F」、日産なら「NISMO」、ホンダなら「Type R」。ヒョンデにおけるそれが「N」なのだ。
なぜ「N」か?
Nは、開発拠点である韓国・南陽(Namyang)のNとニュルブルクリンクのNに由来する。南陽で開発されてニュルブルクリンクで鍛えられたのが「N」というわけだ。
2024年に日本に導入されるヒョンデのNは、BEVのIONIQ5の「N」。こちらも試乗できたので、近いうちにレポートする。
さて、今回同乗する機会を頂いたのは、ラリージャパンを戦ったマシンそのものだ。
Hyundai i20 N Rally1 Hybrid 全長×全幅×全高:4100mm×1875mm×-mm ホイールベース:2630mm 車両重量:1260kg(最低重量) エンジン:1.6L直4直噴ターボ 排気量:1600cc ボア×ストローク:83.0mm×73.8mm 最高出力:380hp(280kW)+134hp Hybrid Power 最大トルク:450Nm(エンジン)/180Nm(ハイブリッドユニット) エアリストリクター:36mm(FIA規定による) トランスミッション:5速マニュアル 駆動方式:4WD/機械式デファレンシャル×2 クラッチ:セラメタリック・ツインディスク サスペンション:F&R マクファーソンストラット式 ステアリング:油圧式ラック&ピニオン ブレーキ:ターマック用370mm/グラベル用300mm タイヤ:ミシュラン
ラリージャパンのSS11&12 OKAZAKIで同乗させていただいたマシンは、Rally1に切り替わる前のi20クーペWRCだったが(したがってハイブリッドシステム非搭載)、今度は、バリバリの現役ワークスマシンだ。マシンサイドには「FORUM8 RALLY JAPAN HY」のステッカーが貼ってあった。
マシンは、ヒョンデモータースポーツのスタッフが完璧に仕上げてくれている。
エースドライバーのヌービル選手は、穏やかで知的、それでいてフレンドリーな雰囲気をまとうナイスガイだ。
コドライバーシートに身を沈めて、ガッチリとシートベルトで締め上げられると、ヌービル選手は親指を立てたあと、ギヤをエンゲージしてアクセルをON。強烈な加速をしながらコースイン。すぐにコーナーが迫る。速い!
コース幅の広いサーキットだから、もう自由自在だ。ビックリするくらい大胆に縁石に乗り、アクセルワークでノーズの向きを自在に変える。タイトターンではパーキングブレーキできっかけを作ってドリフト。
アクセルワークやシフトワークをしっかり見つめておこう、と思ってはみたものの、またしてもそんな余裕はなし。現代WRCのワークスマシンのボディはどんなときもミシリとも言わない。サスペンションがよく動くし、路面のいいサーキットだから乗り心地は快適だ。それでも周囲を見る余裕がないのは、強烈なGがかかるから。加速~減速~横G~加速……そのどれもが味わったことがないほどすごい。
ラリーカーのタクシーライドを終えたヌービル選手は、IONIQ5 Nをじつに楽しそうにドライブしていた。こちらも、自由自在にドリフト。いつまでもドライバーズシートから降りてこないヌービル選手が印象的だった。