日産フェアレディZが新型になるなら、ホンダZも復活希望!【第2回ホンダクラシックミーティング】
改めて言うまでもないことだが、ホンダにもZを名乗るスペシャルティクーペが存在した。1970年に発売された初代Zは軽自動車であるホンダNIII360をベースにした2ドアクーペがそれだ。軽自動車での2ドアクーペ採用はマツダR360クーペ以来のこと。R360がサイズや軽量化などの理由から採用したことに対して、ホンダZは若者からのニーズに応えるスペシャルティカーとしてクーペを採用した。ホンダZがあったからこそスズキはフロンテクーペを、三菱はミニカスキッパーを発売することになった偉大な先駆者なのだ。
クーペスタイル最大の特徴はリヤウインドウ。ガラスに枠を設けてハッチゲートとしているのだが、その形状から「水中メガネ」という愛称までついた。ホンダZはベースのNIIIがライフに切り替わるのと同じタイミングで空冷エンジンから水冷へと変更され、72年にはクーペからハードトップへスタイルが切り替わっている。今回紹介するのはハードトップになった後のモデルだ。
ホンダZのオーナーは59歳の永嶋剛さんで、なんと360ccの軽自動車なのに毎日通勤に使っているという強者だ。年式が1973年だから49年も前のクルマ。それを通勤で使っていて、トラブル発生により遅刻したりすることはないのだろうか。ところがこのホンダZはとんでもなく手の込んだ改造を永嶋さん自らの手で行っているから、大抵のトラブルにはその場で対処できるのだという。
バイク用のピストンを使って組み直されたシリンダー、ハイカムや調整式カムスプロケットを使ってシリンダーヘッドをそれぞれチューニング。点火系にはフルトランジスターシステムを自作して使い、発電機が弱いため新しいタイプのICオルタネーターに変更してある。やはり以前にピストンリングが折れたりヘッドガスケットが抜けてしまった経験があり、それを機にチューニングが進んでいった。しかも自分で組み直しているので、エンジンの構造にも精通することになる。大抵のことには動じない人なのだ。
エンジンだけでなく足回りにも独自の改良が施されている。リヤはリジッド方式なので変更できるところは少ないが、フロントのサスペンションはスタビライザーを含めすべてのブッシュを強化型になるウレタン製へ変更した。さらにアッパーマウントを純正のゴムではなくピロアッパー式に変更しつつ、ストラット自体を変更してしまっているのだ。ブレーキこそ純正4輪ドラムのままだが、足周りを固めたことでパワーアップしたエンジンを存分に楽しめる仕様になっている。だから純正の10インチから13インチへアップしたホイールを履いていてもグイグイと加速できるのだろう。
室内はノーマルを保っている。しかもフロントシートは内部のスポンジが出てしまっているように、表皮がボロボロに破れている。けれど永嶋さんはまるで気にしていないようで、このまま通勤するのが苦ではない。いずれ直されるのかと思ったが「これからエンジンをもう一度チューニングしようと考えています」と、さらにパワフルなエンジンを目指しているが、室内はこのままで良いようだ。人の価値観は様々だが、ホンダといえばエンジンというくらいで水冷2気筒のEA型を味わい尽くすのが永嶋さん流なのだろう。
1998年に復活したホンダZはSUV的なスタイルで初代とはまるで縁のないようなモデルだった。でも初代を改めて見ていると、もう一度このようなスタイルで復活してほしいとは思わないだろうか。