4月中旬過ぎ、残クレ(残価設定クレジット)の最終期日となった愛車の旧型ヴェゼルをディーラーに下取り返却した。購入した新型ヴェゼル(Z FF)が納車されるまでは代車を出して貰うこととなっている。同じ車両をずっと納車まで借りられるわけではなく、ディーラーの都合でその時に使える車に交換するカタチだ。こちらとしてはアシ車があれば非常に助かるわけで車種はなんでも良かった。
結局、納車までの1カ月半で5台のクルマを代わる代わる、代車としてお借りすることになった。
最初の代車は、フィットe:HEV FF、グレードはHOME。これは嬉しい。このフィットのe:HEVは、新型ヴェゼルとパワーユニットやシャシーなどベースが一緒、そのフィーリングを体感すれば、まだ試乗もしていない新型ヴェゼルの走りの方向性が少しは掴めると思ったからである。
仕事の関係上、さまざまな新型車に触れる機会は多いのだが、乗ったとしても、助手席や後席で、実際にドライブすることはほとんどない。この新型フィットも後席のみで運転したことはなかった。
フィットのe:HEVの良さは、借りたディーラーを出て直ぐに感じられた。滑らかで乗り心地がいい。度重なるソフトフェアのバージョンアップでかなり良くなったとはいえ先代のi-DCD(DCTと組み合わせた1モーターハイブリッド)はどうしても低速域ではもたつきやギクシャク感は残っていたが、新型フィットにはモーター主導だから当たり前だが、まったくそのような感じはない。好印象。
翌日、埼玉県深谷市の某アルミ精錬工場の会社案内の撮影がタイミングよくあった。高速道路も使う往復200kmのちょっとしたロングドライブができた。その印象は前日に乗った時とまったく変わらず高速域までスムーズ。乗り心地も良く、左右の視界も広く爽快に感じた。高速でのホンダセンシングも、精度が先代ヴェゼルより上がっている。往復210kmでの平均燃費24.8km/ℓだった。高速道路と信号が少ない郊外路のおかげもあるが、途中色々モードを変えたり料金所からフル加速したりなどテスト的な走行もしたなかでは、まずまず良い燃費だと思う。このフィットと同じベースでさらにブラッシュアップされているはずの新型ヴェゼルへの期待は大いに高まったのだった。
新型ヴェゼルは4月末には正式な発売となったのだが、新型コロナの影響もあったのか通常発売直後に行なわれることが多いメディア向けの試乗会は5月中旬と遅めの開催となった。
試乗会は山中湖周辺で行なわれた。筆者もこの試乗会にカメラマンとして参加することができ、幸いにも運転する機会を得た。一通りライターさんの試乗と撮影を終えたあと15分くらいであったが、運転させていただいた。
試乗したのは「e:HEV Z AWD」。
さて、その印象をひと言で云うと「心地いい」である。まず本革のステアリングの感触が抜群に気持ちいい。そして走り始めて直ぐにフィットで感じたように滑らかな加速フィーリングと路面に追従して良く動くサスペンションの乗り心地の良さに感心した。先代ヴェゼルで感じたリヤのバタつきや硬さはみじんも感じなかった。とても先代からキャリーオーバーした同じプラットフォームとは思えない乗り心地の良さだ。
Bセグメントの軽いクルマだから重厚感のあるしっとりした乗り心地とはちょっと違う軽快な滑らかさのある乗り味で、しかも静かだ。そして先代ヴェゼルで一番の不満箇所のドアミラーの死角は見事に解消されていた。右折・左折、見やすい見やすい! これだけでも新型に買い換えて良かったと思う。
湖の周回路から少し山の方へも走ってみた。上り坂でアクセルを強く踏み込みパワー感はどんなものか試してみた。ここは意外にも先代ヴェゼルのようなパワーの盛り上がりがなく加速もちょっと鈍いように感じた。ちなみに、モードはノーマルで乗員は3名。
「なんか先代よりパワーがないような気がするんだけど……」とつぶやくも、同乗のライター、編集者揃って「モーター走行だから、そんな風に感じるのでは」と一蹴されてしまう。エンジンの最高出力は先代132ps、新型106ps。新型は先代よりエンジンパワーは劣るが、モーターでは先代29.5ps、新型131psで新型の方が上である。先代はパラレルハイブリッド、新型はシリーズ+パラレルのストロングハイブリッドとシステムの違いがあり、この点は、あらためて考察・検証したい。
試乗後に、開発陣との懇談会が設けられていた。
ライターと編集者の質疑が終わった後、筆者もついでに質問させていただいた。まず先代ヴェゼルオーナーですでに新型を購入し納車待ちであることを告げ、ちょっと気を良くしていただいてから先代オーナーらしい質問を幾つかさせていただいた。
まずは
筆者:プラットフォームは先代からのキャリーオーバーになりますが、先代2016年2月以降のモデルから採用されていた振幅感応型ダンパーについてはこの新型では特に謳っていないようなのですが、付いていないということでしょうか?」
開発陣「プラットフォームはキャリーオーバーと言ってもかなり手を入れています。新設計と言ってもいいくらいです。ですので、今回の新型は振幅感応型ダンパーを付けなくても先代以上の性能を発揮しています」
とのこと。
次に
筆者「先代のラゲッジルームは、側面までフェルト仕上げでしたが新型ではハードプラとなっています。NVH(騒音・振動・ハーシュネス)は劣ることはありませんか?タイヤのドラミング音が響くような気がするのですが……」
開発陣「内側にしっかり防振防音材を貼っていますので劣ることはありません」
とのこと。
想えば新型ヴェゼルは音にもこだわる「プレミアムサウンド」システムが用意されており、ラゲッジ左側に13cmBOXバスレフウーファーを装備する必要があるためハードプラ仕立てでないといい音が出ないのだろう。他にも聞きたいことが沢山あったのだが所定の時間が来てしまい残念ではあるが質疑はここまでとなった。
今回の試乗会では撮影だけなく運転もでき、ヴェゼルからヴェゼルへ乗り換えて良かったとあらためて思える一日となった。
6月初頭ディーラーの担当者から「鈴鹿工場をラインオフしました。納車もうすぐです」と連絡がきた。これで代車生活も終了となる。
代車は、FIT(e:HEV)→ FIT(ガソリン)→ N-BOX(NA)→ フリード(ガソリン)→ ステップワゴン(ガソリン)。ホンダ売れ筋のラインアップに乗ることができ、これはこれで結構楽しめた。N-BOXが売れまくっている理由も良く理解できたし、モデル末期のフリードであるが、初期型と比べるとすこぶる乗り味がしっとり良くなっていてびっくりした。
クルマは最終型を買えというのは本当のようだ。
そして、6月10日。いよいよ納車となった。
ディーラーに赴くと店舗前に筆者が購入した新型ヴェゼルが待ち構えていた。
「いい色でかっこいい」
受け取りのために店内に入ると担当者から「ひとつお詫びが」と告げられる。ドライブレコーダーが欠品のため、未装着とのこと。いわゆる半導体不足が原因らしい。これは入荷次第取り付けてくれるとのことである。そのあとホンダコネクト関連のアプリのインストールと登録を済ませ説明を受けたあとキーを受け取り手続き完了。最後に、納車のお祝いに花束を頂き、簡単な納車式をしていただいた。ちょっと照れくさいが、その気持ちはありがたい。今後もお世話になります。
帰り間際、筆者のヴェゼルの他にもう一台、新型ヴェゼルが置いてあった。これも納車ですかと聞くと「いえ、パンクでタイヤ交換待ちです」と。先日納車したのだが早々にパンクしてしまったらしい。知っている人も多いと思うが、新車装着のタイヤは同じ銘柄でも量販店で売っているものとは違っていて、その車種用にチューニングにされた専用タイヤとなっている。タイヤが消耗して4本一遍に変えるのなら量販店のものでも良いだろうが、まだ納車したばかりの新車のタイヤを一本だけ量販店のものに交換するのもバランスを考えると具合が悪いだろう。
そこでメーカーから部品として取り寄せることになるのだが、これがまあ高いのだ。なんと担当者曰く「1本で4万円以上です」あとで量販店価格を調べてみたところミシュラン プライマシー4(225/50R18)の1本の値段は約2万円弱となっている。2倍以上の値段だ。
筆者も担当者から言われたが、皆さん「くれぐれもお気をつけください」