日本代表FFコンパクトハッチバック、スズキ「スイフト」人気を決定づけた2代目の魅力ってなんだ?【歴史に残るクルマと技術069】

スズキ2代目スイフト
スズキ2代目スイフト
俊敏な走りと取り回しの良さに加え、欧州コンパクトカーに負けないスタイリングとリーズナブルな価格が魅力のFFコンパクトハッチバックのスズキ「スイフト」。スイフトが初めて日本に登場したのは2000年だが、今も続くスイフトの人気は2004年の2代目から始まったのだ。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・新型スイフトのすべて、オートスポーツ

スイフトの源流はGMと共同開発したカルタス

スズキ2代目スイフト
スズキ2代目スイフト

スイフトの源流を辿ると、1983年にデビューした「カルタス」まで遡る。スズキは1981年にGMと資本提携し、カルタスはGMと共同開発された世界戦略車で、スズキにとっては少量生産だった「フロンテ800」を除き、実質初めての小型乗用車だった。

スズキ初代「カルタス」
1983年にデビューしたスズキ初代「カルタス」。GM主導で開発

スズキとGMの提携は、1970年代に起こったオイルショックと排ガス規制強化の影響で、燃費の良いコンパクトカーの必要性に迫られていたGMと、世界進出とりわけ米国進出を狙っていたスズキの思惑が一致したことによって締結に至った。

初代カルタスは、GMの意見が色濃く反映され、廉価で燃費の良い小型車が目標とされた。オーソドックスなFFの3ドア/5ドアハッチバックに、1.0L直3エンジンを搭載されたカルタス(米国名:シボレー・スプリント、欧州名:スイフト)は、米国では好調な販売を記録したが、日本では安っぽいイメージが先行して苦戦した。

日本で不評だった初代の反省を踏まえて、1998年に日本市場を優先してスズキ主導で開発した2代目カルタスが登場。上級志向に舵を切り、さらに3代目では上級グレードの「カルタスクレセント」を投入したが、ヒットには至らず2000年に生産を終了した。

軽ベースで誕生した初代スイフト

スズキ初代「スイフト」
2000年にデビューしたスズキ初代「スイフト」。(海外ではイグニスで販売)

2000年にカルタスの実質的な後継車として国内に投入されたのが、初代「スイフト」である。先代カルタスは、海外ではスイフトとして販売していた経緯があり、初代スイフトは海外では「イグニス」と呼ばれた。

スイフトは、軽のプラットフォームを流用し、ホイールベースは軽と同じでトレッドを広げたクロスオーバーSUV風のコンパクトカーとなり、最高出力88ps/最大トルク12.0kgmを発揮する1.3L直4 DOHCエンジンを搭載。コスト低減のため軽「Kei」の多くの部品を流用して、“泣く子も黙る79万円”という低価格を売りにしたが、逆にこれが仇となり、軽のイメージから脱却できずに現在のスイフトのような人気を獲得することはなかった。

また3年後2003年には、初代「スイフトスポーツ」が誕生。スポーティな3ドアハッチバックに、排気量を1.5Lに拡大して最高出力115ps/最大トルク14.6kgmのエンジンを搭載して、本格的なスポーツ走行が楽しめるホットハッチとして走り好きのファンから注目された。

スズキ2代目スイフト
JWRCで大活躍したスズキ「イグニス・スーパー1600」。”Yellow Bullet(黄色い弾丸)”と呼ばれた

軽量だった初代スイスポは、海外では「イグニススポーツ」と名乗ってJWRCで大活躍。イメージカラーのチャンピオンイエローから“黄色い弾丸(イエローブリッド)”と呼ばれて2004年にはドライバーズチャンピオンに輝き、国内より特に欧州の走り屋から人気を集めたのだ。

スズキ2代目スイフト
2代目スイフトもJWRCで大活躍

基本設計を刷新して人気を獲得した2代目

2004年にモデルチェンジして、より欧州車を意識した世界戦略車の2代目に移行。最大の特徴は、初代で不評だった軽ベースのプラットフォームを止めて、コンパクトカーの専用設計に刷新したこと。

スズキ2代目スイフト
スズキ2代目スイフトのボディサイズ

スタイリングは、ワイドトレッドを強調した大きく膨らんだフロントフェンダー、シンプルながらスポーティで個性的なフロントマスクなど、全体的に丸みのある洗練された欧州車のトレンドを取り入れたフォルムに変貌。さらに、軽量かつ高い剛性のボディとトーションビーム式リヤサスペンションによって、スポーティで力強い走りを実現した。

スズキ2代目スイフト
スズキ・スイフトのエンジン。マイナーチェンジ後は1.2Lを積む

パワートレインは、先代モデルに採用された91ps/12.0kgmの1.3L直4 DOHCエンジンならびに110ps/14.6kgmの1.5L直4 DOHCエンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、先代に続いてFFベースでフルタイム4WDも用意された。

車両価格は、FF仕様で最も安価な1.3L(5速MT)が101.325万円~、最も高価な1.5L(4速AT)が136.5万円。安価な価格で、操縦安定性に優れた俊敏な走りが体感できる、現在に続くスイフトの礎を築いたのは紛れもない2代目スイフトなのだ。

走りだけでなく、燃費や安全性を向上させて進化を続けるスイフト

2010年には3代目スイフトが登場。基本的には、キープコンセプトだが、環境性能の高まりを受けて、エネチャージやS-エネチャージといった電動化技術を採用して、走りだけでなく燃費の良さもアピールした。

2017年に登場した4代目スイフトでは、徹底した軽量化によって先代より120kgの軽量化に成功し、パワートレインは先代と同じだが、S-エネチャージを進化させたマイルドハイブリッドを設定。また最新の予防安全装備“セーフティパッケージ”も採用された。

そして2023年12月に登場した現行の5代目スイフトでは、先代同様マイルドハイブリッドも設定しているが、エンジンは同じ1.2Lながら直4エンジンから熱効率の高い直3エンジンに替えて、燃費を10%向上している。現行のスイフトは、先代の環境性能と予防安全技術を最新化してブラッシュアップしているのが特徴である。

また車両価格は、4代目より約30万円高い172.7万~233.2万円に設定。ただし、標準グレードが200万円前後であり、同等クラスのライバルと較べるとコスパに優れており、これまでのスイフトの大きな魅力を継承している。

スイフト2代目が誕生した2004年は、どんな年

スズキ3代目「スイフト」
2010年にデビューしたスズキ3代目「スイフト」
スズキ4代目「スイフト」
2017年にデビューしたスズキ4代目「スイフト」
スズキ5代目(現行)「スイフト」
2023年にデビューしたスズキ5代目(現行)「スイフト」

2005年には、スズキ「スイフト(2代目)」以外にもトヨタ「パッソ」、その兄弟車ダイハツ「ブーン」、トヨタ「アイシス」、日産自動車「ティーダ」、「ムラーノ」、マツダ「ベリーサ」などが誕生した。

パッソ&ブーン
パッソ&ブーン
日産のクロスオーバーSUV「ムラーノ」
2004年にデビューした日産のクロスオーバーSUV「ムラーノ」。大きなボディのダイナミックなスタイリングが特徴
マツダ「ベリーサ」
2004年にデビューしたマツダ「ベリーサ」。コンパクトカーながら高級さをアピール

パッソ/ブーンはトヨタとダイハツが共同開発しダイハツが生産したコンパクトカー。アイシスは5ナンバーサイズのミニバンでセンターピラーを内蔵したスライドドアを装備。ティーダは、ルノーと共同開発したプラットフォームをベースにした小型ハッチバッグ。ムラーノは北米で発売されてヒットした大型クロスオーバーSUVを日本に投入したモデル。ベリーサは、デミオとコンポーネントを共有しながらプレミアムコンパクトカーというコンセプトで高級感をアピールした。

スズキ2代目「スイフト」
2004年にデビューしたスズキ2代目「スイフト」

自動車以外では、BSE(狂牛病)問題で日本の牛丼チェーン店が販売停止に追い込まれ、鳥インフルエンザも発生して中国とタイから鶏肉が輸入できなくなり、焼鳥屋も苦しんだ。また任天堂「ニンテンドーDS」、ソニー「プレイステーション・ポータブル」発売されてヒットした。
また、ガソリン121円/L、ビール大瓶2 02円、コーヒー一杯444円、ラーメン556円、カレー668円、アンパン120円の時代だった。

スズキ2代目スイフトの主要諸元
スズキ2代目スイフトの主要諸元

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すでに発売から20年以上経過するも、一貫してリーズナブルな価格で俊敏な走りと操縦安定性が楽しめるスズキ「スイフト」。欧州車にも負けない現在のコンセプトを作り上げた2代目スイフト、日本の歴史に残るクルマであることに間違いない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…