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「イタフラ」って何? それはマニアックかつフレンドリーな世界
2023年11月19日(日)、清々しい秋晴れの中、今回で10回目を迎える『さいたまイタフラミーティング2023』が開催された。
クルマ好きならわかり切っていることだと思うが、イベント名の「イタフラ」とはイタリア車とフランス車のことだ。
イタリアとフランス……ヨーロッパで隣り合う両国だが、前者が山がちな半島国であるのに対し、後者は国土の2割程度しか山地のない平野の多い国となる。それゆえに歴史や文化、言語、国民性などはまったく異なるし、国としてのバックボーンが変われば製造されるクルマも自ずと違ったものになる。それはグローバル化が進んだ今日でも言えることだ。実際に両国のクルマを乗り比べてもらえれば誰にでも分かることだが、個性も運転感覚もまるで異なり、共通点を探すほうが難しいほどだ。だが、日本ではひと括りにカテゴライズされることがなぜか多い。
これにはイタリア車とフランス車を中心に長年取り扱い続けてきた『Tipo』(ネコ・パブリッシング刊。「イタフラ」なる言葉は同誌の発明との説がある)の影響もあるだろうし、実際のところ極東のこの国に限って言えば、両国が作るクルマはファンが重なることも多い。
かくいう筆者もそのひとりで、最新の日本車にはどうにも食指が唆られず、さりとて輸入車の花形とされるドイツ車も好みに合わずに、長年アルファロメオやシトロエン、フィアット、ルノーなどを乗り継いできた。
とどのつまり、欧州車のファンだがドイツ車やイギリス車ではなく、愛車にステータスや絶対的な高性能よりも個性や楽しさを求める人たちが「イタフラ」に落ち着くことが多いのだろう。もちろん、シンプルにイタリア車やフランス車が好きという気持ちがあるにしてもだ。
そんなわけで定義からして間口が広く、良い意味でゆるい「イタフラ」のミーティングはマニアックな車種が集まるイベントにも関わらずオタク的な閉鎖性が一切ない。参加者は皆フレンドリーで、初めて会う人でも少し話をしただけで十年来の知己のようになることも珍しくはないほどだ。
筆者は仕事柄、さまざまなメーカーや車種のミーティングを取材してきたが、参加者のひとりとしてもっとも気楽に心から楽しめるのは、ダントツに「イタフラ」のイベントだと断言する。それは今回初めて参加する『さいたまイタフラミーティング』にも言えることだった。
記念すべき10回目の開催!『さいたまイタフラミーティング』
このミーティングは「埼玉県でイタフラ車の集える場所を!」というコンセプトで愛好家有志により2012年から始まった。当初は埼玉スタジアムで開催されていたが、コロナ禍による中断を挟み、昨年から場所を吉見総合運動公園(埼玉県比企郡吉見町)に移して開催されることになった。
ネットを通じた事前エントリー制で販売した600台分の参加チケットは開催日前にソールドアウトとなったことからも、このイベントが多くのファンに愛されていることがわかる。
開場からやや遅れて吉見総合運動公園に到着すると、すでにミーティング会場はフィアット、アルファロメオ、ランチア、シトロエン、プジョー、ルノーを中心に、旧車から最新モデルまでさまざまなモデルが並んでいる。
ボランティアの指示に従って入場手続きを終え、誘導に従って愛車のジュリアクーペを駐車スペースに駐めると、さっそく会場に並んだエントリー車を見て回った。もっとも多いのは現行型のフィアット500とアバルト500/595で、フェラーリやマセラティこそ少ないが、ほぼすべてのメイクスがエントリーしている。発売したばかりのアルファロメオ・トナーレやフィアット500eの姿もある。
1950~80年代の旧車系は色とりどりで 、ミッドシップのルノー・サンクターボに、シムカ1000クーペ 、シトロエンDS、ディーノ246GT……おおっ、あそこにあるのはアルファロメオ・ジュリエッタSZじゃないか! フェラーリやマセラティこそ少ないが、かなりの希少車がエントリーしている。
また、ヤングタイマーも面白いクルマが目白押しで、昨今ではすっかり街中で見かけなくなった155/156/145などのFFアルファロメオ 、WRCを制したランチア・デルタHFインテグラーレ、プジョー106や405、シトロエン・エグザンティアなどの姿もある。 これは来た甲斐があったというものだ。
面白いのはイタリア車とフランス車を対象としたミーティングにも関わらず、いすゞ・ヒルマン・ミンクスやピアッツァ、ジネッタG4、ダチア・ロガン(親会社はルノーだけど)などの他国のクルマもしれっと参加しているのだ。
これがドイツ車あたりのミーティングなら浮いてしまうかもだが、来るもの拒まずのイタフラミーティングらしく、不思議と馴染んでおり、オーナーと思しき人も一緒になって休日を楽しんでいる様子だった。
掘り出し物がザックザク! スワップミートは宝探し気分
カーミーティングと言えば、エントリーしたクルマを見て回るだけでなく、スワップミートでお宝探しをするのも楽しみのひとつである。
『さいたまイタフラミーティング』にはアマチュアだけでなく、専門ショップも出店している。アマチュアのフリーマーケットで販売されているのはミニカーやプラモデル、古本、中古パーツが多いが、中には食器や衣類、日用品なども販売されており、なかなかお目に掛かれない掘り出し物が安価に売られている様子もチラホラ見受けられた。
いっぽう、プロショップで販売されているカー用品は、ネットや雑誌と違って実際に手にとって見ることができ、しかもイベント価格で売られていることも少なくはなく、欲しかったものが会場限定の特別価格で入手できることもあるようだ。少なくともミーティング当日に買い物すれば送料は掛からないので、その分は得した気分となる。
筆者はアシ車のフィアット500に使うため、La FIT+a (ラフィータ)のウッドカフェホルダーを買い求めた。500はカップホルダーの設計がイマイチで、デフォルトの状態で500mlペットボトルを立てて置くと走行中に倒れてしまうことがあるのだ。カラーはボディ色に合わせた。作りが良く、なかなか気に入った。
ほかにもキッチンカーが多数来場しており、昼時にはお腹を好かせた来場者で大いに賑わっていたし、本部テントでは開催10周年を記念したステッカー、Tシャツやバッグなどのオリジナルグッズが販売されていた。
イタリア車やフランス車に興味がある人なら1日たっぷり楽しめるので、ぜひ来年は『さいたまイタフラミーティング』に遊びに行かれてはいかがだろうか? 家族連れでのエントリーも多いアットホームなイベントなので、イタフラ車のオーナーならずとも楽しめるイベントだと思う。なお、会場で見つけて特に気になったクルマは次回以降改めてピックアップして紹介しよう。