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1987年、制式化
既報のとおり、2022年4月24日、『モーターファンフェスタ 2022(MFF)』が富士スピードウェイ(FSW)で行なわれ、初めて陸上自衛隊が広報活動の一環として車両などの「防衛装備品」を展示した。
前回は16式機動戦闘車(MCV)の搬入から撤収までの様子に注目したが、今回は87式偵察警戒車(RCV)を見てみたい。
RCVとは「Reconnaissance Combat Vehicle」の略称で、自衛隊内での通称は「87RCV(はちななアールシーブイ)」、もしくは短縮して「RCV」と呼ばれる。「Reconnaissance」は偵察の意味だ。
RCVは1987年に制式化、製造は小松製作所が行なった。6輪の装輪(タイヤ式)装甲車で、砲塔には主武装品として25mm機関砲を装備している。これはスイス・エリコン社製のものを日本製鋼所がライセンス生産したもの。副武装には車載式7.62mm機関銃を装備する。
名称どおり偵察行動を主務とする装備だ。静かに敵情を探り、情報を持ち帰るわけだが、必要な場合は搭載した機関砲で限定的な規模の射撃などをして相手の意図や規模等を探る「威力偵察」も実行する。
乗員は5名で、車長と操縦手、砲手、前部偵察員と後部偵察員が乗車する。
車上へ上がる、貴重な体験!
その横で地味に展示していたのがRCVだった。こちらでは希望する見学者を車両の上に登らせて記念写真を撮るなどのミニイベントを始めた。乗降体験である。
「乗る」というより「昇る」あるいは「登る」イメージのコレは非日常体験だ。
「登ってみますか?」と車両担当の自衛官が勧めた場合や、「登ってもいいですか?」と自ら動いた希望者などで乗降体験は行なわれた。
当初、筆者が聞いていたのは『大人が同伴して“希望する子ども”に限定』した乗降体験の実施だったが、始まってみると乗降希望者は大人が多かった。みなさん嬉々としている。
乗用車に乗り降りすることとは別の体験は珍しいものだし、RCVの全高は約2.8mで、車上で立ち上がれば見晴らしも良く、気持ちがいい。戦闘車両の運用に就く自衛官の視点はこうなのかと、興味深い体験ができたと思う。
乗降体験は車両担当の自衛官が横について、その手順を丁寧に説明することから始まる。そもそもRCVのような装甲戦闘車両の「乗り口」がどこにあるかが我々にはわからないからだ。外観がクロカン4WD車然とした軽装甲機動車や高機動車、1/2トントラック(通称パジェロ)などはドアを開けて乗降すればいいのは我々にもわかる。
しかしRCVなどはいったん車上へ上がり、それぞれのハッチから乗り込む手順だ(RCVは側面と後部に各々の要員が搭乗するためのドアがあるが、展示の場合ここは開放されない場合が多い)。
今回の乗降体験ではRCV車内に乗り込むことはできないが、車上へ上がることがこのミニイベントの魅力になる。
乗降体験は状況により車上に介助役が加わることもある。怪我や事故等の防止だ。装甲車などは角張っていたり滑り止め加工が施されている箇所が多いから、注意しないと手の平や膝、脛などを傷つけてしまうこともある。だから怪我などをさせないよう自衛官らがサポートする。
約3mの全高を持つRCVだから、どちらかといえば降りるほうが怖い。だから担当の自衛官は乗降体験者にゆっくりとした動作を促し誘導して、必要なら介助もする。乗降時の足がかりになる部分の多くは車体側方の垂直面に設けられていることが多く、降りる場合は直接視認しにくいから、踏み外しそうでなおさら怖いのだ。でもそれも特別な体験ではあるから充分注意して行なう。
今後、コロナ禍での感染拡大状況しだいではあるものの、中止されていた陸自の駐屯地祭などは再開される傾向にありそうで、その場合は装備品展示会場で乗降体験などが行なわれる場合があるかもしれない。
その際の参考として10式戦車での乗降例を写真で紹介します。
もちろん無断で乗降していいわけではなく、体験機会の有無は各々の現場で確認が必要だが、体験ができると言われたら、臆せずに登ってみて欲しい。きっと得がたい体験ができるはずだ。