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エンジンは1.5ℓ自然吸気 小回りが利き運転感覚も良好
ホンダは2013年からコンパクトSUVのヴェゼルを用意するが、21年に登場した2代目の現行型は、ハイブリッドのe:HEVを中心とする構成に変わった。一方で自然吸気は1グレードのみ。その結果、価格帯が高まり、先代ヴェゼルからの乗り替えを含めて、安価なSUVを求めるホンダの顧客が他社製品へ移り始めた。その対策も含めてコンパクトSUVのWR-Vが導入された。
エクステリア
WR-Vの全長は4325㎜、全幅は1790㎜だからサイズ的にはヴェゼルに近い。水平基調の外観だから、運転席に座るとボンネットがよく見える。視界に優れ、最小回転半径は5.2mでヴェゼルよりも小回りが利くので、混雑した街中でもとても運転しやすい。
乗降性
インパネは水平基調で、視認性操作性に優れる。ATレバーは前後にスライドさせるタイプで扱いやすい。パーキングブレーキは電動ではなくレバー式だ。これによりホンダセンシングのアダプティブクルーズコントロールが制約を受けた。レバー式では、クルーズコントロールの作動中に追従停車した後、パーキングブレーキを自動的に作動させて停車を続けることができない。なので25㎞/hを下回ると、クルーズコントロールが自動解除される。
インストルメントパネル
前席は背もたれから大腿部を確実に支えてくれ、長距離移動でも疲れにくい。特にベーシックな「X」は快適。「Z」のプライムスムースのシート生地に対し、「X」はファブリックなので見栄えは地味だが伸縮性に優れ、座り心地が適度に柔軟なのだ。後席も座り心地にボリューム感が伴う。プラットフォームは基本的にヴェゼルと共通だが、WR-Vでは、燃料タンクを前席の下に搭載するセンタータンク方式は採用していない。従ってシートアレンジはヴェゼルよりもシンプルだが、座り心地は上回り、身体が適度に沈んだ部分でしっかりと支えてくれる。スペースも広く、身長170㎝の大人4名が乗車したとき、後席に座る乗員の頭上には握りコブシひとつ弱、膝先にはふたつ半の余裕がある。後者はハリアー以上だ。荷室面積も十分にあり、ヴェゼルと違って後席の背もたれを倒すと広げた荷室の床に段差ができるが、積載性は良好だ。
居住性
エンジンは1.5ℓ直列4気筒の自然吸気で、ハイブリッドの設定はない。駆動方式もFFのみだ。動力性能はコンパクトSUVの平均水準だが、4000rpmを超えると吹け上がりが活発になる。ただ登り坂ではエンジンノイズが少し耳障りだから、購入するときは販売店の試乗車で確認したい。ステアリング操作に対する反応は適度で扱いやすい。機敏なスポーティ感覚こそ弱いが、自然な印象で曲がり、後輪の接地性が高いから下りのカーブで危険を避けるときでも不安定になりにくい。タイヤサイズは「X」が16インチで「Z」は17インチだ。「Z」は少し機敏だが、乗り心地もやや硬い。WR-Vの穏やかな運転感覚には、「X」の柔軟な乗り心地が似合う。
うれしい装備
月間販売台数 2211台(24年3月~4月平均値)
現行型発表 23年12月
WLTCモード燃費 16.4 ㎞/ℓ※「X」
ラゲッジルーム
WR-Vは運転のしやすいボディに、快適な居住空間と使いやすい荷室が備わり、運転感覚も馴染みやすい。価格も割安で、幅広いユーザーにとって選ぶ価値の高いSUVに仕上げられている。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.159「2024-2025 コンパクトカーのすべて」の再構成です。