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レガシィアウトバックは、北米での人気が非常に高いモデルである。現行アウトバック(北米では単に「SUBARU OUTBACK」が車名)は、6代目モデルで、北米向けは2020年にデビューしている。ちなみに、北米モデルは、FB25型2.5ℓ水平対向4気筒DOHCの自然吸気とFA24型2.4ℓ水平対向4気筒DOHCターボのふたつのパワートレーンを設定するが、2021年に日本デビューした「レガシィ アウトバック」は、レヴォーグと同じ、CB18型1.8ℓ水平対向4気筒リーンバーンターボを搭載する。
『500 miles a day』は、そもそもレガシィじゃなかった!
個人的に、スバル・レガシィといえば、ロッド・スチュワートである。ロッド・スチュワートの『Sailing』が流れるCMが記憶に残っている。そして、確かキャッチフレーズは、『500 miles a day』だったような気がしていた。
1日に500マイル(約800km)走れるグランドツアラーだ、と言っていたような気がしていた。今回、レガシィアウトバックを借り出すにあたって、調べてみたら、『500 miles a day』とCMで謳っていたのは、アルシオーネSVX(1991年~)だった。記憶とはいい加減なものである。
いまや「先代モデル」だが、借りだした時点では現行か型だった5代目アウトバックもモデルライフを通じて北米で非常に高い人気を維持してきたクルマだ。
前述のとおり、SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)の新世代プラットフォームを採用した新型アウトバックが北米では2020年秋から販売されている。新型に切り替わるまで、先代アウトバックの北米での売れ行きは鈍ることなく(というより、モデル末期が近くにしたがって伸びていった)売れ続けたのだ。なぜ、アメリカ人はアウトバックを選ぶのか? それも知りたくてロングドライブに出かけたわけだ。
5代目(BS系)がデビューしたのは2014年のニューヨーク国際モーターショーだ。北米仕様には3.6ℓの水平対向6気筒エンジンモデルも当初は存在したが、国内仕様は2.5ℓ水平対向4気筒(FB25)自然吸気+リニアトロニックCVTのみ。借り出したスバル・レガシィ アウトバック X-BREAKも2.5ℓ水平対向4気筒を搭載していた。
早朝5時。東名・川崎IC近くで同僚をふたり拾って、往路は男性3名で長久手を目指す。
ちょっと時間を戻して、前日の夕方、東京・恵比寿のスバル本社にアウトバック X-BREAKをお借りしにいった。エンジンをかけると、ひと昔ほどではないにしろ、直4エンジンではない、ボクサーらしい音と振動を味わうことができた。
ところが、ガソリン満タンなのに、メーター内の航続距離は「320km」となっていた。500マイルどころではない。こりゃ大変だ。東新宿にある編集部に戻るまでの都内をトロトロと走っていると燃費は8.2km/ℓ。うーむ。
編集部のパレット駐車場に入れると、全長×全幅×全高:4820mm×1840mm×1660mmという数字以上に大きく見える。分厚いのだ。最低地上高は200mmに上げられ、SUVらしいお化粧を施されたアウトバックは、多少無骨だが「頼りになる相棒、タフな道具感」がする。このあたりがアメリカ人に響くのか。
2.5ℓ自然吸気ボクサーのフィーリングは?
というわけで、早朝の東名を西へ走る。
2.5ℓ自然吸気というのは、いまどき「大排気量」と言ってもいい。175ps/235Nmという出力は、弟分の先代レヴォーグの1.6ℓ水平対向4気筒直噴ターボ(170ps/250Nm)とほぼ同等(ちなみに現行レヴォーグのCB18型1.8ℓリーンバーンターボは177ps/300Nm)。だから、大排気量だからトルキーというわけでもない。車重も1600kgあるから、キビキビ走るわけでもない。アウトバックは、どさっと荷物を積み込んで家族や友人を乗せて釣りやキャンプに行くための道具、という事前の妄想通りの乗り味だ。100km/hで巡航していたらエンジンは1700rpmあたりでユルユル回っている。車内では声を張り上げなくても会話ができる静粛性はある。110km/h巡航だと1900prmあたり。アメリカのフリーウェイを淡々と走り、フリーウェイを降りてからの荒れ地も自慢のAWDで難なくこなす、そんな氏素性をもつアウトバックだから、高速道路の巡航は気持ちがいい。
アイサイトver.3がつくので、速度を設定しておけば、あとはハンドルに軽く手を添えておけばOK。アクティブ・レーンキープもしてくれるが、正直言ってステア制御は、スカイラインのプロパイロット2.0を経験してしまうと、なんだかぎこちなくて、アクセル/ブレーキだけアウトバックに任せてステアリング操作は自分でしたほうがストレスが少なかった。
気になったのは、高速より街中
気になったのは、市街地での走り出しだ。レヴォーグでも気になったが、アクセルをちょっと踏んだだけで、クルマが期待よりもグッと前に出てしまう。アメリカ人のATの好みは、この出足の良い走り出しだとトランスミッションメーカーのエンジニアに聞いたことがあるが、日本の街中だと気を遣う。低速トルクが小さいのを、トルクコンバーターでトルク増幅をするのはATでもCVTでも同じ手法だが、ややストールトルク比を上げすぎているのはないか、と思った。「頼りになる相棒・タフな道具感」のあるルックスと、アクセル/ステアリングの軽さはやや違和感を覚えた。
とはいえ、ロングドライブは非常に楽。運転を代わってくれた同僚からも好評価を受けた。「これなら一気に福岡あたりまでいけるねぇ」は、アウトバックにとってなかなかの褒め言葉だろう。
復路はさらにもうひとり男性が乗って4人乗車で東京を目指す。日曜日の夕方恒例の酷い事故渋滞にも巻き込まれたが、燃費は13.3km/ℓだった。
一人乗車で高速道路メイン、100km/h前後の巡航がほとんどなら、正直言ってもう少しいい燃費を期待したいが、4人乗車(つまり一人乗車よりも200kg以上重い)で13.3km/ℓなら合格点だろう。
別の日に一人乗車で120kmほど走ったが、乗員の数で燃費が大きく上下しない印象を受けた。
結局1日で500マイルとはいかなかったが、返却するまでにほぼ500マイル(トータル797.6km)走った。燃費は13.1km/ℓだった。
燃料タンクは60ℓ。13.1km/ℓなら786km走れる計算だ。
”ほぼ”500 miles a dayをストレスなく走れるアウトバック。アメリカで高い人気を誇る理由が少しわかった気がする。
(あ、500 miles a dayは、アルシオーネSVXだったんだ)
スバル・レガシィ アウトバック X-BREAK 全長×全幅×全高:4820mm×1840mm×1660mm ホイールベース:2745mm 車重:1600kg サスペンション:Fストラット式Rダブルウィッシュボーン式 駆動方式:AWD エンジン 形式:2.5ℓ水平対向4気筒DOHC 型式:FB25 排気量:2498cc ボア×ストローク:94.0×90.0mm 圧縮比:10.3 最高出力:175ps(129kW)/5800pm 最大トルク:235Nm/4000rpm 燃料供給:PFI(ポート噴射) 燃料:無鉛レギュラー 燃料タンク:60ℓ 燃費:JC08モード燃費 14.8km/ℓ トランスミッション:CVT(リニアトロニック) 車両本体価格(当時):329万4000円 試乗車はオプション込みで354万2400円