フィアットやアルファロメオ、ルノーにプジョー……イタリア車&フランス車が600台!『さいたまイタフラミーティング2023』は希少車の宝庫だった!!

『さいたまイタフラミーティング』の会場にずらりと並んだアバルト500/595とフィアット500(Type312)。淡い水色のチャチャチャアズールだけでもこれだけ集まるイベントは珍しい。
今回で10回目を迎える『さいたまイタフラミーティング』が2023年11月19日(日)に開催された。会場となった吉見総合運動公園にはフィアットやアルファロメオ 、ランチア、シトロエン、プジョー、ルノーなどのイタリア車&フランス車が600台も大集合。今回はその様子をリポートする。
REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

「イタフラ」って何? それはマニアックかつフレンドリーな世界

2023年11月19日(日)、清々しい秋晴れの中、今回で10回目を迎える『さいたまイタフラミーティング2023』が開催された。
クルマ好きならわかり切っていることだと思うが、イベント名の「イタフラ」とはイタリア車とフランス車のことだ。

埼玉県比企郡吉見町の吉見総合運動公園で開催された『さいたまイタフラミーティング2023』。

イタリアとフランス……ヨーロッパで隣り合う両国だが、前者が山がちな半島国であるのに対し、後者は国土の2割程度しか山地のない平野の多い国となる。それゆえに歴史や文化、言語、国民性などはまったく異なるし、国としてのバックボーンが変われば製造されるクルマも自ずと違ったものになる。それはグローバル化が進んだ今日でも言えることだ。実際に両国のクルマを乗り比べてもらえれば誰にでも分かることだが、個性も運転感覚もまるで異なり、共通点を探すほうが難しいほどだ。だが、日本ではひと括りにカテゴライズされることがなぜか多い。

最新モデルのフィアット500e。今回集まったクルマの中で数少ないBEV。

これにはイタリア車とフランス車を中心に長年取り扱い続けてきた『Tipo』(ネコ・パブリッシング刊。「イタフラ」なる言葉は同誌の発明との説がある)の影響もあるだろうし、実際のところ極東のこの国に限って言えば、両国が作るクルマはファンが重なることも多い。

1980年から23年もの長きに渡ってフィアットのボトムレンジを支えた初代パンダ。ジョルジエット・ジウジアーロがデザインしたこのクルマは現在でも愛好家が多い。

かくいう筆者もそのひとりで、最新の日本車にはどうにも食指が唆られず、さりとて輸入車の花形とされるドイツ車も好みに合わずに、長年アルファロメオやシトロエン、フィアット、ルノーなどを乗り継いできた。

本国では郵便会社などで使用されるパンダ・バン仕様。ハッチ部分を延長し、観音開きの扉をつけたタイプ。オリジナルと違いリアクォーターが跳ね上げ式のハッチゲートではないので乗用モデルの改造車か?

とどのつまり、欧州車のファンだがドイツ車やイギリス車ではなく、愛車にステータスや絶対的な高性能よりも個性や楽しさを求める人たちが「イタフラ」に落ち着くことが多いのだろう。もちろん、シンプルにイタリア車やフランス車が好きという気持ちがあるにしてもだ。

リヤエンジン・リヤ駆動のRRレイアウトによるトラクション性能の良さを生かして1960年代のラリーシーンで活躍を見せたアルピーヌA110。

そんなわけで定義からして間口が広く、良い意味でゆるい「イタフラ」のミーティングはマニアックな車種が集まるイベントにも関わらずオタク的な閉鎖性が一切ない。参加者は皆フレンドリーで、初めて会う人でも少し話をしただけで十年来の知己のようになることも珍しくはないほどだ。

その斬新なボディデザインから1995年の日本デビュー時には大いに話題となったクーペ ・フィアット。30年近く経過した現在でも一切古さを感じさせないクリス・バングル(のちにBMWに移籍して活躍)のスタイリングはさすが。前期型はランチア・デルタインテグラーレと同じ 2.0 直列4気筒DOHCインタークーラーターボ、後期型は2.0L直列5気筒DOHCターボエンジンを搭載する。

筆者は仕事柄、さまざまなメーカーや車種のミーティングを取材してきたが、参加者のひとりとしてもっとも気楽に心から楽しめるのは、ダントツに「イタフラ」のイベントだと断言する。それは今回初めて参加する『さいたまイタフラミーティング』にも言えることだった。

筆者が愛用する1967年型アルファロメオ 1300GTジュニア。リアクォーターやトランクにだいぶ錆が回っているが、修理するカネがない……。今回のミーティングで唯一の段付きクーペで注目度高し。そこは腐ってもアルファだ。

記念すべき10回目の開催!『さいたまイタフラミーティング』

205に小さなノッチをつけたプジョー309GTi。3ドアだけでなく5ドアも存在した。1989年に登場した日本フォード・レーザークーペのモチーフとなったようだ。

このミーティングは「埼玉県でイタフラ車の集える場所を!」というコンセプトで愛好家有志により2012年から始まった。当初は埼玉スタジアムで開催されていたが、コロナ禍による中断を挟み、昨年から場所を吉見総合運動公園(埼玉県比企郡吉見町)に移して開催されることになった。

『きゃんきゃんバニープルミエール』ではなくシトロエンC3プルリエル。屋根の開くC3だ。持病のコンビランプの脱落により、オーナーは右コンビを探しているとか。弁財天の加護でどうかパーツが見つからんことを。

ネットを通じた事前エントリー制で販売した600台分の参加チケットは開催日前にソールドアウトとなったことからも、このイベントが多くのファンに愛されていることがわかる。

ピニンファリーナデザインによる実用性と美しさを兼ね備えたプジョ-504。正規輸入車の多くがディーゼル車だったこともあり、日本国内での残存数は少ない。

開場からやや遅れて吉見総合運動公園に到着すると、すでにミーティング会場はフィアット、アルファロメオ、ランチア、シトロエン、プジョー、ルノーを中心に、旧車から最新モデルまでさまざまなモデルが並んでいる。

フィアット600をベースにした6人乗りのマルチパーパスカーとして誕生した初代フィアット・ムルティプラ 。1960年代のイタリアではタクシーとしての需要が高かった。

ボランティアの指示に従って入場手続きを終え、誘導に従って愛車のジュリアクーペを駐車スペースに駐めると、さっそく会場に並んだエントリー車を見て回った。もっとも多いのは現行型のフィアット500とアバルト500/595で、フェラーリやマセラティこそ少ないが、ほぼすべてのメイクスがエントリーしている。発売したばかりのアルファロメオ・トナーレやフィアット500eの姿もある。

タルボ・マトラ・ムレーナはムレーナを改良した3人乗りのミドシップスポーツカー。数少ないフランス製スポーツカーで、1980~83年の3年間に1万台あまりが生産された。

1950~80年代の旧車系は色とりどりで 、ミッドシップのルノー・サンクターボに、シムカ1000クーペ 、シトロエンDS、ディーノ246GT……おおっ、あそこにあるのはアルファロメオ・ジュリエッタSZじゃないか! フェラーリやマセラティこそ少ないが、かなりの希少車がエントリーしている。

発売当時“宇宙船”と評された特異なスタイリングとハイドロサス(油圧サスペンション)を使用した合理的な設計で一世を風靡したシトロエンDS。デビューは1955年と初代クラウンと同じ年ながらこのスタイル!この革新性!
「こうもり傘に4つの車輪」をコンセプトに廉価な大衆車として戦前に開発が始まったシトロエン2CV。この車両は角目ヘッドランプを採用した1980年代の「クラブ」か。

また、ヤングタイマーも面白いクルマが目白押しで、昨今ではすっかり街中で見かけなくなった155/156/145などのFFアルファロメオ 、WRCを制したランチア・デルタHFインテグラーレ、プジョー106や405、シトロエン・エグザンティアなどの姿もある。 これは来た甲斐があったというものだ。

1990年代中頃に200万円代中盤という手頃な価格で販売され、ヒットしたアルファロメオ145。初期型は水平対向エンジンを搭載していたが、1995年から正規輸入された日本仕様は全車2.0L直列4気筒DOHCの「ツインスパーク」となる。

面白いのはイタリア車とフランス車を対象としたミーティングにも関わらず、いすゞ・ヒルマン・ミンクスやピアッツァ、ジネッタG4、ダチア・ロガン(親会社はルノーだけど)などの他国のクルマもしれっと参加しているのだ。

イギリスのライトウェイトスポーツカー・ジネッタG4。イタフラ以外の参加もチラホラ見かけるこのイベントだが、イギリス車は他にクラシック・ミニを見かけた程度。
初代ダチア・ロガンはルーマニア唯一の自動車メーカーが製造した小型セダン。メカニズムは親会社のルノー製を多用。安価で使い勝手の良い大衆車として欧州では人気だが、日本ではまず見かけない。

これがドイツ車あたりのミーティングなら浮いてしまうかもだが、来るもの拒まずのイタフラミーティングらしく、不思議と馴染んでおり、オーナーと思しき人も一緒になって休日を楽しんでいる様子だった。

ピアッツァは117クーペの後継として1981年に登場したいすゞの高級パーソナルクーペ 。デザイナーは 117に続いてジウジアーロを起用。こうしてイタフラ車の中に混じっていても違和感のない美しいスタイリングだ。

掘り出し物がザックザク! スワップミートは宝探し気分

カーミーティングと言えば、エントリーしたクルマを見て回るだけでなく、スワップミートでお宝探しをするのも楽しみのひとつである。

『さいたまイタフラミーティング』にはアマチュアだけでなく、専門ショップも出店している。アマチュアのフリーマーケットで販売されているのはミニカーやプラモデル、古本、中古パーツが多いが、中には食器や衣類、日用品なども販売されており、なかなかお目に掛かれない掘り出し物が安価に売られている様子もチラホラ見受けられた。

ケータハム ・スーパーセブンを伴って出店した「エンスーの杜」は、エンスー車を対象にした個人間売買のプラットフォームサイト。利用者は多く、これまでに1000台以上の制約実績を持つ。

いっぽう、プロショップで販売されているカー用品は、ネットや雑誌と違って実際に手にとって見ることができ、しかもイベント価格で売られていることも少なくはなく、欲しかったものが会場限定の特別価格で入手できることもあるようだ。少なくともミーティング当日に買い物すれば送料は掛からないので、その分は得した気分となる。

フィアット500(Type312)のオリジナルアクセサリーを販売するLa FIT+a (ラフィータ)の出店。
人気のシフトノブやウッドカフェホルダー、オリジナルのTシャツなどを販売していた。筆者もウッドカフェホルダーを買い求めた。

筆者はアシ車のフィアット500に使うため、La FIT+a (ラフィータ)のウッドカフェホルダーを買い求めた。500はカップホルダーの設計がイマイチで、デフォルトの状態で500mlペットボトルを立てて置くと走行中に倒れてしまうことがあるのだ。カラーはボディ色に合わせた。作りが良く、なかなか気に入った。

キッチンカーも多数来ており、会場周辺には食事ができる店もないことから昼時には長蛇の列をなしていた。キッチンカーの中でもっとも趣があったのが、ムルティプラを使用したカフェ。美味しいエスプレッソを楽しめた。

ほかにもキッチンカーが多数来場しており、昼時にはお腹を好かせた来場者で大いに賑わっていたし、本部テントでは開催10周年を記念したステッカー、Tシャツやバッグなどのオリジナルグッズが販売されていた。

日本導入当初は130万円代という安価な価格設定で人気を博した初代ルノー・トゥインゴ も近頃ではイベント以外ではなかなかお目にかかれない。コンディションの良い車両はファンが手放さないため、滅多に中古市場には出てこないモデルでもある。

イタリア車やフランス車に興味がある人なら1日たっぷり楽しめるので、ぜひ来年は『さいたまイタフラミーティング』に遊びに行かれてはいかがだろうか? 家族連れでのエントリーも多いアットホームなイベントなので、イタフラ車のオーナーならずとも楽しめるイベントだと思う。なお、会場で見つけて特に気になったクルマは次回以降改めてピックアップして紹介しよう。

アルファロメオ ・トナーレ。イメージカラーの鮮やかなメタリックグリーンが鮮烈な印象を受ける。古い人間にはSUV、しかもHV車のアルファロメオというのはどうにも馴染めないのだが、走りはやはり同社らしく運転して楽しいクルマに仕立てられているという。早く試乗してみたいものだ。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…