もうひとつの選択肢キャデラックXT4 ちょうどいいサイズ、個性もプレミアム感も満点。しかもトレンド最先端の技術満載

キャデラックXT4プラチナム 車両価格:684万円
キャデラックのSUVシリーズの末弟、XT4は、新世代キャデラックのデザインのテクノロジーが詰まった個性派だ。国産SUVともジャーマンプレミアムSUVともスカンジナビアンSUVとも違うテイスト。最新のアメリカン・プレミアムSUVの実力を1週間550kmの走行で味わってみた。

TEXT:鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)PHOTO:山上博也(YAMAGAMI Hiroya)

アメリカンSUV、侮るなかれ!

キャデラックのSUVと聞くと、大きくて(あるいは威圧的)大らか(場合によっては大味)……という誤ったイメージを持っている人がいる。古き良き(悪しき?)アメ車のイメージを引きずっているからだろう。しかし、最新のキャデラックはまったく違うのだ。欧州プレミアムブランドとは異なる味わいだが、やはりキャデラックはプレミアム。国産車にも欧州車にもない走り味を持っている。

果たして最新のキャデラックSUV、XT4はどんなクルマか? 1週間生活をともにして550km走って確かめてみた。

キャデラックというブランドについて、いまさら説明する必要はないだろう。120年もの長い歴史(1903年創業)を持つブランドだ。ちなみに、キャデラックは、デトロイトを開拓した貴族「Cadillac(キャディヤック)伯爵」に由来している。歴史が長いだけに、キャデラックに対するイメージは年代によってさまざまだ。興味深いことに、新世代キャデラックについての印象は、20~30代の若い層が50歳オーバーよりもポジティブだという。

今回、借り出したのはキャデラックでもっともコンパクトなSUVであるXT4である。

ボディサイズは
全長×全幅×全高:4605mm×1875mm×1625mm
ホイールベース:2775mm

だ。
ちなみにトヨタRAV4のそれは
全長×全幅×全高:4610mm×1865mm×1690mm
ホイールベース:2690mm

である。RAV4より全長で5mm短く、全幅で5mm広く全高で65mm低い。つまり、簡潔に言ってボディサイズはRAV4とほぼ同じである。だからといって、存在感もほぼ同じ、というわけではない。そこはやはりキャデラック。実サイズよりも大きく見える。といっても、けっして威圧的なわけではなく、国産SUV、欧州SUVとは違った佇まいがなんとも言えない雰囲気を醸すのだ。

全長×全幅×全高:4605mm×1875mm×1625mm ホイールベース:2775mm
車両重量1790kg 前軸軸重1050kg 後軸軸重730kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
上質でトリッキーなレイアウトでないインテリア。好感が持てる。高解像度リヤビューカメラは、非常に使いやすかった。

ハンドル位置が左であることは、乗り出すときに、ちょっと気を遣うが、1時間も走れば慣れる。RAV4と同じボディサイズは、都会でも持て余すことがない。

さて、今回の試乗車はXT4の最上級グレード、「プラチナム(Platinum)」だ。車両価格は684万円。安価ではないが、申し分のないフル装備であることを考えれば、リーズナブルだと言える。欧州勢と比べると、お得感さえ漂う。ちなみにベースグレード(といっても装備は充実している)のプレミアムは579万円である。

プラチナムは、もはやこれ以上なにを付けようがあるの?というくらいの装備を載せている。

BOSEサウンドシステム、ヘッドアップディスプレイ、ハンズフリーテールゲート、ウルトラビューパノラミック電動サンルーフ、リヤカメラミラー、もちろんACCも、さらにオートマチックパーキングアシストまで装備している。

ステアリングヒーターを装備するステアリングホイール。

乗ればわかる。現代のアメ車=大味は誤った認識だ

さて、乗り出してみよう。キャビンに乗り込むと、上質な素材を使っていることは、シートに手を触れただけですぐにわかった。大味感はゼロだ。8ウェイ調整の電動パワー本革シート(助手席は6ウェイ)と電動チルト&テレスコピックステアリングで、ドライビングポジションはピタッと決まる。

もし、左ハンドルに慣れていなくても、XT4には強い味方がついている。キャデラックが特許を持つ「セーフティアラートドライバーシート」は、センサーが危険を感知すると、シートクッションの左右に内蔵されたバイブレーターが振動して警告してくれる。ボディの四隅が障害物に近づくとシートが振動して知らせてくれるのだ。これが存外、便利だった(しかも、シートヒーター、クーリングベンチレーター、マッサージ機能も付いている!)。

走り始めてすぐにわかるのは、ボディのしっかり感だ。筋肉質なエクステリアとシャシーのしっかり感が完全にマッチしている。シャシーは、GMの「イプシロン」系の最新世代「E2XX」を使う。エンジン横置きでAWDにも対応するシャシーだ。245/45R20という大きなタイヤを楽々と履きこなし、乗り味もビシッとしている。乗り心地は柔らかくはない。が、硬くもない。ステアリングも切ったぶんだけきちんと正確に反応してくれるのがいい。

エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ エンジン型式:LSY 排気量:1997cc ボア×ストローク:83.0mm×92.3mm 圧縮比:11.3 最高出力:230ps(169kW)/5000rpm 最大トルク:350Nm/1500-4000rpm 過給機:ターボ 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:61ℓ

エンジンは、これもGMの新世代2.0ℓ直列4気筒エンジンLSYユニットだ。直噴、ツインスクロールターボ、GM独自の可変バルブリフト機構、AFM(Active Fuel Management)とGMが呼ぶ気筒休止システムまで採り入れた、まさにモダンユニットだ。ボア×ストロークも83.0mm×92.3mmとロングストローク型。230ps/350Nmというスペックからわかるとおり、2.0ℓ直4ターボとしてはかなり強力なエンジンだ。最大トルク350Nmの発生回転数は1500rpmで、これもまたモダンである、350Nmといえば、ほぼ3.6ℓ自然吸気エンジンの最大トルクに匹敵する。そう、このエンジンは3.6ℓV6自然吸気エンジンを代替するGMのダウンサイジングターボなのだ。

トランスミッションは、GM自製の9速AT。100km/hでも充分9速の守備範囲だ。

組み合わせるトランスミッションは、GM自製のHydra-Matic 9T50型9速ATだ。この9速の出来もいい。変速はスムーズだし、キレもある。レシオカバレッジ7.6のワイドレシオは伊達ではない。

高速道路を100km/hで巡航しているときのエンジン回転数は、メーター読みで1550rpmあたり。充分に静かで、それでいて充分トルキーだ。しかも、このとき(おそらく)2気筒運転しているのだ。おそらく、と書いたのは、4→2→4というような気筒休止のON/OFFがドライバーにはまったく感じ取れないほど自然だから。ついでに付け加えておくと、アイドリングストップからの再始動も非常に滑らかで洗練されている。

ドライブモードは「ツーリング」「AWD」「スポーツ」「オフロード」からセレクト

XT4のドライブモードは「ツーリング」「AWD」「スポーツ」「オフロード」からセレクトできる。ツーリングは前輪駆動で、そのほかの3つのモードがAWDになる。

XT4のAWDシステムは、「ツインクラッチAWD」と呼ぶシステムで、リヤアクスルの左右ドライブに備わるクラッチによって、左右後輪間の駆動トルクを制御するトルクベクタリング機能を持っている。日常のドライブは、燃費効率のいいツーリングで走り、ワインディングやスポーツ走行ではAWDモードやスポーツモードを選ぶ。今回の550kmのドライブでも、7割はツーリングで走った。

ここまでで充分におわかりいただけるだろうが、XT4に搭載されているテクノロジーは、パワートレーンもドライブトレーンも最先端のものだ。

都内の混雑した市街地を抜け、西新宿の副都心を抜け、高速道路に乗り、湘南方面の海へ往復220km程度の行程は、非常にリラックスしたドライブが楽しめた。リラックスできた理由はいつかある。まずは、キャビンがとても静かであること。ラミネートガラスの優れた遮音性能と標準装備となるBOSEのサウンドシステムと連携するアクティブノイズキャンセリングの効果もあって室内は、お気に入りの音楽、あるいは同乗者との会話がたっぷり楽しめた。

ADASが優秀で、ACCは非常に使いやすかった。そしてSUVらしい視点の高さがありながらも、レーンチェンジなどで上屋がフラフラしないのもXT4の良いところだった。

高速道路での身のこなしはしっとり上質だ。

右足にちょっと力を加えれば230ps/350Nmの力が湧き出すことはわかっているが、そうしなくても充分に心地よいドライブが楽しめる。スポーツモードを選択すれば、ギヤは一段低くエンジン回転は高くキープしてくれるが、実際はFFのツーリングとAWDを切り替えていればいい。AWDを選べば直進安定性もコーナリングも薄皮が一枚剥がれたかのような印象になる。が今回の試乗ではツーリングで不満だったシチュエーションはなかった。

これで燃費は、10.5km/ℓだった。撮影をしながらの走行という燃費には厳しいシチュエーションだったから、10.5km/ℓはまぁまぁと言ったところか。

9速ATの恩恵で高速巡航時のエンジン回転数は低く抑えられている。

数日後、今度は東京から東名高速道路~小田原厚木道路~箱根の山越で熱海まで、の往復263kmのドライブをしてみた。今度は12.7km/ℓだった。1週間543.5km走ってトータルの燃費は10.8km/ℓだった。高速道路を100km/hで流すと13km/ℓ台といったところ。けっしてガス食い虫ではない。パフォーマンスを考えたら、かなり優秀な燃費性能を持つと言っていい。

いまSUVを選ぶ人は、クルマの使い勝手と走行性能、そして個性を重んじる人だろう。欧州プレミアムブランドにするか、国産ハイブリッドにするか? と考えている人は、選択肢のひとつにキャデラックXT4を加えてみてほしい。

存在感、個性、性能、装備、そして価格……をチャート図にしたらXT4が高得点をマークしていることに気づくだろう。もうひとつの選択肢として、ぜひ一度キャデラックXT4に試乗してみてほしい。万人向けとは言わないが、「あれ、キャデラック、いいね」と感じる人は存外多いはずだ。

プラットフォームはGMの「イプシロン」系の最新世代、「E2XX」を使う。
キャデラックXT4プラチナム
 全長×全幅×全高:4605mm×1875mm×1625mm
 ホイールベース:2775mm
 車重:1780kg
 サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
 エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
 エンジン型式:LSY
 排気量:1997cc
 ボア×ストローク:83.0mm×92.3mm
 圧縮比:11.3
 最高出力:230ps(169kW)/5000rpm
 最大トルク:350Nm/1500-4000rpm
 過給機:ターボ
 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
 使用燃料:プレミアム
 燃料タンク容量:61ℓ
 車両価格:684万円

著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…