な、なんだ、この動きは!ラリージャパンのSSをヒョンデi20クーペWRCに同乗

ヒョンデi20クーペWRC
11月に愛知・岐阜で開催されたWRCラリージャパン。現代ラリーマシンの凄まじい走りを目の当たりにした人も多かっただろう。その凄味を体験する機会をヒョンデが与えてくれた。

SS11&12 OKAZAKIのコースを走る

ヒョンデi20クーペWRC

11月18日WRCラリージャパンのDAY3・SS11&12が行なわれた岡崎中央総合公園には、多くの観客が詰めかけた。観戦ポイントが複数あり、またかなり長い時間ラリーカーが走る様子が見られるSSだ。ちなみに

SS11のトップタイムはトヨタのエバンス(GR Yaris Rally1 HYBRID)の1:54:47.0

SS12もエバンスの1:57:05:7だった。

この日、ヒョンデモータージャパンの計らいで、「同乗試乗」ができることになっていたのだが、「どこで」「何に乗るのか」「誰に同乗するのか」わからないまま、午後になった。コースサイドの奥のマシンのカバーが剥がされる、そこにはヒョンデのラリーマシンが待っていた。ワークスマシンと同じカラーリングのi20Nだ。よく見ると、現行型の「i20 N Rally1 HYBRID」と違って3ドアクーペボディをまとっている。聞けば「デモンストレーション用のマシン」ということで、ハイブリッドシステム非搭載。エンジンは1.6L直4ターボ……つまり、Rally1の前のマシン、「ヒョンデi20クーペWRC」なのだ。

ヒョンデi20クーペWRC
全長×全幅:4100mm×1875mm
ホイールベース:2570mm
車両重量:1190kg(最低重量)
エンジン:1.6L直4直噴ターボ
最高出力:380hp(280kW)/6500rpm
最大トルク:450Nm/5500rpm
トランスミッション:6速シーケンシャル
サスペンション:F&R マクファーソンストラット式
差動装置:前後機械式デファレンシャル
     センター:油圧式デファレンシャル
タイヤ:ミシュラン

2017年から2021年までWRCを戦っていたマシン。ヒョンデが初めてWRCマニュファクチャラータイトルを獲得したクルマでもある。

「これに乗れるの?」と思う間もなく、「向こうで着替えてきてください」と言われて、ヒョンデラリーチームの担当者に促されてレーシングスーツを着てバラクラバとラリー用のヘルメットを被る。

ここがコドライバーのシート。すっぽりはまってしまえば、結構快適(走り出すまでは)。

じつはWRCのワークスマシンに同乗させてもらうのは初体験ではない。1990年代後半にトヨタ、スバル、三菱のグループA、WRカーに乗せていただいたことがあるのだ。ドライバーはトミ・マキネンだったり、コリン・マクレーだったり、リチャード・バーンズだったりという豪華な体験だった。だから、四半世紀ぶりくらいの同乗体験だった。

ドライバーはエミル・リンドホルム選手。マーカス・グロンホルムの甥っ子でもある。

ドライバーは、エミル・リンドホルム選手。2021年のRally2王者である。お父さんもラリードライバー(セバスチャン・リンドホルム選手)、おじさんがマーカス・グロンホルムだ。

ヒョンデi20クーペWRCのコドライバーシートに乗り込む。シートベルトで締め上げられると身体を動かす余裕はない。リンドホルム選手から「ラリーカーに乗ったことある?」と聞かれたので、「うん、昔何回かワークスマシンの横に乗せてもらったことがあります」と伝えると。「Good!」と言ったかと思ったら次の瞬間、強烈な加速Gとともに、SS11&12のコースは飛び出した。

せっかくのチャンスだから楽しまなくては。とはいえ、あまりの凄まじいGだったので、ドライバーの操作をじっくり見る余裕はなかった。

180度ターンの手前でドライバーの右側に2本生えているレバーの右側(機械式パーキングブレーキ)を一瞬だけ握りちょいと引くとリヤがブレークして寸分も無駄のないドリフト姿勢に入る。そこからまたフル加速。狭いコースを信じられないスピードで駆け抜ける。ハイブリッドシステム非搭載とはいえ、その分車重が軽い。

このポイントはマシンが浮くか浮かないかギリギリ。サスペンションがよく伸びて着地(?)の衝撃は驚くほどなかった。

いやぁ、ビックリした。現代ラリーマシンの挙動はかつてのグループAやWRカートはまったく違う。豪快というより「精緻」。乗り心地も全然悪くない。同乗時の最高速度は4速140km/h程度だったと思う。リンドホルム選手はこともなげに「どう? 楽しい?」と聞いてくる(ドライバーとコドライバーの会話の音質は非常に良いんですね)。もちろん楽しい。が、手加減してもらってこのドライビングなのだから、本番になったらどうなるか? しかも、座っているのはコドライバーシートだ。つまり、本当ならここで「ペースノートを読まないといけない」のだ。

絶対ムリ。

コドライバーは、周りの景色など見ていなくて体感Gだけでペースノートを読むらしいが、そもそもあの状態で何かが読めるのは驚異的だ。SS11の半分ほどを同乗させていただいた(半分×2周)。ラリーカーが公道最速であることを再認識した。

ヒョンデモータースポーツの皆さん、ありがとうございました。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…