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イベント初登場!
2022年4月24日、2年ぶりに『モーターファンフェスタ 2022』(MFF)が富士スピードウェイ(FSW)で行なわれたのは既報のとおり。実際に足を運ばれたかたも多いと思う。
今回初めて、陸上自衛隊が車両などの「防衛装備品」を展示したこともイベントの目玉のひとつとなった。
参加車両は駒門駐屯地や板妻駐屯地、滝ヶ原駐屯地の各部隊から派遣され、全体を自衛隊・静岡地方協力本部がまとめた。これは多くの来場者に自衛隊への理解促進や、その活動内容などに関心を持ってもらえるようにという、いわゆる自衛隊の広報活動の一環で臨んだものだ。
MFF当日の早朝、筆者はFSW西ゲートで陸自の到着を待っていた。展示車両は富士山麓に点在する各駐屯地から自走で来る。早朝にもかかわらずさまざまな出展車両・参加車両などでひしめく西ゲートに、聞いていた到着時間ぴったりに16式機動戦闘車(MCV)が現れた。
一般道路を戦闘装甲車両が走ってくる光景は非日常感たっぷりだった。しかしだ、有事には本車は一般道を自走して現場へ前進する。そんなイメージを想像させる光景でもあり、頼もしくもあった。
興味深い光景
FSW西ゲートの端は大型トランスポーターなどが通過できるよう幅広で天蓋もない。MCVを始め陸自車両は全車ここを通過するダンドリだ。MCVの全幅は2.98mで、ゲートなどに接触することがないのは事前確認されていたが、乗員は車体とゲートのクリアランスを確認するため身を乗り出して覗き込むなど慎重な操縦で通過した。後続各車も同じように丁寧に通過する。無事にゲートを通過した自衛隊の車列はグランドスタンド方向に向かった。多くの出展車両とともに外周路を走るさまは興味深い光景だった。
ちなみにMCVなど装輪車両の走行音は静かだ。MCVのエンジンは水冷4サイクル直列4気筒ターボ・ディーゼルで、約570ps/2100rpmというスペック。エンジン稼働音はいわゆる重機のそれに近いと思う。エンジンは車体前方左側に変速機などと一体化されたパワーパックで搭載。エンジン始動時と停止時には独特の騒音を発するが、排気音自体は低減されており、8輪タイヤが発する外部に聞こえるロードノイズも抑えられているように思う。
自衛隊車列は外周路を走行し、1コーナーからコース沿いに移動、パドックへと入った。そして程なくして自衛隊展示区画であるタイヤサービスの建物裏手へ全車の入場が完了。
次に隊員らは、広い展示区画で各車両を見てもらいやすいように駐車レイアウトに工夫を重ねた。展示区画が建物の裏手に位置することから、来場者のへの動線を確認し、全車が目に入るよう各車の位置を調整した。位置調整は幾度も行なわれ、最終的には来場者が安全に見学できるようなレイアウトを導き出した。
MCVは車体上面の旋回式砲塔に搭載した主砲「105mmライフル砲(施線砲)」の砲口に被せたカバーを外し、車体左右の大型サイドミラーをステーごと取り外す。これで『展示仕様』となった。移動時に高速道路を走行する場合には操縦手ハッチの上にカウリング用の防護カバーを取り付けて操縦するが、今回は一般道だけの移動なので取りつけていない。
うれしいサプライズが!
当日はあいにくの雨天で、午後からは本降りとなってしまった。それでも大勢の来場者が自衛隊区画を訪れてくれる。悪天候でわざわざ足を運んでくれる……そこでMCVは砲塔旋回デモンストレーションを行なった。
74式戦車と同じ105mmライフル砲を自在に動かす。ぐるぐると、意外と機敏な動きをする戦車砲に見学者から思わず感嘆の声が出る。かなり珍しいミニイベントとなった。
MFFは終了時間を迎え、陸自各車も撤収を始める。MCVは取り外していたサイドミラーや砲口カバーを取りつけ『移動仕様』に戻した。
ほかの車両も解説パネル(スペック等を表示した説明板)や車内着座体験用の昇降ステップ、参加部隊名を記した幟旗などを片づける。広報ブースのテントも畳み、それぞれの備品を各車に積み込む。撤収作業は約30分と、素早い。
FSWは日暮れと降雨や霧が重なり、会場内は薄暗くなった。自衛隊車列は各車ともヘッドライトを灯し、居残って見送る来場者に手を振りながらスルスルと静かに整然と走り始め、それぞれの駐屯地へ戻っていった。