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ラリーでは稀な同時スタート「デュアルSS」でライバル心メラメラ!?
ラリーはタイムトライアル競技なので順位的な争いやバトルはもちろんあるけれど、サーキットレースのように一緒に走って…という直接的な争いはありません。
2023年のラリージャパンで行われた豊田スタジアムSS(スペシャルステージ)のように、2台同時に走ることはたまにあります。「デュアルSS」といって一緒にスタートするので、観ている観客にとってはどっちが速いか分かったり、選手側もライバルが自車から見える場所もあるので、いつものSSと違ったアドレナリンの出方や、負けたくないといった心理的な動きはあると思います。
が、走るタイミングは同じでも、レースのように同じコースで走り、抜いて抜かれて…というバトルではなく、そのSSでどっちが速いタイムを出せるか!?というバトルになるのです。
前回のラリー日記003でも、選手同士でコミュニケーションをとり、情報をいかに得られるか?というお話を書いたのですが、ライバルたちとのコミュニケーションはとても重要。
そこから得られるヒントもあり、会話は多いです!
2024年から始まったモリゾウチャレンジカップでも、選手間での会話、ライバルだけど仲間といった会話が多く飛び交っています。
ラリーはほぼ初挑戦! コンビを組むCUSCO Racing 星涼樹選手
私がタッグを組んでいる星涼樹(ほし あつき)選手は、ラリーに挑戦するのは初めて。ですが、実はWRCチャレンジプログラム(※TOYOTA GAZOO RacingがWRCで活躍できる日本人ラリードライバーを発掘・育成するため2015年にスタート)の選考会にチャレンジをしており、大竹直生選手(おおたけ なお/TOYOTA GAZOO RacingーWRJ)と一緒にフィンランドでの選考会に行った経験があるのです。
他にも今、WRCチャレンジプログラム2期生で2024年3月8~9日行われたフィンランド・ラリー選手権第3戦「トゥリー・ラリー」にGR Yaris Rally2で参戦し、4位になった山本雄紀選手ともそこで仲良くなったそうです。
実は、私と星選手が今年モリゾウチャレンジカップに参戦するリリースが出た後に、山本選手から「星選手とフィンランドで一緒に走って仲良くなり、彼の活躍を楽しみにしているし応援しているからよろしくお願いします!」といった連絡がきたほどでした。
ラリーに対する知識や経験は勉強&体験中の星選手ですが、チャレンジプログラムに挑戦したことから、そういった仲間はすでにたくさんいる選手なのです。
最大のライバル!? 大竹直生選手もWRCチャレンジプログラム・フィンランド選考会メンバー
ラリー三河湾2024の前に行なわれた合同トレーニングで初めてライバルたちと顔を合わせたのですが、その時から星選手と大竹選手は仲が良く、席も前後。
星選手は四駆のマシンもラリーも初めてなので、経験豊富な大竹選手に「四駆だとどうなん?」「オレ、これ分からないんだけどどうなるん?」と質問攻め。大竹選手も素直に「オレの場合はこうだよ」、「1周目でこれを試して、2周目であれをやった」といろいろ教えていたのです。
それに対して「ドリフトだとこうなんだけど、これって…」と星選手が会話を続けると、大竹選手は「ドリフトのことは分からん。そんな感じなん?」と会話が尽きないのです。
こういう、クルマについてお互いが持っている知識で会話をし、でもタイムとなれば「ここはオレが速い!」と自慢し合う関係がとてもいいな!と、トレーニングの時から感じていました。
他の選手たちも、「大竹選手がこのシリーズを引っ張っていく」、「1番勝ちたいライバル!」として見ていて、特にラリー経験者の選手たちは会話に聞き耳を立てていました。
その中で切り込めると思った際には、「どういう感じなの?」と入っていったり…。
そこで少し言葉を選ぶように伝える大竹選手をみると、バトルはホントに始まっているんだな…と、その場の空気が変わったりもしていたのです。
正直、ラリー三河湾2024が始まるまで、ラリー未経験のチームはどんな走りをするのか?という点はもちろん、みんなイコールコンディションで戦ったことがないこのモリゾウチャレンジカップ。
どんな差が出てくるか未知数だったので、始まってから「やっぱり大竹選手の速さって凄い!」とみんなが驚いていましたし、リスペクトする気持ちが高まると同時に、そこのタイムを超えた時の喜びは大きかったと思います。
打倒! 大竹直生選手!!
林道での速さはやはりラリー経験値で変わってきます。
第1戦 Rally三河湾2024のサーキットを使用したSS西浦シーサイドロードでは、サーキット経験者も有利なコース。SS3のみ大竹選手は3位になったのですが、ここで勝てた貝原聖也選手(かいはら せいや/ADVICS with K-one Racing Team)、星選手は喜んでいたのではないかと思います。
実際、星選手は「まじ!? やっぱりオレのほうがサーキットは上手いじゃん♪」と、ドライバーらしくかなりご機嫌になりましたが、タイム差を知ったあとは「いや~それだけかぁ。もっと差、つけたいな」と悔しがっていました。
さらに、SS5で同じ西浦シーサイドロードを走った時は大竹選手が1位になり、その強さを改めて感じた部分ではあるのです。
が、サービスパークで会うと「やっぱり大竹選手速いね!」とみんなが口を揃えて話し、その中で「あのSSどうでした!?」と話しながら、また情報収集が始まっていました。
1日目の終わりには、大竹選手がこの日最後のSSでリタイアとなり、貝原選手と山田啓介選手(やまだ けいすけ/FIT-EASY Racing)はよりメラメラしている気配も感じましたし、あの大竹選手がリタイアしてしまうという衝撃もありました。それまで速くとも、リタイアしてしまえば結果には残らない。これをみんなが改めて感じた瞬間だったのです。
ライバルだけど大切な仲間! でも絶対に負けたくない!!
2日目にサービスパークに行くと、大竹選手は悔しそうにしながらもいろんな選手と会話をする中で、星選手に「絶対リタイアするなよ!」と声をかけていたのですが、この言葉は星選手には凄く響いた言葉だった気がします。
終わった後も大竹選手から「よく完走できたな。すごいやん!」と星選手に声をかけ、「ポイントではオレの方が今、上だからな♪」と、星選手は大竹選手にハッパをかけていました。が、この1戦で星選手は大竹選手の速さやリスペクトが増していたのは、横にいて凄く感じました。
そして、星選手に言われ「本当にそれな。マジで悔しい」という大竹選手。
仲間だけどライバル。
第1戦のラリー三河湾2024が終了したとき、こういう関係性を気付けるシリーズってとてもいいなぁと、私はとても感じました。
他の選手たちもそれぞれに選手同士での関わりがあり、それがモリゾウチャレンジカップだけではなく、全日本ラリー選手権の中にもあります。
他の競技でももちろんバトルはあるのですが、ラリーの仲間意識とライバル関係っていいな! 魅力的だな!!と改めて感じ、またその戦いにコ・ドライバーとして参加できる楽しさを今、感じています。
もちろん、コ・ドライバーもまた違うバトルや仲間意識があるので、私も切磋琢磨して頑張っていきます!!!
【CUSCO RACING「MORIZO Challenge CUP」参戦体制】 エントラント名:CUSCO RACING ドライバー:星 涼樹 コ・ドライバー:梅本まどか エントラント代表:長瀬 努 車両名:CUSCO GRヤリス 車種:トヨタ・GRヤリス 参戦クラス:JN2
【「MORIZO Challenge CUP」年間スケジュール(大会名称/日程/場所)】 第1戦 Rally三河湾 3月1~3日/愛知県(※終了) 第2戦 ツール・ド・九州 in 唐津/4月12~14日/佐賀県 第3戦 久万高原ラリー 4月26~28日/愛媛県 第4戦 YUHO RALLY TANGO/5月10~12日/京都府 第5戦 MONTRE/6月7~9日/群馬県 第6戦 ARKラリー・カムイ/7月5~7日/北海道 第7戦 RALLY HOKKAIDO/9月6~7日/北海道 第8戦 M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ/10月18~19日/岐阜県