2000万円のレクサスLM500hはショーファーなだけ? いやいや、運転も快感なドライバーズカーとの二刀流だ!【清水和夫SYE試乗】

レクサスLM500h
清水和夫×レクサスLM500h(※画像はプロトタイプ試乗時)
ようやく日本にも導入されたレクサスLM。ちなみにLMとは「ラグジュアリームーバー」の略。まず発売されていた中国、アジア地域では4/7座仕様だったが、日本仕様は4/6座となって登場。さて、贅を尽くしたショーファードリブン、レクサスLM500hはどれくらいのプレミアム感があるのか? 後席乗車専用なのか? 清水和夫が試乗した。
IMPRESSION:清水和夫(Kazuo SHIMIZU)/MOVIE:StartYourEnginesX/ASSIST:永光やすの(Yasuno NAGAMITSU)

レクサスLM500hはただのショーファードリブンなだけなのか?

レクサスLM500h
清水和夫×レクサスLM500h(※画像はプロトタイプ試乗時)

新設計のGA-Kプラットフォームを得て、単なるアルファード/ヴェルファイアのレクサス版じゃないことが明らかになったLM500h。ちなみに、2024年5月31日現在、納車には3.0~3.5ヵ月(4名仕様のEXECUTIVE)だそう。
超高級ショーファードリブンとして大企業の社長さんや大物芸能人などにも人気が出そうなLM500h。だけど、果たしてそれだけのクルマなのか? 国際モータージャーナリスト・清水和夫氏は以前、テストコースでプロトタイプに試乗したが、市販バージョンをストリートでテストした動画を紹介、LM500hの真の実力をインプレッションした。

レクサスLM500h
さて、LM500hの特別感は街中試乗でどうか?

2000万円のミニバン、レクサスLM500hの実力を試す

レクサスLM500h
レクサスLM500hのフロントビュー。後ろから来たら…道を譲りそうな迫力!
レクサスLM500h
レクサスLM500hのリヤビュー。アルヴェル以上の迫力いっぱい!

今日はレクサスのLM500h、スーパー高級車のミニバンだ。ベースとなっているのはアルファード/ヴェルファイアだが、それをレクサスが仕立て、2000万円(EXECUTIVE)/1500万円(version L)の高級車にした。

【グレード別カンタン比較】
■LM500h EXECUTIVE(4人乗り)
駆動:AWD/乗車定員:4名/直列4気筒インタークーラー付ターボ 2.4L エンジン+ハイブリッドシステム
価格:20,000,000円(税別)
■LM500h version L(6人乗り)
駆動:AWD/乗車定員:6名/直列4気筒インタークーラー付ターボ 2.4L エンジン+ハイブリッドシステム
価格:15,000,000円(税別)

試乗車は4名乗車のLM500h EXECUTIVE。完全な2+2の4座席で、後席は恐ろしいほど超高級。走るプライベートルームって感じ。
スペックは2.4Lターボにワンモーターハイブリッド、後ろは高出力リヤモーターeAxleに、AWDシステムDIRECT4の組み合わせだ。

レクサスLM500h
ショーファードリブンのドライバーズシート。後ろじゃなくて、オレはココに座るな

LM500hなら運転手さんのバイトやってもいいカモ♪

アルファード/ヴェルファイアと思えないくらいベースのボディをしっかり作り直し、サスペンションにもかなり手を入れている。リヤモーターだからフロントタイヤのトルクとリアのモーターのトルクで、前後最適なトルク配分を走行条件に応じて可能にしている。これは走りをフラットライドにするのが狙いだと思う。まぁ四駆なので雪道でも安心して走れるショーファーだ。つまり、このクルマは完璧なるショーファードリブンという風に言える。

レクサスLM500h
高トルクな2.4L直列4 気筒ターボエンジン、6速AT、フロントモーター、高出力リヤモーターeAxleを搭載するハイブリッドシステム
【ドライブモードセレクト】
■Rear Comfortモード
AVSは時後席の乗り心地優先、アクセル及びブレーキを統合制御し加減速時の姿勢変化をより少なくする。
■Normalモード
走りと燃費のバランスに優れ、様々なシーンでのドライブに適す。
■Ecoモード
Normal比でアクセルの踏み込みに対するトルク特性が緩やかになり、エアコン作動を控え、燃費を向上させる。
■Sportモード
エンジン、トランスミッション、モーター、ステアリング、サスペンションなどを統合的に制御。操作性や安定性がアップ、スポーティ走行に適した制御に切り替わる。
■Customモード
エンジン、トランスミッション、モーターのパワートレーンや、ステアリング、サスペンション、ブレーキのシャシー制御、またエアコンの各制御機能のモードを自由に組み合わせできる。
レクサスLM500h
レクサスLM500hと比較試乗したLS。ショーファーとしたらLM500hの勝ちだな

参考としてレクサスのLSにも乗ったが、LM500hと比べると後席はこんなに狭かったのか!?と思うくらい、LSは天井も低いし前後スペースも狭い。だからLSにはロングホールベースが欲しいと思う。メルセデス・ベンツのSクラスにはロングホイールベースがあるからね。

●運転手雇う? いや、オレが運転する!

今、私はこのLM500hのハンドルを握っているのでショーファーの運転士さんになっているが、このクルマの運転士さんだったらアルバイトしてもいいかなと思うよ。原稿書いて稼ぐのもいいけど、やっぱり自分的にはハンドル握ってお金を稼ぐのが1番身の丈なので。レースやラリーのプロ生活は終わってしまったので、これからはこういう高級ショーファーの、東京都内におけるインバウンド向けのドライバーの仕事でもやろうか!な~んてね。

レクサスLM500h
運転が楽しい♪

2.4Lのガソリンターボ+ハイブリッドの横置きは、アイシン製の8速ATをダイレクトシフト6速ATにしたことにより、その分のスペースにモーターを入れた1モーターハイブリッド。このパワープラントはクラウンにもあり、かなり類似性がある。が、違いがあるのはLM500hの車体はヴェルファイアをベースに、かなりしっかりとボディ剛性を上げている点だ。
止まればアイドルストップだし、走り出しはモーターとエンジン、後ろのモーターも走行条件に応じてはリヤからトルクを出す、そんなペラシャフトのない四駆になっている。

問題はやっぱりショーファーってこともあるので、乗り心地、音、振動のNVH。確かにロードノイズは静かだ。
タイヤはミシュランのPRIMACY SUV+(プライマシーSUVプラス)という、このレクサスLM専用に開発されたSUV用タイヤ。最近はタイヤの中にスポンジを入れて、ロードノイズを低減する技術も高級車EVに流行っているけどね。

THSと違いエンジンが2.4Lターボなので、アクセルを踏んだ時のトルクというかパフォーマンスは高い。
コレはドライバーズカーだな。申し訳ないけど、後ろに乗る会長さんよりも運転手さんの方がドライビングを楽しめるようなクルマになっているんじゃないかな♪と思う。多分、運転席が一番乗り心地もいい。

レクサスLM500h
贅を尽くしたレクサスLM500hの後席

しかし、問題は後ろの席。ちょっと硬さが目立った。今は上下にこう、ちょっと揺られているが、アダプティブダンパーで上手くばね上のボディをフラットにしている。フロント:マクファーソンストラット式サスペンション/リヤ:トレーリングアーム式ダブルウイッシュボーンサスペンション、リヤには路面や走行状態により減衰力の切り替えが瞬時に可能なリニアソレノイド式アクチュエーターと、周波数感応バルブを併用した周波数感応バルブ付AVSが使われている。これは低周波から高周波までの幅広い領域で振動を軽減、速度を問わず常に上質な乗り心地を提供、としている。

レクサスLM500h
運転席と後席は完全なるパーティションで区切られ、でっかいモニターで動画を楽しむこともできる(※4名仕様のみ)

そして、運転席と後ろの席とがパーティションで仕切りができる(※4人乗りのみ標準)。後ろのお客さんが何をやってるか…ドライバーは全く感知せず!

ショーファードリブンもBEVへ移行する

燃費はTHSの2モーターに叶わないが、この1モーターとターボエンジンの組み合わせは、ドライバビリティは非常にパフォーマンス高いし、速いし、加速が気持ちいい。
このクルマ、以前プロトタイプをテストコースで乗ったが、やはりリアルワールドで乗ると魅力はますます高い。2000万円だが、うん、これなら会社の経費で落とせる人は欲しくなるな。LSよりもLM500hの方が後席は圧倒的にゆったりしているから、ショーファーとしてはLSを超えたのかなって感じがする。

トヨタ・センチュリー
クロスオーバーSUV…とは言われたくないらしいトヨタのショーファードリブン、センチュリー
トヨタ・センチュリー
トヨタ・センチュリーのリヤビュー

ただ、伝統的なFRベースのロングホールベースがLSにあれば、メルセデス・ベンツのSクラスみたいにLSはもう1回王様になれんじゃないかなと思う。
この上はベントレー、ロールス・ロイスの世界。最近はレンジローバーがSUVのショーファーを持っている。値段は…3000万円超えていたかな? ミニバンでショーファーを作ったトヨタと、海外はSUVからショーファーを作る。ただトヨタはセンチュリーのクロスオーバーSUV的なショーファーがあるから、FRベースとはいえ四駆のショーファーがある。ま、SUVと言って欲しくないって言っていたけど。この世界はSUVから来るショーファーと、ミニバンから来るショーファーと、伝統的な3ボックスのセダンからくるショーファー。ショーファードリブンの世界の多様性だ。

とにかくこのショーファーの世界の一番の王様は、何と言ってもロールス・ロイス。ロールスを超える高級車っていうのはないと思う。そのロールスもやがてバッテリーEVになるという風に聞いているし、ジャガーもフォーミュラEで頑張っているから、これからはやっぱりBEVに特化してくるだろう。
BEVになると今度はエンジンの音、振動がないので、ますます高級車には嬉しいパワートレーンになるのだと思う。

レクサスLM500h
清水和夫×レクサスLM500h(※画像はプロトタイプ試乗時)

お金をかければそれだけの価値が出る

首都高だと路面のつなぎ目が少し気になるが、上手くハーシュはこなしている。ま、お金かければ良くなるっていうことの証明。このくらいの乗り味、サスペンションのしなやかさを、ベースのヴェルファイアやアルファードにも欲しい。ただ、このLMによってボディ剛性をしっかり高めたものが、アルヴェルの方にも移植されると思う。技術がどんどん下のモデルに移管していくっていうことが行なわれれば、クルマ全体が底上げされる。

ミニバンなんか…って言っちゃいけないけど、正直ミニバンには全く興味がなかったが、このLMに乗った瞬間、ちょっと美味しいな♪と思った。アルヴェルは欲しいとは思わなかったが、このLMは運転も楽しいし後席もいいし。
ってことで“大谷翔平みたいな二刀流”って感じ。

気持ちいいな! 凄い加速!! エンジン音もいいね♪
って喜んじゃいけないクルマなんだけど、とにかくドライバーが楽しい、それに尽きる。このLMはショーファードリブンだけど、本質的にはドライビングプレジャー型ショファーだった。

レクサスLM500h
後席もいいけど、やっぱオレは運転してナンボだな
【SPECIFICATIONS】
■レクサスLM500h EXECUTIVE
全長×全幅×全高:5125×1890×1995mm
ホイールベース:3000mm
トレッド(前/後):1615/1620mm
車両重量:2460kg
乗車定員:4名
最小回転半径:5.9m
エンジン種類:直列4気筒DOHC+ターボ
内径×行程:87.5×99.5mm
総排気量:2393cc
エンジン最高出力:202kW(275ps)/6000rpm
エンジン最大トルク:460Nm(46.9kgm)/2000-3000rpm
燃料タンク容量:60L(無鉛プレミアム)
フロントモーター形式/種類:1ZM/交流同期電動機
フロントモーター最高出力:64kW(87ps)
フロントモーター最大トルク:292Nm(29.8kgm)
リアモーター形式/種類:1YM/交流同期電動機
リアモーター最高出力:76kW(103ps)
リアモーター最大トルク:169Nm(17.2kgm)
ミッション:6速AT
燃料消費率(WLTCモード):13.5km/L
サスペンション(前/後):マクファーソンストラット/ダブルウイッシュボーン
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前/後共): 225/55R19
車両本体価格(税込):20,000,000円

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著者プロフィール

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、N1耐久や全日本ツ…