新たなステージ「BAJA1000」にレクサスLXで挑戦するジャオスの野望とは?
昨今、キャンプブームやオーバーランドというムーブメントの追い風もあって、SUVやワンボックス車のカスタム市場は追い風だ。この手のクルマで流行しているのは、アウトドアに合うようなヘビーデューティなドレスアップ。ゴツいマッドタイヤを履き、フロントにはライトバーやバンパーガードを付けるのが定番メニューとなっている。
そんな市場を支えているメーカーのひとつが、株式会社ジャオスだ。オフロード4WDやSUVはもちろんのこと、最近ではキャンピングカーで「JAOS」のマークが入ったパーツを見かける機会も多い。
ジャオスが創業したのは、かつての四駆ブーム黎明期だった1985年のこと。オーストラリアから四駆用のバンパーガードを輸入したことが、同社の事業のスタートだった。社名のJAOSは、「ジャパン・オフロード・サービス」の頭文字に由来している。
87年から自社ブランド製品の開発・販売に着手し、以後はエクステリアパーツのみならず、サスペンションやマフラーといった走行性能に関わるパーツを積極的に手がけている。同社製品はトヨタの一部車種の純正オプションにもなっており、ユーザーにもそのクオリティは広く知られているのである。
2015年には創立30周年を迎えたが、これを機に本格的なモータースポーツ参戦をするための「TEAM JAOS」を結成。翌16年から、ダカールラリーと並ぶラリーレイド「アジアンクロスカントリーラリー(以下AXCR)」に、海外仕様のハイラックスで参戦を開始した。
17年、18年と順当にレース経験を重ねて、参戦4年目になる19年には見事クラス優勝に輝く。しかし、その後世界を襲ったコロナ禍の影響により、AXCR自体が中止となった。
だが今年5月、TEAM JAOSは新たな挑戦を発表する。それは、苛酷なことで名高いデザートレース「BAJA1000」への参戦だ。なにせスタートからゴールまでの約1000マイルを、ノンストップで走り抜けるのである。その厳しさは、完走率50%以下という結果が表しているだろう。
そんなデザートレースに、TEAM JAOSはレクサスLXで出場するという。周知の通り、レクサスLXは日本でも北米でも高級SUVとして知られるモデル。さらに驚きなのは、「ストックフルクラス」という市販車クラスで出場することだ。
このクラスはホモロゲーションが厳しく、改造できるのはサスペンションや安全対策部品などごくわzyか。ダカールラリーの市販車クラスよりも、さらに改造できる範囲が狭い。また、LXには各種の電子デバイスが付いているが、それも機能させたままの出場になるという。
このLXをハンドリングするのは、AXCRに続きチームのエースドライバーとなる能戸知徳選手。父親も、かつて日本四輪駆動車協会が開催してJFWDAチャンピオンシップレースに出場していたドライバーだ。幼少からレースの現場で育ったサラブレッドで、ダカールラリーなどで活躍している塙郁夫選手とも交流があったという。その後は同氏のつながりもあって、オフロードレーサーとして順当に経験を積んできた。
AXCRでは日本人最高位の4位に輝いた能戸選手だが、BAJA1000はこれまではとは大きく異なるレースだという。
「AXCRはクロスカントリーラリーだったので1日ごとの区切りでした。一方、BAJA1000はオフロードレースとなりますので、一度スタートすると給油からタイヤ交換、そして破損した部品の修復作業までを含んで、ゴールするまでノンストップ。そのため、大きなトラブルを背負ってしまうと制限時間内でリカバリーができず、その時点でリタイヤとなってしまうという厳しい競技です。また走行ステージも大きく異なり、AXCRは泥濘地やジャングルがメインでしたが、BAJA1000は岩場や砂漠等がメインとなるので、走らせ方や車両作りがまったく異なってきます」
それにしても、なぜアジアという地から遠く離れたカルフォリニア半島に戦いの舞台を移し、さらにレクサスLXというモデルで参戦するのだろうか。ジャオスは今年の東京オートサロン2022からレクサスとコラボレーションをスタート。カスタムを施したLXを出展している。このコラボをLXでのレース出場という活動によって、さらに拡充させていきたいという狙いがあると能戸選手は語る。ちなみにレクサスからは車両の確保、現地チームメンバーの紹介、電子デバイス制御情報などの提供を受けているという。
さらに能戸選手は続ける。「弊社は来年より、北米市場においてサスペンションなどの商品を展開する予定になっています。そのための、ブランド力アップという狙いもBAJA1000出場にあります」
さて、BAJA1000出場のLXだが、7月8日から10日に開催された群馬パーツショー2022においてローンチされた。まだ製作途中ということだったが、ある程度は形が見えてきていた。ボディリフトで2.2インチ、サスペンションで1インチのリフトアップを行い、ラダーフレームにはさらなる補強が施されている。
車内はロールケージが網の目のように巡らされ、後部座席には防爆燃料タンクを設置。ドアトリムなどは今後製作していく予定だ。
同チームは2020年にトーヨータイヤとの間にパートナーシップを締結しているが、今回もそのサポートを受ける予定だ。ただし、BAJA1000参戦チームの高く評価されている「オープンカントリーM/T-R」ではなく、AXCR2020出場で使う予定だった「オープンカントリーR/T」を装着するという。レーシングスペックではなく、市販タイヤで参戦というのも見所のひとつになろう。
TEAM JAOSの活動としては第二章となるBAJA1000は、11月15日にスタートする。能戸選手によれば、3年かけてのプロジェクトということだが、果たして初年はどんな結果を残すことができるのか。往年の四駆ファンでなくても、レクサスLXがカルフォルニア半島で見せる戦いに、今から胸が躍るはずだ。